38 / 41
第15話 最後の結果発表と 俯瞰視点(2)
しおりを挟む
「え……? 私のおかげ、ですか……?」
「ええ、そう。貴女のおかげ。……3か月前に夢を見て、ようやく気が付きましたの。わたくしの成績上昇や爽快感の発生は、貴女が関係しているということに」
おもわず目を丸くしたサラに微苦笑を浮かべ、穏やかな調子で説明が始まりました。
夢の中でサラが『同じ道』を走り始めた途端に、確かに限界に到達していたのに早く走れるようになった。それはなぜか?
その理由は――
サラの顔を、姿を、しっかりと見て感じたから。
今までもサラ・ローティシアルの顔や姿は、当然何度も目にしてきました。けれど接点はないため、間近で『見たり』『感じたり』する機会はありませんでした。
しかしながらヘクターの一件により接点が生まれたことで、目的を目指し真摯に走り続ける姿勢を目にし、気合を肌で感じるようになりました。
それらによってアリーヌは、
感化
されていたのです。
「わたくしのライバルはあんなにも、もっと速く走ろうとしている。ソレに刺激されて、知らないうちに好きになっていたんですわ。切磋琢磨する、ということが」
最高のライバルと競い合い、自分を高めていける喜び。ソレが芽生え、心の中ですくすくと育っていっていたのです。
「サラ様。もし貴女が同世代でなければ、わたくしは入学から1位を獲り続けましたわ。けれど間違いなく、ここまで成長できませんでしたわ」
最初に、歴代記録を塗り替える前の得点――840点程度が関の山。そこに自分の壁があり、自力では越えられなかった。アリーヌはそう分析していました。
「貴女の存在がその壁を壊す切っ掛けとなり、自分自身の限界を超えられた。生徒としても人間としても、一回り以上も成長できた。貴女には感謝してもしきれませんわ」
「アリーヌ様……」
「ですからこの言葉を伝えたいと思っていて、今この場で、口にさせていただきますわね。…………サラ様、ありがとう。ありがとうございました」
そうしてアリーヌは柔らかく目尻を下げ、ゆっくりと右手を伸ばします。そうしてライバルに握手を求め――
「申し訳ございません。今の状態では、そのお言葉をいただくことはできません」
――そのライバルことサラは、同じように微苦笑を浮かべたのでした。
「ええ、そう。貴女のおかげ。……3か月前に夢を見て、ようやく気が付きましたの。わたくしの成績上昇や爽快感の発生は、貴女が関係しているということに」
おもわず目を丸くしたサラに微苦笑を浮かべ、穏やかな調子で説明が始まりました。
夢の中でサラが『同じ道』を走り始めた途端に、確かに限界に到達していたのに早く走れるようになった。それはなぜか?
その理由は――
サラの顔を、姿を、しっかりと見て感じたから。
今までもサラ・ローティシアルの顔や姿は、当然何度も目にしてきました。けれど接点はないため、間近で『見たり』『感じたり』する機会はありませんでした。
しかしながらヘクターの一件により接点が生まれたことで、目的を目指し真摯に走り続ける姿勢を目にし、気合を肌で感じるようになりました。
それらによってアリーヌは、
感化
されていたのです。
「わたくしのライバルはあんなにも、もっと速く走ろうとしている。ソレに刺激されて、知らないうちに好きになっていたんですわ。切磋琢磨する、ということが」
最高のライバルと競い合い、自分を高めていける喜び。ソレが芽生え、心の中ですくすくと育っていっていたのです。
「サラ様。もし貴女が同世代でなければ、わたくしは入学から1位を獲り続けましたわ。けれど間違いなく、ここまで成長できませんでしたわ」
最初に、歴代記録を塗り替える前の得点――840点程度が関の山。そこに自分の壁があり、自力では越えられなかった。アリーヌはそう分析していました。
「貴女の存在がその壁を壊す切っ掛けとなり、自分自身の限界を超えられた。生徒としても人間としても、一回り以上も成長できた。貴女には感謝してもしきれませんわ」
「アリーヌ様……」
「ですからこの言葉を伝えたいと思っていて、今この場で、口にさせていただきますわね。…………サラ様、ありがとう。ありがとうございました」
そうしてアリーヌは柔らかく目尻を下げ、ゆっくりと右手を伸ばします。そうしてライバルに握手を求め――
「申し訳ございません。今の状態では、そのお言葉をいただくことはできません」
――そのライバルことサラは、同じように微苦笑を浮かべたのでした。
2
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?
鶯埜 餡
恋愛
バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。
今ですか?
めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?
