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第2話 異変の始まり 俯瞰視点
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((ファスティーヌ様と、父上と母上の話。早く終わらないものかな))
ガエルがテルエス邸に飛び込んでくる、およそ3時間前のこと。その頃のガエルの表情は今とまるで違っており、笑顔。にこやかな顔を作り、2階にある自室でソワソワとしていました。
『ガエル様。今日は、おじ様とおば様に大事なお話がありますの。2人でお茶をする前に、3人でお話しをさせていただきますわ』
縦ロールの金髪とツリ目が美しい、内外共に世界1と確信する美少女。最愛の人。ファスティーヌは来訪早々にそう口にし、執務室に入っていったのです。
((20分程度だと仰っていて、まもなく20分となる。もうそろそろ、ファスティーヌ様がここにいらっしゃって――おっ。終わったようだ!))
コンコンコン。楽しい時間の始まりを知らせるノック音が3度聞こえ、ガエルは嬉々として扉を開けます。そうすればそこには、想い人――はおらず、彼の父ヒューゴと母グレースが立っていました。
「??? 父上、母上? どうされたのですか?」
「あのな、ガエル。決めたのだよ」「あのね、ガエル。決めたのよ」
「は、はぁ。決めた、ですか? 一体なにをですか?」
それは何の脈絡もない言葉だったため、ガエルは眉を寄せて首を傾げます。すると返ってきたのは、
「「結婚後ファスティーヌ様には我が商会の会頭に就任していただき、商会に関する一切の権限をファスティーヌ様にお譲りすることにしたのだよ!(したのよ!)」
先ほど以上に、脈絡のない言葉。ヒューゴとグレースは、突如恐るべきことを言い出したのでした。
「商会をファスティーヌ様に譲る!? なっ、何を言っているのですか!? なぜ!? そんなことに!?」
「ファスティーヌ様とお前が婚約されたことで、我々はファスティーヌ様と懇意になっただろう? それにより、ファスティーヌ様の素晴らしさを理解したのだよ」
「あの方は、美も血も智も備えた方。わたしやこの人が操るよりも、ずっといいの。賢い使い方をしてくれるのよ」
「我々オーレン家は、レステラ家に――ファスティーヌ様に従属することにしたのだよ。より発展してゆくためにな!!」
2人はガエルが何を言っても、聞く耳を持ちません。これが一番良い方法! これが正しい! そう繰り返し、ファスティーヌを称え続けるのです。
「ちっ、父上も母上もっ、どうしてしまったんだ!? さっきまでは、こうではなかったのに――さっき……。まさか…………」
執務室で、何かがあったのか……?
そうだ! そうとしか考えられない!! ファスティーヌ様と何かがあったんだ!!
「……ど、どうにか、しなくては……。このままでは――」
「このままでは? ガエル様、どうされたんですの?」
そうしていると、ファスティーヌが――元凶が現れ、ニコリと微笑みました。
その微笑みは、これまでは愛しいものでした。いつまでも見ていたくなる、ものでした。ですが今は恐ろしいものへと変貌しており、
「うっ、うあああああああああああああああああああ!!」
怖い。怖い。怖い怖い怖い。
あっという間に恐怖に支配され、ガエルは絶叫。叫びながら部屋を――そのまま屋敷も飛び出し、御者が手入れをしていた馬車に飛び乗ります。そして、
「だっ、出せっ! 早く出せ!! たっ、助けを求めるんだっ!!」
「??? 坊ちゃま、どうされたのですか……? わたくしは、どこに向かえばよろしいのでしょ――」
「てっ、テルエス邸だ!! テルエス邸に向かうんだ!!」
ある程度の力を持つ、困っている人には無条件で手を差し伸べていた知り合いのもとへ! そういった理由でエメリーが選ばれ、そうして彼はあの場を訪れていたのでした――。
ガエルがテルエス邸に飛び込んでくる、およそ3時間前のこと。その頃のガエルの表情は今とまるで違っており、笑顔。にこやかな顔を作り、2階にある自室でソワソワとしていました。
『ガエル様。今日は、おじ様とおば様に大事なお話がありますの。2人でお茶をする前に、3人でお話しをさせていただきますわ』
縦ロールの金髪とツリ目が美しい、内外共に世界1と確信する美少女。最愛の人。ファスティーヌは来訪早々にそう口にし、執務室に入っていったのです。
((20分程度だと仰っていて、まもなく20分となる。もうそろそろ、ファスティーヌ様がここにいらっしゃって――おっ。終わったようだ!))
コンコンコン。楽しい時間の始まりを知らせるノック音が3度聞こえ、ガエルは嬉々として扉を開けます。そうすればそこには、想い人――はおらず、彼の父ヒューゴと母グレースが立っていました。
「??? 父上、母上? どうされたのですか?」
「あのな、ガエル。決めたのだよ」「あのね、ガエル。決めたのよ」
「は、はぁ。決めた、ですか? 一体なにをですか?」
それは何の脈絡もない言葉だったため、ガエルは眉を寄せて首を傾げます。すると返ってきたのは、
「「結婚後ファスティーヌ様には我が商会の会頭に就任していただき、商会に関する一切の権限をファスティーヌ様にお譲りすることにしたのだよ!(したのよ!)」
先ほど以上に、脈絡のない言葉。ヒューゴとグレースは、突如恐るべきことを言い出したのでした。
「商会をファスティーヌ様に譲る!? なっ、何を言っているのですか!? なぜ!? そんなことに!?」
「ファスティーヌ様とお前が婚約されたことで、我々はファスティーヌ様と懇意になっただろう? それにより、ファスティーヌ様の素晴らしさを理解したのだよ」
「あの方は、美も血も智も備えた方。わたしやこの人が操るよりも、ずっといいの。賢い使い方をしてくれるのよ」
「我々オーレン家は、レステラ家に――ファスティーヌ様に従属することにしたのだよ。より発展してゆくためにな!!」
2人はガエルが何を言っても、聞く耳を持ちません。これが一番良い方法! これが正しい! そう繰り返し、ファスティーヌを称え続けるのです。
「ちっ、父上も母上もっ、どうしてしまったんだ!? さっきまでは、こうではなかったのに――さっき……。まさか…………」
執務室で、何かがあったのか……?
そうだ! そうとしか考えられない!! ファスティーヌ様と何かがあったんだ!!
「……ど、どうにか、しなくては……。このままでは――」
「このままでは? ガエル様、どうされたんですの?」
そうしていると、ファスティーヌが――元凶が現れ、ニコリと微笑みました。
その微笑みは、これまでは愛しいものでした。いつまでも見ていたくなる、ものでした。ですが今は恐ろしいものへと変貌しており、
「うっ、うあああああああああああああああああああ!!」
怖い。怖い。怖い怖い怖い。
あっという間に恐怖に支配され、ガエルは絶叫。叫びながら部屋を――そのまま屋敷も飛び出し、御者が手入れをしていた馬車に飛び乗ります。そして、
「だっ、出せっ! 早く出せ!! たっ、助けを求めるんだっ!!」
「??? 坊ちゃま、どうされたのですか……? わたくしは、どこに向かえばよろしいのでしょ――」
「てっ、テルエス邸だ!! テルエス邸に向かうんだ!!」
ある程度の力を持つ、困っている人には無条件で手を差し伸べていた知り合いのもとへ! そういった理由でエメリーが選ばれ、そうして彼はあの場を訪れていたのでした――。
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