婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです

柚木ゆず

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第8話 大変なことになったみたいです マドゥレーヌ視点(2)

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「……………………」
「……………………」

 またわたくしとモアメッドくんは、呆然と見つめ合う羽目になりました。
 すべてを返上して、わたくしを当主にする……。

「この言葉に嘘はございません!! 我々の本心でございます!!」
「これが証拠です!!」
「お姉様ご覧ください!! こちらにはわたし達の拇印とサインがあるんです!!」
「間違いなく俺達は約束を守ります! ですのでどうか、お許しを!! 寛大な御判断をっっ!!」

 熱で顔が真っ赤になって今にも倒れそうになっている四人は、胸の前で手を組んでわたくしを見上げました。

「「「「もうこれ以上は耐えられないんです!! お願いします!!」」」」

 四人の性格を鑑みると、平民にはなりたくない。でも、死ぬよりは遥かにいい。
 お父様達の瞳には『死への恐怖』が宿っていて、手に取るように内心を読めました。

「父として失格な仕打ち、心から後悔しています!! 反省しています!!」
「わたくしもでございます!! 母――いえっ! おこがましいです!! 継母として失格な言動、後悔しております! 反省しております!!」
「最低な妹でした!! すべての行い! 後悔しています!! 反省しています!!」
「俺はあまりにも酷い、醜悪な婚約者でした!! 振る舞い全てを後悔しています! 反省しています!!」
(……だ、そうですね。どうされますか?)

 同じく、簡単に分かります。この人達は追い詰められているからそう言っているだけで、微塵も後悔も反省もしていません。
 なので許すつもりはありませんが、間接的とはいえ家族を死に至らしめたらお母様は悲しんでしまうでしょう。それに、自ら厳しい罰を用意していますしね。

(叔父様達はタチの悪い野心家で、任せるわけにはいきません。……第3の人生を、一緒に歩んでくださいますか?)
(喜んで。どこまででもお供させていただきます)
(ありがとうございます)「分かりました。…………はい、呪いを解きましたよ」

 書類を回収したあと大きくパンと手を叩き、「これが解呪の方法ですよ」と伝えると――。みるみる四人の顔色がよくなってきました。

「お、おぉ……! すごい……! 急に身体が軽くなったぞ……!」
「ええあなた……! あんなに重かったのに、はねのようだわ……!」
「段々、苦しくなくなっていっていますわ……!」
「あんなに熱かったのに、熱が引いていっている……! 夢のようだ……!!」

 ただ手を叩いて見せただけ、なのですけどね。お父様達は感激の涙を流しながら飛び跳ね、円陣を組んで抱き合いました。

「やった! やった!」
「やったわ! やったわ!」
「助かりましたわ! 助かりましたわ!」
「助かった! 助かったぁぁぁ!!」
「……モアメッドくん、いきましょうか」
「はい」

 これ以上この人達を見ていたくありませんし、わたくしにはやらないといけないことができてしまいました。ですので四人に背を向け、モアメッドくんと共に歩きだして――

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