13 / 73
13 馬車の旅路1 色恋沙汰?
しおりを挟む
馬車の準備が出来ましたので、必要な物を順番に運び入れています。
聖都方面の最初の街は馬車で2日。明日の朝出れば、明後日の昼過ぎには到着するでしょう。
なのでそれに合わせて食料などを買いそろえ、依頼も丁度良いものがあればよいのですが。
「なーフラン、王子様が連れ戻しに来てたけど、フランって偉い人なのか?」
「そーそー。普通は両親とかだよね~」
「コラ! 人の事情に入り込んだらダメじゃないか!」
マットとケイが私の素性を気にし始めていますね。
無理もありません。王子が連れ戻しに来て、さらにこの国の王子と普通に会話をしたのですから。
ロビーは気を遣ってくれていますが、気にしている事でしょう。
「そうですね……いずれ分かる事ですので、しっかり話をした方が良いでしょう」
宿の部屋に戻り、昼食を食べながら話をしました。
私の聖女の力である先見の明が、魔の物の力だとして犯罪者扱いされ、処刑されたくなくて国から逃げた事。国では指名手配されているであろうこと。
しかし聖女であることが知れ渡り、手のひら返しで国から迎えが来たこと。
私が公爵令嬢である事。
「ふ~ん。思ったより大した事なかったな」
「マット! 大した事ないって、国から命からがら逃げてきたんだぞ!? しかもあの王太子との婚約まで破棄されて、傷ついてないわけ無いだろう!」
「フランって公爵令嬢だったんだ~。どうりで上品だと思った~」
……もっと否定的な意見が出てくると思っていましたが、どうでも良さそうですね。
犯罪者の疑いは晴れましたし、指名手配も解除されて無罪放免ですが、貴族だったことを黙っていて、それを快く思わないかもしれない、と思ったのですが。
「その、大丈夫なのですか? このまま私と冒険を続けても」
3人が顔を見合わせ、声を揃えて言いました。
「「「なんで?」」」
「だって聖女だったんだぜ? あのバカ王子、今頃悔しくって泣いてるぜ!」
「バカ王子が勘違いしてフランが被害を受けただけさ」
「ねーねー、貴族の作法ってどんなの~?」
……普通でした。3人の態度はいつも通り、普通に接してくれました。
私は、良い仲間と巡り合えました。
「そうですね。貴族の作法と言いうのは―――」
翌早朝にダラムの街を出発し、次の街・エイクルドを目指します。
荷物は万端、依頼も受けました。やり残しは……ありません。
「よーっし! いっくぜぇ!」
「「「おー!」」」
マットの号令の元、馬車が進み出します。
御者はロビー、その隣にはマット。荷台には私とケイが乗っています。
ここからまた、新しい場所を目指すのですね。
しかし今回は逃げるのではありません、先へ進めるのです。
仲間と共に目標を持って進む、なんと胸が高鳴るのでしょうか。
街を繋ぐ街道は基本的に安全です。
私が国を跨いでも大丈夫だったように、どの国でも定期的に討伐を行っています。
なので一番警戒すべきは盗賊の類です。
とはいえ、街道のキャンプ地は大体場所が決まっており、そこに沢山の人が集まるので、盗賊が襲ってくることは稀です。
しかし、やはり気を抜くとすぐにトラブルが発生します。
「これは困りました……一体どういう事でしょうか」
「フラン……大丈夫~?」
「まさかフランがこんな事になるなんて」
「あ~あ、俺しーらね」
昼食を作ろうとしたら、真っ黒になってしまいました。
おかしいですわね、言われた通りに作ったつもりでしたのに。
「そう言えばフランってさ、家で家事をした事ある?」
「家事ですか。家事は全てじいやかメイドがやっておりました」
「うわ~、流石は貴族!」
「じゃ無理じゃん!」
冒険者というのは、様々な能力が必要とされるのですね。
「パンを焼いてチーズを溶かして、スープを温めるだけだぜ? なんでこーなるんだ?」
「摩訶不思議ですわね」
それ以降は、私に料理当番が回ってくることは無くなりました。
これは更なる試練の予感がします。
順調に進み、そろそろキャンプ地へ到着します。
「あ、あれかな? 焚き火の灯りが見える」
前を見ると、馬車が数台と沢山の人が休憩をしています。
あそこがキャンプ地なのですね。
確かにあれだけの人数が居れば、盗賊も襲っては来れないでしょう。
「いよ~ぉう、アンタらもここでキャンプかい?」
格闘家と聖職者が私達を迎えました。
よく見ると冒険者が半分近くですね。商人らしい人もいるので、その護衛も居るのでしょう。
「ああ、俺達もここで休むんだ。場所、どっか開いてるか?」
「特に決まっちゃいねーよ。開いてる場所を適当に使いな」
「サンキュー」