【完結】謀られた令嬢は、真実の愛を知る
白雨 音
恋愛
男爵令嬢のミシェルは、十九歳。
伯爵子息ナゼールとの結婚を二月後に控えていたが、落馬し、怪我を負ってしまう。
「怪我が治っても歩く事は難しい」と聞いた伯爵家からは、婚約破棄を言い渡され、
その上、ナゼールが自分の代わりに、親友のエリーゼと結婚すると知り、打ちのめされる。
失意のミシェルに、逃げ場を与えてくれたのは、母の弟、叔父のグエンだった。
グエンの事は幼い頃から実の兄の様に慕っていたが、彼が伯爵を継いでからは疎遠になっていた。
あの頃の様に、戻れたら…、ミシェルは癒しを求め、グエンの館で世話になる事を決めた___
異世界恋愛:短編☆(全13話)
※魔法要素はありません。 ※叔姪婚の認められた世界です。 《完結しました》
お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
婚約破棄をした相手方は知らぬところで没落して行きました
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢だったアンネリーは婚約者であり、侯爵でもあるスティーブンに真実の愛がどうたらという理由で婚約破棄されてしまった。
悲しみに暮れたアンネリーだったが、偶々、公爵令息のジョージと再会し交流を深めていく。
アンネリーがジョージと楽しく生活をしている中、真実の愛に目覚めたらしいスティーブンには様々な災厄? が降りかかることになり……まさに因果応報の事態が起きるのであった。
婚約破棄からの復讐~私を捨てたことを後悔してください
satomi
恋愛
私、公爵令嬢のフィオナ=バークレイはアールディクス王国の第2王子、ルード様と婚約をしていましたが、かなりの大規模な夜会で婚約破棄を宣言されました。ルード様の母君(ご実家?)が切望しての婚約だったはずですが?その夜会で、私はキョウディッシュ王国の王太子殿下から婚約を打診されました。
私としては、婚約を破棄された時点でキズモノとなったわけで、隣国王太子殿下からの婚約話は魅力的です。さらに、王太子殿下は私がルード殿下に復讐する手助けをしてくれるようで…
侯爵令嬢はデビュタントで婚約破棄され報復を決意する。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
第13回恋愛小説大賞に参加しています。応援投票・応援お気に入り登録お願いします。
王太子と婚約させられていた侯爵家令嬢アルフィンは、事もあろうに社交界デビューのデビュタントで、真実の愛を見つけたという王太子から婚約破棄を言い渡された。
本来自分が主役であるはずの、一生に一度の晴れの舞台で、大恥をかかされてしまった。
自分の誇りのためにも、家の名誉のためにも、報復を誓うのであった。
完 これが何か、お分かりになりますか?〜リスカ令嬢の華麗なる復讐劇〜
水鳥楓椛
恋愛
バージンロード、それは花嫁が通る美しき華道。
しかし、本日行われる王太子夫妻の結婚式は、どうやら少し異なっている様子。
「ジュリアンヌ・ネモフィエラ!王太子妃にあるまじき陰湿な女め!今この瞬間を以て、僕、いいや、王太子レアンドル・ハイリーの名に誓い、貴様との婚約を破棄する!!」
不穏な言葉から始まる結婚式の行き着く先は———?
あなたの罪はいくつかしら?
碓氷雅
恋愛
公爵令嬢はとある夜会で婚約破棄を言い渡される。
非常識なだけの男ならば許容範囲、しかしあまたの罪を犯していたとは。
「あなたの罪はいくつかしら?」
・・・
認証不要とのことでしたので感想欄には公開しておりませんが、誤字を指摘していただきありがとうございます。注意深く見直しているつもりですがどうしても見落としはあるようで、本当に助かっております。
この場で感謝申し上げます。
お飾りの側妃となりまして
秋津冴
恋愛
舞台は帝国と公国、王国が三竦みをしている西の大陸のど真ん中。
歴史はあるが軍事力がないアート王国。
軍事力はあるが、歴史がない新興のフィラー帝国。
歴史も軍事力も国力もあり、大陸制覇を目論むボッソ公国。
そんな情勢もあって、帝国と王国は手を組むことにした。
テレンスは帝国の第二皇女。
アート王ヴィルスの第二王妃となるために輿入れしてきたものの、互いに愛を感じ始めた矢先。
王は病で死んでしまう。
新しく王弟が新国王となるが、テレンスは家臣に下賜されてしまう。
その相手は、元夫の義理の息子。
現王太子ラベルだった。
しかし、ラベルには心に思う相手がいて‥‥‥。
他の投稿サイトにも、掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる