婚約破棄をされるのですね? でしたらその代償を払っていただきます

柚木ゆず

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エピローグ 同時刻 フルール視点

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「……左手の紋章が、消えた。クリストフ様は、そちらの選択をしてしまったのですね」

 自室にある椅子で座っていると、不意に小さなハートマークが光を放って消滅しました。どうやらクリストフ様は、私への復讐を形に移してしまったようです。


 二つ目の代償。そのトリガーは、『使用者への復讐の決行』。そしてその内容は、『完全なる消滅』です。


 かつての私は裏切りを激しく憎んでいましたが、『嘘が証明できたのなら』という感情もあって、人生をやり直すチャンスを設けてもいました。
 ですがそれは下手をすると、自身に復讐の刃が突き刺さってしまうことになります。
 ですのでそういった悲劇を防ぐために、こうした保険を用意していたのです。

「十七年と三年あっても、省みることはなかったのですね。残念ですが仕方がありません」

 代償の発動によりまもなく、私を含め全人類の記憶およびこの世界から、クリストフ様に関する情報痕跡が消えることとなります。それはとても残酷なもので、思うところはありますが、選んだ結果ですので自業自得ですね。

「……さようなら、クリストフ様」

 私はラトーレルア侯爵邸があった方角に一礼を行い、そうしていると――。頭の中から、何かが抜け落ちる感覚がありました。

「…………??? 私はなぜ、この方向を向いていたのでしょう……?」

 私は椅子に座って、待っていた・・・・はずなのですが。不思議ですね。
 こちらについては……。考えても答えが出そうにはありませんし、それに――

「お待たせフルール。案内するね」

 ――ノックと共に最愛の方がいらっしゃたので、気にしないようにしましょう。

「はい。ありがとうございます、レオス様」

 私は大きくて温かい手に引かれ、部屋を出た後は廊下と階段を通り、再び廊下を通って大きな扉の前で止まります。
 この先にあるのはここザダサイガル侯爵邸内にある、食堂です。

「じゃあ開けるね、フルール」
「ええ。お願い致します」

 そうしてゆっくりと扉が開き、そうすると――


「「お母様っ。お誕生日、おめでとうございますっ!」」


 銀髪とグリーンの瞳を持った男の子と、金髪のブルーの瞳の女の子。レオス様と私の特徴をそれぞれ宿した『宝物』が、満面の笑みでクラッカーを鳴らしてくれました。

 今年16歳になった、テオドールとオーロレ。

 この二人は、レオス様と私の子ども。私は学院を卒業して2年後に結婚し、その更に2年後に双子を授かったのです。

「今日はお父様と3人で、一生懸命ケーキとお料理を作りました」
「いっぱいあるので、沢山食べてくださいね」
「そして全員で作ったプレゼントもあるから、楽しみにしていてね」
「はい……っ。テオドール、オーロレ、レオス様。ありがとうございます」

 レオス様が想いを告げてくださった日から、ずっと私は幸せで。今日も私は笑顔を浮かべ、大切な人達と楽しい時間を過ごしてゆくのでした――。



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