空いてる場所……といっても、街道の両脇がかなり広くなっているので、場所はあちこちにあります。
なので他の方々と付かづ離れずの場所にしました。
「じゃあ夕食は私が作るね~」
不思議です。ケイの作る料理はとても美味しいです。
一体何が違うというのでしょうか。
「なぁなぁそこのお姉さん、こっちで一杯やらないかい?」
隣でキャンプをしていた男性が、こちらにお酒を持って現れました。
流石に最初のキャンプで酔いつぶれては格好が付かないので、ここはお断りいたしましょう。
「申し訳ございません。慣れない旅ですので、お酒は遠慮させていただきます」
「え、そうかい? 残念だな。じゃあさ、こっちでおしゃべりしてもいいかい?」
「それでしたか構いません。私達も色々と聞きたい事もありますし」
「よっしゃ! オーイみんな、OKもらったぞー」
そう言うと、沢山の人が私たちと共に焚き火を囲み始めます。
……こんなにいたのですね。
「お姉さん名前はなんてーの?」
「フランチェスカと申します」
「お嬢ちゃん達は?」
「マットだ!」
「ロビー」
「ケイで~す」
色々と話を聞き、次の街・エイクルドの事も聞きました。
どうやら農業が盛んな町で、農作物の価格が安いのだとか。
「それでお姉さん、彼氏はいるの?」
「私ですか? 以前は婚約者がいたのですが、捨てられてしまいました」
「マジかよ! じゃあさじゃあさ、俺と付き合わね?」
「コラー! フランはフラれて傷ついてるんだぞ! 無神経なこと言うな!」
「な、なんだよ~、俺はその傷を癒してあげたいだけだぜ?」
「ダメダメ、ダメ!」
ロビーが気を遣ってくれていますね。
実はさほど傷ついてはいないのですが、確かに気分の良い物でもありません。
「あぁ~、ひょっとしてお前、お姉さんに惚れてるな?」
「ぶおあぁ!? な、ななな、なにいってんじゃよ!」
じゃよ? いつも冷静なロビーが変な事を口走りましたね。
「うひゃひゃひゃ、しょうがねーよなー、お姉さん美人だし、胸も大きいし、スタイルいいもんな!」
「なななん、何の事かな」
そこからはロビーに話題が移りました。
あまり口数の多くない子ですので、これだけ喋っているのを見るのは珍しいですね。
そうして初めての夜は、沢山の人と楽しくふけて行きました。
聖都方面の最初の街は馬車で2日。明日の朝出れば、明後日の昼過ぎには到着するでしょう。
なのでそれに合わせて食料などを買いそろえ、依頼も丁度良いものがあればよいのですが。
「なーフラン、王子様が連れ戻しに来てたけど、フランって偉い人なのか?」
「そーそー。普通は両親とかだよね~」
「コラ! 人の事情に入り込んだらダメじゃないか!」
マットとケイが私の素性を気にし始めていますね。
無理もありません。王子が連れ戻しに来て、さらにこの国の王子と普通に会話をしたのですから。
ロビーは気を遣ってくれていますが、気にしている事でしょう。
「そうですね……いずれ分かる事ですので、しっかり話をした方が良いでしょう」
宿の部屋に戻り、昼食を食べながら話をしました。
私の聖女の力である先見の明が、魔の物の力だとして犯罪者扱いされ、処刑されたくなくて国から逃げた事。国では指名手配されているであろうこと。
しかし聖女であることが知れ渡り、手のひら返しで国から迎えが来たこと。
私が公爵令嬢である事。
「ふ~ん。思ったより大した事なかったな」
「マット! 大した事ないって、国から命からがら逃げてきたんだぞ!? しかもあの王太子との婚約まで破棄されて、傷ついてないわけ無いだろう!」
「フランって公爵令嬢だったんだ~。どうりで上品だと思った~」
……もっと否定的な意見が出てくると思っていましたが、どうでも良さそうですね。
犯罪者の疑いは晴れましたし、指名手配も解除されて無罪放免ですが、貴族だったことを黙っていて、それを快く思わないかもしれない、と思ったのですが。
「その、大丈夫なのですか? このまま私と冒険を続けても」
3人が顔を見合わせ、声を揃えて言いました。
「「「なんで?」」」
「だって聖女だったんだぜ? あのバカ王子、今頃悔しくって泣いてるぜ!」
「バカ王子が勘違いしてフランが被害を受けただけさ」
「ねーねー、貴族の作法ってどんなの~?」
……普通でした。3人の態度はいつも通り、普通に接してくれました。
私は、良い仲間と巡り合えました。
「そうですね。貴族の作法と言いうのは―――」
翌早朝にダラムの街を出発し、次の街・エイクルドを目指します。
荷物は万端、依頼も受けました。やり残しは……ありません。
「よーっし! いっくぜぇ!」
「「「おー!」」」
マットの号令の元、馬車が進み出します。
