【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる

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14 先見の明 不発

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 朝食をいただき、同じキャンプ地にいた皆さんと別れて随分と経ちました。
 そろそろ次の街、エイクルドが見えてきても良いのですが。

「お、あれじゃねーか?」

 森に囲まれた道の向こうから、城壁が見えてまいりました。
 城壁は大量のツルで覆われており、一見手入れがされていないように見えます。

「わー、城壁が緑一色だぁ~」

「あんなにツルに覆われてて、強度は大丈夫なのかな」

「詳しい事は分かりませんが、今は気にしても仕方がありません。まずは街に入りましょう」

 門をくぐり街に入ると、農業が盛んな町だけあって、緑が非常に多いです。
 建物も木造が多く、どちらかというとのどかな街です。

「農業が盛んッていっても、畑や田んぼばっかりって訳じゃないんだな」

「そう言う場所は固まってるから、大通りからは見えないと思うよ」

 街の中央通りを進み、冒険者ギルドへと到着しました。
 中で依頼の完了報告をすると、突然鐘が鳴り響きます。

「聖女様! ようこそいらっしゃいましたー!」

 受付嬢が拍手をすると、ギルドのあちこちから冒険者が集まってきます。
 口々に聖女を称える声が聞えますが、わたくしはまだ何も成してはおりません、称えられる資格など無いというのに。

 沢山の方からパーティーのお誘いを受けましたが、全て断るとなぜか喜んでいました。
 断られて……喜ぶのですか?
 夜には歓迎パーティーを開くから参加してくれとせがまれ、それ位ならと受けします。

「晩飯代が浮くな。フラン様様だぜ!」

「フランというか、聖女様様、かな」

「え~? フランが聖女なんだから一緒じゃないの~?」

 明日の準備をしていますが、みんな歓迎パーティーが楽しみのようです。
 わたくしもパーティーは好きですが、聖女の恩恵、と喜べばいいのでしょうか。

「ん~っと、明日の準備はこんなものかな」

「そうですね、食料は買いましたし、消耗品の補充もしました。準備はこれで大丈夫でしょう」

「ね、ねぇフラン」

「なんですか? ロビー」

「その、他のパーティーに行ったりしないよね? 僕たちも頑張るからさ」

 なぜそのような不安な顔をするのですかロビー。
 わたくしはこのパーティーに骨を埋めるつもりだというのに。
 パーティーへの勧誘が多いのが、不安なのですね。

「安心してください。わたくしはどこへも参りません。ずっと一緒ですよロビー」

 優しく抱きしめてあげました。
 少しびっくりしていましたが、直ぐに抱き付いてきました。

「じゃあずーっと一緒だからね」

「ええ」

 安心したのか、その後はいつも通りに振る舞っています。
 出来るだけ不安にさせないようにしているのですが、お誘いを無くすことは出来ないでしょう。
 何かいい手があればよいのですが。

 夜になり、歓迎パーティーが開かれました。
 農業が盛んなだけあり、野菜料理が沢山出てきます。
 しかもどれもとても美味しいので、この味を再現できないかと悩んでしまいました。

「フラン~? いま変な事考えてなかった~?」

「この味を再現できないモノかと、色々考えておりました」

「よ、余計な事考えなくていいから!」

「メシはケイにまかしときゃいーんだよ」

 残念です……料理人にご教授頂こうかと思っていましたのに。
 今日は久しぶりにお酒も飲みました。
 毎度毎度、何故か男性陣が集まってきますが、やはりお疲れなのか、直ぐに眠ってしまいます。
 それほどわたくし達を歓迎してくれているのですね。




 次の日の早朝、街を出て次の街を目指します。
 次の街はロジー・アーン。鍛冶が盛んな街のようです。
 ロジー・アーンは少し遠く馬車で4日かかりますが、街道沿いは安全なので安心です。

 雲行きが怪しくなったのは、昼を回ってからでした。
 昼食が終わり、一休みしていると森がざわめくのです。
 動物がどこかへ走り去り、鳥は鳴き声を潜めます。

 なにかが……いるのでしょうか。

 しかし周囲を警戒しても何も見つからず、いつまでも留まっている訳にも行かないので出発しました。
 人の気配は読めませんが、何かがいるのは間違いないでしょう。
 先見の明で少し先が見えないかと思いましたが、アレを任意で使えるようになるには、かなりの訓練が必要なようです。

 気が休まる事無く、夜のキャンプ地に到着しました。
 ここに来るまで何もありませんでしたし、キャンプ地に着けば他の冒険者もいるでしょう。

「だれもいねーな」

「僕たちだけだね」

 前の時は沢山人が居ましたが、このキャンプ地にはわたくし達のみ……嫌な予感がします。
 そうは言ってもこれ以上は暗くて進めませんし、ここで夜を明かすしかありません。

 そしてその時は直ぐに訪れました。
 盗賊がわたくし達に襲い掛かってきたのです!

「マット! 僕と一緒にケイとフランを守るんだ!」

「分かってる! 分かってるけど……うわぁ!!」

「マット! ヒール!」

 盗賊達の数は多く、さらにわたくし達はまだまだ駆け出しの冒険者です。
 数でも実力でも負けているわたくし達は、あっという間に窮地に立た荒れました。
 こんな所で……聖女の先見の明も、今のわたくしでは能力を生かしきれません。
 未来が見えても、それに体が追いつかないのです。

 こんな……ところで!!

 盗賊の剣がわたくしの喉元に置かれ、マットもロビーも、ケイも捕まってしまいました。
 ここまでなのですか? わたくしの旅は、人生は……!?

 剣がゆっくりと首を横切ります。覚悟を決めたのですが、剣と共に盗賊が倒れました。
 倒れた盗賊の背後には黒い影……あの黒い鎧……見覚えがありますわ。

「聖女がこんな所で何をやっている」

「あなたは! ダラムの街でわたくしに付いてこいと言った剣士ソードマン!」

「俺はレッド・ローズ。勇者だ」
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