最後のチャンス~殿下、その選択でよろしいのですね?~

柚木ゆず

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第1話 大嫌いな女 ナタン視点(2)

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「殿下は先ほど、『民や貴族ども、大臣どもなどと違って変わりは居ない』『ソイツらとはまるで違う偉大な存在なんだ』。そのように仰られましたが、そちらは大きな誤りでございます」

 俺が気に入っている場所の一つ、城内にあるバルコニー。そこで優雅にイレブンジスを楽しんでいた俺に対し、ヤツは続けてこんなことを言い出した。

「確かに貴方様は、掛け替えのない存在でございます。けれど『唯一無二』は、他の皆様だって同じ。形は違えど『その方』にしかないものをお持ちで、全員が必要、いわゆるオンリーワンなのですよ」
「バカを言え!! そいつらは必ずしも必要じゃない! 居なくなったって、大して困りはしない――」
「そちらもまた、誤りでございます。皆様の存在は、必要なのですよ」

 遮りを含め、数々の無礼をお許しください――。ヤツは椅子から立ち上がって頭を下げ、顔が上がると再び俺を見つめてきた。

「国とは『ひとり』が集まり、手を繋ぎ合って、絶妙なバランスによって形成されております。その証拠に例えば、貴方様が軽んじられた農業、漁業。農家、漁師の方々。その皆様が居なくなってしまえば、我が国の自給率など様々な面に悪影響が出てしまいますよね?」
「ふん、あり得ない話だ。そいつらが居なくなれば、他のところからそちらに回せばいいだけだろうが!」
「殿下、技術は短期間で身につくものではありませんよ。多くの努力と経験が必要ですし、そもそもです。他のところから回せば、その『他のところ』に影響が生じてしまいますよ」
「…………………………」
「このように一部が欠けたらそこを起点としてほころびが生じ始め、やがては大きな穴となってしまいます。ゆくゆくは、国に大きなダメージをおよぼす大問題となってしまいます。……ですので皆様は、大切な存在。同じく国に必要不可欠な存在であり、嘲弄ではなく感謝を贈らなければならない存在なのですよ」

 ルーラは胸元に両手を添えて大きく頷き、今度は俺に対し微苦笑を浮かべてみせた。そして、

「ナタン殿下。以前の貴方様は、そちらを理解されている方でした。ですが今は、まるで別人のようになられております」
「……………………」
「そのようなお考えをお持ちのまま前へと進まれますと、必ずや国は衰退し、その最中(さなか)貴方様は全てを失ってしまうでしょう。……ですが、そうはならない『可能性』が残っております」
「……………………」
「わたしは貴方様の中に、まだ『澄んだもの』が残っていると信じております。ですので一度、ご自身を見つめ直してみてください」

 俺の両目から僅かも視線を逸らすことなく、こう口を動かしたのだった。

((…………………………そうか。そうか、よく分かった))

 だから俺は、ルーラへ向けて口元を緩め――

「お前は想像以上に、生意気な女だったんだな。もう我慢の限界だ……!」

 ――立ち上がり、鋭く睨みつけたのだった。

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