御者はロビー、その隣にはマット。荷台には私とケイが乗っています。
ここからまた、新しい場所を目指すのですね。
しかし今回は逃げるのではありません、先へ進めるのです。
仲間と共に目標を持って進む、なんと胸が高鳴るのでしょうか。
街を繋ぐ街道は基本的に安全です。
私が国を跨いでも大丈夫だったように、どの国でも定期的に討伐を行っています。
なので一番警戒すべきは盗賊の類です。
とはいえ、街道のキャンプ地は大体場所が決まっており、そこに沢山の人が集まるので、盗賊が襲ってくることは稀です。
しかし、やはり気を抜くとすぐにトラブルが発生します。
「これは困りました……一体どういう事でしょうか」
「フラン……大丈夫~?」
「まさかフランがこんな事になるなんて」
「あ~あ、俺しーらね」
昼食を作ろうとしたら、真っ黒になってしまいました。
おかしいですわね、言われた通りに作ったつもりでしたのに。
「そう言えばフランってさ、家で家事をした事ある?」
「家事ですか。家事は全てじいやかメイドがやっておりました」
「うわ~、流石は貴族!」
「じゃ無理じゃん!」
冒険者というのは、様々な能力が必要とされるのですね。
「パンを焼いてチーズを溶かして、スープを温めるだけだぜ? なんでこーなるんだ?」
「摩訶不思議ですわね」
それ以降は、私に料理当番が回ってくることは無くなりました。
これは更なる試練の予感がします。
順調に進み、そろそろキャンプ地へ到着します。
「あ、あれかな? 焚き火の灯りが見える」
前を見ると、馬車が数台と沢山の人が休憩をしています。
あそこがキャンプ地なのですね。
確かにあれだけの人数が居れば、盗賊も襲っては来れないでしょう。
「いよ~ぉう、アンタらもここでキャンプかい?」
格闘家と聖職者が私達を迎えました。
よく見ると冒険者が半分近くですね。商人らしい人もいるので、その護衛も居るのでしょう。
「ああ、俺達もここで休むんだ。場所、どっか開いてるか?」
「特に決まっちゃいねーよ。開いてる場所を適当に使いな」
「サンキュー」
空いてる場所……といっても、街道の両脇がかなり広くなっているので、場所はあちこちにあります。
なので他の方々と付かづ離れずの場所にしました。
「じゃあ夕食は私が作るね~」
不思議です。ケイの作る料理はとても美味しいです。
一体何が違うというのでしょうか。
「なぁなぁそこのお姉さん、こっちで一杯やらないかい?」
隣でキャンプをしていた男性が、こちらにお酒を持って現れました。
流石に最初のキャンプで酔いつぶれては格好が付かないので、ここはお断りいたしましょう。
「申し訳ございません。慣れない旅ですので、お酒は遠慮させていただきます」
「え、そうかい? 残念だな。じゃあさ、こっちでおしゃべりしてもいいかい?」
「それでしたか構いません。私達も色々と聞きたい事もありますし」
「よっしゃ! オーイみんな、OKもらったぞー」
そう言うと、沢山の人が私たちと共に焚き火を囲み始めます。
……こんなにいたのですね。
「お姉さん名前はなんてーの?」
「フランチェスカと申します」
「お嬢ちゃん達は?」
「マットだ!」
「ロビー」
「ケイで~す」
色々と話を聞き、次の街・エイクルドの事も聞きました。
どうやら農業が盛んな町で、農作物の価格が安いのだとか。
「それでお姉さん、彼氏はいるの?」
「私ですか? 以前は婚約者がいたのですが、捨てられてしまいました」
「マジかよ! じゃあさじゃあさ、俺と付き合わね?」
「コラー! フランはフラれて傷ついてるんだぞ! 無神経なこと言うな!」
「な、なんだよ~、俺はその傷を癒してあげたいだけだぜ?」
「ダメダメ、ダメ!」
ロビーが気を遣ってくれていますね。
実はさほど傷ついてはいないのですが、確かに気分の良い物でもありません。
「あぁ~、ひょっとしてお前、お姉さんに惚れてるな?」
「ぶおあぁ!? な、ななな、なにいってんじゃよ!」
じゃよ? いつも冷静なロビーが変な事を口走りましたね。
「うひゃひゃひゃ、しょうがねーよなー、お姉さん美人だし、胸も大きいし、スタイルいいもんな!」
「なななん、何の事かな」
そこからはロビーに話題が移りました。
あまり口数の多くない子ですので、これだけ喋っているのを見るのは珍しいですね。
そうして初めての夜は、沢山の人と楽しくふけて行きました。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,191
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる