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第7話 お屋敷を追い出されたあと マドゥレーヌ視点
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「本当に、いいのですか? 戻らないと、貴方まで全てを失ってしまうのですよ?」
「承知の上でございます。……ご先祖様には申し訳ありませんが、あの者達はもう護るべき人間ではない。これからは貴方様の剣となります」
お父様の結託を教えてくれた、モアメッドくん。そんな彼が一緒に行きたいと申し出てくれて、迷惑をかけてしまうと重々承知でしたが――。
わたくしには独りで生きていくだけの力はないため、お言葉に甘えることにしたのでした。
「ここから1日ほど東に進めば、祖父母が使用していた家が――二階建ての民家があります。そちらを新たな拠点と致しましょう」
傍にいてくれるだけでも、ありがたいのに。モアメッドくんは生活の場まで用意してくれました。
「長旅お疲れ様でした。内部は相当汚れておりますので、少々お待ちを――お嬢様!?」
「わたくしはもう、お嬢様ではありませんよ。対等なのですから、わたくしにも手伝わせてください」
こちらだけ何もしないなんて、有り得ません。すでに沢山してもらっているのに、まだおんぶにだっこではいけません。
ですので窓を開けてせっせと掃き掃除や拭き掃除を行い、
「…………ふぅ。やっと、終わりましたね」
「はい。お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
丸二日かかってしまいましたが、埃とよごれだらけだったお家が綺麗なお家になったのでした。
「これで、新生活の土台はできました。しばらくは――このくらいは、許してもらいましょう。このお金を使って生活環境を整え、安定させていきましょう」
酷い目に遭わされるだけなんて、あってはならない。そんな思いでモアメッドくんは、お屋敷からお金こと慰謝料を持ち出してくれていました。
100万ギールス。
貴族にとってはそこまでの大金ではありませんが、平民には充分すぎる額です。まずはこのお金を使って食器などを買い揃えたり、後ろにある畑で作物を育てるように農具などを買ったり。たくさんのことができて、無事に必要なものが全て揃いました。
「ここからは、自分達の力で前に進んでいかないといけませんね」
「ですね。力を合わせて、第二の人生を歩んでまいりましょう」
あの頃とはまるで違って、自分でやらないといけないことが山ほどある。でも、不思議と苦には感じない。
むしろ輝きに満ちている、そんな日を過ごしていた――のですが。ここに来て、一か月と少しが経った頃でしょうか。
突然、あまりも予想外な来訪者が現れるのでした。
「お父様!? それに、クリストフたちまで……」
「承知の上でございます。……ご先祖様には申し訳ありませんが、あの者達はもう護るべき人間ではない。これからは貴方様の剣となります」
お父様の結託を教えてくれた、モアメッドくん。そんな彼が一緒に行きたいと申し出てくれて、迷惑をかけてしまうと重々承知でしたが――。
わたくしには独りで生きていくだけの力はないため、お言葉に甘えることにしたのでした。
「ここから1日ほど東に進めば、祖父母が使用していた家が――二階建ての民家があります。そちらを新たな拠点と致しましょう」
傍にいてくれるだけでも、ありがたいのに。モアメッドくんは生活の場まで用意してくれました。
「長旅お疲れ様でした。内部は相当汚れておりますので、少々お待ちを――お嬢様!?」
「わたくしはもう、お嬢様ではありませんよ。対等なのですから、わたくしにも手伝わせてください」
こちらだけ何もしないなんて、有り得ません。すでに沢山してもらっているのに、まだおんぶにだっこではいけません。
ですので窓を開けてせっせと掃き掃除や拭き掃除を行い、
「…………ふぅ。やっと、終わりましたね」
「はい。お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
丸二日かかってしまいましたが、埃とよごれだらけだったお家が綺麗なお家になったのでした。
「これで、新生活の土台はできました。しばらくは――このくらいは、許してもらいましょう。このお金を使って生活環境を整え、安定させていきましょう」
酷い目に遭わされるだけなんて、あってはならない。そんな思いでモアメッドくんは、お屋敷からお金こと慰謝料を持ち出してくれていました。
100万ギールス。
貴族にとってはそこまでの大金ではありませんが、平民には充分すぎる額です。まずはこのお金を使って食器などを買い揃えたり、後ろにある畑で作物を育てるように農具などを買ったり。たくさんのことができて、無事に必要なものが全て揃いました。
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「ですね。力を合わせて、第二の人生を歩んでまいりましょう」
あの頃とはまるで違って、自分でやらないといけないことが山ほどある。でも、不思議と苦には感じない。
むしろ輝きに満ちている、そんな日を過ごしていた――のですが。ここに来て、一か月と少しが経った頃でしょうか。
突然、あまりも予想外な来訪者が現れるのでした。
「お父様!? それに、クリストフたちまで……」
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