お前なんかに会いにくることは二度とない。そう言って去った元婚約者が、1年後に泣き付いてきました

柚木ゆず

文字の大きさ
2 / 27

第1話 説明をお願いします エメリー視点

しおりを挟む
「オーレン伯爵家の、ガエル様。これは一体、どういうことなのでしょうか? 説明をお願い致します」

 春の陽気な日差しが降り注ぐ、晴れた空の下。テルエス子爵家邸の玄関先に私は居て、前方に困惑混じりの冷めた視線を注いでいました。

『お前なんかに会いに来ることは二度とない』。そう仰られたのに、ここに居ること。
 警備の方々に捕らえられて、後ろ手に縛られ拘束されていること。

 こういった理由で冷めながら困惑しており、私は改めて彼を見つめました。

「お父様によって出入り禁止となってはいましたが、捕縛の命まで出ては居ませんでした。貴方様は、何をなさったのですか?」
「大事な話がある! 入れてくれ! エメリーに会わせてくれ! 何度も叫んでも、それが聞き入れられることはなかったっ。だから強行突破を試みたんだっ!」

 なるほど。そういった御事情があったのですね。
 ですがどんな動機があれ、強行に及ぶと罪になります。不法侵入罪が成立しており、このまま連行すれば前科がつきますね。

「拘束に関しては、把握致しました。ですので次は、もう一方について伺います。貴方様は1年前に、なんと仰ったか覚えていますよね?」
「ああっ、覚えている! 二度と会いにくることはないと言ってしまった!!」

 言った。ではなく、言ってしまった、なのですね。

「だがっ、どうしても来ないといけない理由ができてしまったんだ!! 頼むっ!! 頼むから時間をくれっ! 当主――当主夫妻を止めてくれ!!」

 あんな形で婚約を解消したのですから、お父様とお母様は酷く嫌っています。こちらこそ二度と目にしたくはない! と、当時は仰っていました。そのため連行の手配を始めようとしており、オーレン様は必死な目を注いできました。

「頼む! 頼む!! 止めてくれ! 話を聞いてくれ!!」
「…………分かりました。お父様お母様。この方との時間を設けることに致します」

 その内容が私にも大きな影響をもたらすものであるのならば、ベルナール様にご心配やご迷惑をおかけすることになりかねません。
 この方のためではなくベルナール様のために、機会を作りました。

「おおっ、流石エメリーだ! 真の聖人だ……!!」
「……歯の浮く台詞は結構です。それに私にはこのあと、大切な予定が入っておりますので。速やかにお話しください」
「わっ、分かったっ!! あっ、あのなっ! あのなっっ!!」

 まるで神様を目にした、聖職者のよう。オーレン様は一瞬にして希望に満ちた顔になり、再び私が困惑してしまうことを仰られたのでした。

「ウチは今っ、大変な状態になっているんだ!! 我がオーレン伯爵家がっ、商会がっっ! ファスティーヌ様に乗っ取られようとしているんだ!!」

しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

はじめまして婚約者様  婚約解消はそちらからお願いします

蒼あかり
恋愛
リサには産まれた時からの婚約者タイラーがいる。祖父たちの願いで実現したこの婚約だが、十六になるまで一度も会ったことが無い。出した手紙にも、一度として返事が来たことも無い。それでもリサは手紙を出し続けた。そんな時、タイラーの祖父が亡くなり、この婚約を解消しようと模索するのだが......。 すぐに読める短編です。暇つぶしにどうぞ。 ※恋愛色は強くないですが、カテゴリーがわかりませんでした。ごめんなさい。

妹が最優先という事で婚約破棄なさいましたよね? 復縁なんてお断りよッ!!

百谷シカ
恋愛
私の婚約者クライトン伯爵エグバート卿は善良で優しい人。 末っ子で甘えん坊の私には、うってつけの年上の彼。 だけど、あの人いつもいつもいつもいつも……なんかもうエンドレスに妹たちの世話をやいている。 そしてついに、言われたのだ。 「妹の結婚が先だ。それが嫌なら君との婚約は破棄させてもらう」 そして破談になった私に、メイスフィールド伯爵から救いの手が差し伸べられた。 次々と舞い込んでくる求婚話。 そんな中、妹の結婚が片付いたと言ってエグバート卿が復縁をもちかけてきた。 「嘘でしょ? 本気?」 私は、愛のない結婚なんてしないわよ? ====================================== ☆読者様の御親切に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございます。 ご心配頂きました件について『お礼とご報告』を近況ボードにてお伝えさせて頂きます。 引き続きお楽しみ頂けましたら幸いです♡ (百谷シカ・拝)

婚約破棄されてしまいましたが、全然辛くも悲しくもなくむしろスッキリした件

瑞多美音
恋愛
真面目にコツコツ働き家計を支えていたマイラ……しかし、突然の婚約破棄。そしてその婚約者のとなりには妹の姿が…… 婚約破棄されたことで色々と吹っ切れたマイラとちょっとしたざまぁのお話。

【完結】私の婚約者の、自称健康な幼なじみ。

❄️冬は つとめて
恋愛
「ルミナス、すまない。カノンが…… 」 「大丈夫ですの? カノン様は。」 「本当にすまない。ルミナス。」 ルミナスの婚約者のオスカー伯爵令息は、何時ものようにすまなそうな顔をして彼女に謝った。 「お兄様、ゴホッゴホッ! ルミナス様、ゴホッ! さあ、遊園地に行きましょ、ゴボッ!! 」 カノンは血を吐いた。

双子の妹は私に面倒事だけを押し付けて婚約者と会っていた

今川幸乃
恋愛
レーナとシェリーは瓜二つの双子。 二人は入れ替わっても周囲に気づかれないぐらいにそっくりだった。 それを利用してシェリーは学問の手習いなど面倒事があると「外せない用事がある」とレーナに入れ替わっては面倒事を押し付けていた。 しぶしぶそれを受け入れていたレーナだが、ある時婚約者のテッドと話していると会話がかみ合わないことに気づく。 調べてみるとどうもシェリーがレーナに成りすましてテッドと会っているようで、テッドもそれに気づいていないようだった。

私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。  それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。  婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。  その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。  これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。

妹が私の婚約者を奪った癖に、返したいと言ってきたので断った

ルイス
恋愛
伯爵令嬢のファラ・イグリオは19歳の誕生日に侯爵との婚約が決定した。 昔からひたむきに続けていた貴族令嬢としての努力が報われた感じだ。 しかし突然、妹のシェリーによって奪われてしまう。 両親もシェリーを優先する始末で、ファラの婚約は解消されてしまった。 「お前はお姉さんなのだから、我慢できるだろう? お前なら他にも良い相手がきっと見つかるさ」 父親からの無常な一言にファラは愕然としてしまう。彼女は幼少の頃から自分の願いが聞き届けられた ことなど1つもなかった。努力はきっと報われる……そう信じて頑張って来たが、今回の件で心が折れそうになっていた。 だが、ファラの努力を知っていた幼馴染の公爵令息に助けられることになる。妹のシェリーは侯爵との婚約が思っていたのと違うということで、返したいと言って来るが……はあ? もう遅いわよ。

永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~

畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。

処理中です...