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第10話 逆監視5日目 監視前(父と母の告白)
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王宮で大きな家族喧嘩が起き、全員が痣だらけになったららしい。そういった噂が神殿に流れた、翌日の朝でした。
そんな珍事が影響したかのように、私の部屋では珍しいことが起きていました。
エリー、おはよう。今日は、昨日言いかけていた話――大事な話を、させてもらうね(もらうわ)
「「わたくし達からも、大切なお話がございます。すみませんがお時間を頂戴致します」」
映鏡越しの、お父様とお母様。穏やかな雰囲気を纏う、初老の女性2人――神殿の最高責任者であるミーシャ・タタヤ様と、副責任者であるサニア・リンケラ様。今朝はラズフ様だけではなく、このような方々までいらっしゃっているのです。
「最近のミウヴァ様を見ていて、皆さん気が付いたことがあるそうなんスよ。それと最後には、俺から重大な発表もありますんで。お付き合いをお願いしますっスよ」
「は、はい。畏まりました」
ラズフ様に促され、私はベッドの脇に座って聞く姿勢を取ります。
大事で大切なお話。重大な発表。なんなのでしょう……?
《エリー。エリーは7歳の時に聖女に覚醒して、その日から変わったよね? 人々のために、自分を変えたよね?》
《ずっと活発で甘えん坊さんだったのに、落ち着いて、他を最優先とするようになって。歴代の聖女様と肩を並べるように、厳しく自分を律するようになったわ》
そう、ですね。
私は歴代聖女とは異なり、聖職とは無縁の人生を送っていましたから。先人が持つ『土台』が全くなかったため、責務を果たせるよう努めました。
《エリーは僕達の子どもだけれど、聖女でもある。……聖女に関することは、聖女本人にしか分からない》
《だからあれこれ口出しするのは駄目だと思って、ここから見守るように決めたの。それが一番良いと、思い込んで》
お父様とお母様は伏し目がちになり、続けます。
《……そんな判断は、間違い、大間違いだったんだ。僕らは見守ることで距離が出来てしまって、その間にエリーは段々『らしさ』を失っていった》
《聖女として急成長する事と引き換えに、エリーナ・ミウヴァとしての色が薄らいでいってしまった。犠牲と引き換えに成長する、貴女をそんな道に進ませてしまったの》
お二人の声が重く痛々しいものとなって、揃って手の平に爪が食い込みます。
《別に、聖女に時間制限はない。ゆっくり、じっくり、バランス良く前に進んでいく方法もあったはずなんだよ》
《けれどあたし達が見守ることを選択してしまったせいで、固定されてしまった。貴女は貴女が敷いたレールの上を進み続ける事になったわ》
《僕達が行っていたのは、単に『全て』を君に任せていただけ。幼い子に自分で考えさせ、決めさせていただけだった。……ラズフさんからエリーの最近の様子を聞いて、実際にああやって会話をしてみて、ようやくソレに気づいたよ》
「わたくしも――わたくし達神殿関係者も、同じです。ただただ、付き従うことしかできていませんでした」
これまで口を閉じていた、ミーシャ様が――サニア様も一緒に、一歩前に出ました。
そんな珍事が影響したかのように、私の部屋では珍しいことが起きていました。
エリー、おはよう。今日は、昨日言いかけていた話――大事な話を、させてもらうね(もらうわ)
「「わたくし達からも、大切なお話がございます。すみませんがお時間を頂戴致します」」
映鏡越しの、お父様とお母様。穏やかな雰囲気を纏う、初老の女性2人――神殿の最高責任者であるミーシャ・タタヤ様と、副責任者であるサニア・リンケラ様。今朝はラズフ様だけではなく、このような方々までいらっしゃっているのです。
「最近のミウヴァ様を見ていて、皆さん気が付いたことがあるそうなんスよ。それと最後には、俺から重大な発表もありますんで。お付き合いをお願いしますっスよ」
「は、はい。畏まりました」
ラズフ様に促され、私はベッドの脇に座って聞く姿勢を取ります。
大事で大切なお話。重大な発表。なんなのでしょう……?
《エリー。エリーは7歳の時に聖女に覚醒して、その日から変わったよね? 人々のために、自分を変えたよね?》
《ずっと活発で甘えん坊さんだったのに、落ち着いて、他を最優先とするようになって。歴代の聖女様と肩を並べるように、厳しく自分を律するようになったわ》
そう、ですね。
私は歴代聖女とは異なり、聖職とは無縁の人生を送っていましたから。先人が持つ『土台』が全くなかったため、責務を果たせるよう努めました。
《エリーは僕達の子どもだけれど、聖女でもある。……聖女に関することは、聖女本人にしか分からない》
《だからあれこれ口出しするのは駄目だと思って、ここから見守るように決めたの。それが一番良いと、思い込んで》
お父様とお母様は伏し目がちになり、続けます。
《……そんな判断は、間違い、大間違いだったんだ。僕らは見守ることで距離が出来てしまって、その間にエリーは段々『らしさ』を失っていった》
《聖女として急成長する事と引き換えに、エリーナ・ミウヴァとしての色が薄らいでいってしまった。犠牲と引き換えに成長する、貴女をそんな道に進ませてしまったの》
お二人の声が重く痛々しいものとなって、揃って手の平に爪が食い込みます。
《別に、聖女に時間制限はない。ゆっくり、じっくり、バランス良く前に進んでいく方法もあったはずなんだよ》
《けれどあたし達が見守ることを選択してしまったせいで、固定されてしまった。貴女は貴女が敷いたレールの上を進み続ける事になったわ》
《僕達が行っていたのは、単に『全て』を君に任せていただけ。幼い子に自分で考えさせ、決めさせていただけだった。……ラズフさんからエリーの最近の様子を聞いて、実際にああやって会話をしてみて、ようやくソレに気づいたよ》
「わたくしも――わたくし達神殿関係者も、同じです。ただただ、付き従うことしかできていませんでした」
これまで口を閉じていた、ミーシャ様が――サニア様も一緒に、一歩前に出ました。
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