悪役?令嬢の矜持

柚木ゆず

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第15話 最後の結果発表と 俯瞰視点(2)

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「え……? 私のおかげ、ですか……?」
「ええ、そう。貴女のおかげ。……3か月前に夢を見て、ようやく気が付きましたの。わたくしの成績上昇や爽快感の発生は、貴女が関係しているということに」

 おもわず目を丸くしたサラに微苦笑を浮かべ、穏やかな調子で説明が始まりました。
 夢の中でサラが『同じ道』を走り始めた途端に、確かに限界に到達していたのに早く走れるようになった。それはなぜか?
 その理由は――

 サラの顔を、姿を、しっかりと見て感じたから。

 今までもサラ・ローティシアルの顔や姿は、当然何度も目にしてきました。けれど接点はないため、間近で『見たり』『感じたり』する機会はありませんでした。
 しかしながらヘクターの一件により接点が生まれたことで、目的を目指し真摯に走り続ける姿勢を目にし、気合を肌で感じるようになりました。
 それらによってアリーヌは、

 感化

 されていたのです。

「わたくしのライバルはあんなにも、もっと速く走ろうとしている。ソレに刺激されて、知らないうちに好きになっていたんですわ。切磋琢磨する、ということが」

 最高のライバルと競い合い、自分を高めていける喜び。ソレが芽生え、心の中ですくすくと育っていっていたのです。

「サラ様。もし貴女が同世代でなければ、わたくしは入学から1位を獲り続けましたわ。けれど間違いなく、ここまで成長できませんでしたわ」

 最初に、歴代記録を塗り替える前の得点――840点程度が関の山。そこに自分の壁があり、自力では越えられなかった。アリーヌはそう分析していました。

「貴女の存在がその壁を壊す切っ掛けとなり、自分自身の限界を超えられた。生徒としても人間としても、一回り以上も成長できた。貴女には感謝してもしきれませんわ」
「アリーヌ様……」
「ですからこの言葉を伝えたいと思っていて、今この場で、口にさせていただきますわね。…………サラ様、ありがとう。ありがとうございました」

 そうしてアリーヌは柔らかく目尻を下げ、ゆっくりと右手を伸ばします。そうしてライバルに握手を求め――

「申し訳ございません。今の状態では、そのお言葉をいただくことはできません」

 ――そのライバルことサラは、同じように微苦笑を浮かべたのでした。

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