婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです

柚木ゆず

文字の大きさ
14 / 17

第8話 大変なことになったみたいです マドゥレーヌ視点(1)

しおりを挟む
「…………………………」
「…………………………」

 わたくしはモアメッドくんと共に、呆然と顔を見合わせていました。
 まさか……。まさか、あの時のあの言葉がこんなことになっていただなんて。

「マドゥレーヌ、どうか我々にかけた呪いを解いてください!」
「呪いによって熱が出て……! わたくし達、死ぬ寸前なの……!」
「お姉様! ごめんなさい!! 呪いを解いてください!!」
「お願いします、マドゥレーヌ! 俺達を、呪いから解放してください!!」

 アルザルトルズラクス!! アルザルトルズラクス!! アルザルトルズラクス!! アルザルトルズラクス!!
 あの時は四人全員が信じていなかったし、わたくし自身も信じられるとは思っていなかったあの呪文。
 わたくしが追い出されたあと次々と不幸に襲われ、お父様達は『マドゥレーヌの呪いのせいだ』と思うようになっていました。

(…………ね、ねえ、モアメッドくん)

 元家族だった人達の訴えを聞いたわたくしは、あの言葉の考案者の左耳に口を近づけました。

(は、はい。なんでしょう?)
(あの言葉に、誰かを呪う力って……)
(ありませんよっ。あるはずがありませんっ)

 です、よね。
 モアメッドくんは今まで何度も口にしたことがあると言っていて、その時は何も起きていません。そんな力は、ないですよね。

(なら……。どうしてあんなことが起きて、こんな状態になっているんでしょうね……?)
(う~ん……。…………………………思い込み、かもしれませんね)
(思い込み?)
(偶然不吉な出来事が発生して、それらを呪いと結び付けたのではないでしょうか? 思い込みの力って、想像以上にすごいんですよ)

 モアメッドくんは護衛のイロハを学ぶべく有名な方に弟子入りをしていて、その際に習得した奥義が『思い込み』を利用したものだそう。
 ――自分は強いんだ――。
 ――自分はもっと速く動けるし、もっと強い力がある――。
 そう自身に強く言い聞かせることで、身体能力を一時的に上げられるみたいなのです。

(高熱が出るタイミング的にも、的を射ていると思いますよ。自分で自分を苦しめているだけです)
(……なるほど。そういうことだったのですね――)
「もちろんっ、ただお願いするだけではありません!! 我々はマドゥレーヌが納得する条件を用意しております!」

 モアメッドくんに頷いていたら、お父様が――他の三人も、わたくしの前で両膝をつきました。
 納得する条件? なんなのでしょう……?

「我々は全員貴族籍を返上しっ、平民としてひっそりと暮らしてゆきます!! そして当主の座を、マドゥレーヌにお渡しいたします!! ですのでどうかっ! どうかっっ!! 呪いを解いてください!!」
「「「お願いします!!」」」


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

訳ありヒロインは、前世が悪役令嬢だった。王妃教育を終了していた私は皆に認められる存在に。でも復讐はするわよ?

naturalsoft
恋愛
私の前世は公爵令嬢であり、王太子殿下の婚約者だった。しかし、光魔法の使える男爵令嬢に汚名を着せられて、婚約破棄された挙げ句、処刑された。 私は最後の瞬間に一族の秘術を使い過去に戻る事に成功した。 しかし、イレギュラーが起きた。 何故か宿敵である男爵令嬢として過去に戻ってしまっていたのだ。

悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした

ゆっこ
恋愛
 豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。  玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。  そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。  そう、これは断罪劇。 「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」  殿下が声を張り上げた。 「――処刑とする!」  広間がざわめいた。  けれど私は、ただ静かに微笑んだ。 (あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)

「そんなの聞いてない!」と元婚約者はゴネています。

音爽(ネソウ)
恋愛
「レイルア、許してくれ!俺は愛のある結婚をしたいんだ!父の……陛下にも許可は頂いている」 「はぁ」 婚約者のアシジオは流行りの恋愛歌劇に憧れて、この良縁を蹴った。 本当の身分を知らないで……。

妹が約束を破ったので、もう借金の肩代わりはやめます

なかの豹吏
恋愛
  「わたしも好きだけど……いいよ、姉さんに譲ってあげる」  双子の妹のステラリアはそう言った。  幼なじみのリオネル、わたしはずっと好きだった。 妹もそうだと思ってたから、この時は本当に嬉しかった。  なのに、王子と婚約したステラリアは、王子妃教育に耐えきれずに家に帰ってきた。 そして、 「やっぱり女は初恋を追うものよね、姉さんはこんな身体だし、わたし、リオネルの妻になるわっ!」  なんて、身勝手な事を言ってきたのだった。 ※この作品は他サイトにも掲載されています。

「いらない」と捨てられた令嬢、実は全属性持ちの聖女でした

ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・エヴァンス。お前との婚約は破棄する。もう用済み そう言い放ったのは、五年間想い続けた婚約者――王太子アレクシスさま。 広間に響く冷たい声。貴族たちの視線が一斉に私へ突き刺さる。 「アレクシスさま……どういう、ことでしょうか……?」 震える声で問い返すと、彼は心底嫌そうに眉を顰めた。 「言葉の意味が理解できないのか? ――お前は“無属性”だ。魔法の才能もなければ、聖女の資質もない。王太子妃として役不足だ」 「無……属性?」

王家の血を引く私との婚約破棄を今更後悔しても遅いですよ。

木山楽斗
恋愛
伯爵家の養子であるラナーシアは、婚約者となった伯爵令息ハウガスから婚約破棄を告げられる。 彼女は伯爵家の血を引くものの父親がわからなかった。ハウガスはそれを理由にラナーシアを糾弾し罵倒してきたのである。 しかしその後日、ラナーシアの出自が判明することになった。 ラナーシアは国王の弟の子供であったのだ。彼女の父は王位争いの最中に亡くなっており、それに巻き込まれることを危惧して周囲の者達はその出自を伏せていたのである。 ラナーシアは、国王の取り計らいで正式に王家の血を引く者とされた。彼女は社交界において、とても大きな力を持つことになったのだ。 そんな彼女に、ハウガスはある時懇願してきた。 自分の判断は誤りであった、再び自分と婚約して欲しいと。 だがラナーシアにそれを受け入れる義理などなかった。 彼女は元婚約者からの提案を、端的に切り捨てるのであった。

王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。 これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。 しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。 それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。 事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。 妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。 故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。

妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。

雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」 妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。 今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。 私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。

処理中です...