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12 契約 旅の準備
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「おっと失礼しました。私はアレクサンダー、ここサザンクロス聖国の第一王子です」
やはりそうでしたか。見覚えのある顔だとは思っていましたが、まさかこの国の王太子まで出て来るとは思っても居ませんでした。
しかし゛真実にする ”とは一体?
「初めましてアレクサンダー王太子。私はフランチェスカと申します」
「お、おれはマットでご、ござる!」
「僕はロビー」
「私はケイです~」
順に挨拶をすると、アレクサンダー王太子は丁寧に握手をしてくれました。
確かサザンクロス聖国は教皇がトップに君臨していますが、実際はその下にいる聖王が国を統治しているはず。
宗教色が強く、国民には宗教に入る事が推奨されています。
「それではビジネスの話といきましょう。奥の部屋を借りるよ」
受付嬢に了解を得、2階の会議室に入りました。
会議室には私達4人と、王太子とその護衛5名です。
王太子が中央のイスに座り、私達はその向かいに座りました。
「さてフランチェスカ聖女。我が国からの長期依頼があるのですが、受けてもらえないだろうか」
早速話が始まりましたが、まだ内容を聞いていないため、答える事が出来ません。
「まずは内容をお聞かせ願えますか?」
「ん? おおそうでした、おい」
王太子の隣に座っていた護衛が、羊皮紙を取り出してこちらに向けます。
「聖女様に依頼したいのは、教皇様と共に日々の祈りをお願いしたいのです。可能ならば宮殿で、無理な場合は出先で朝晩1回づつ、国の安寧を祈ってください」
羊皮紙を見ると細かい条件が書かれています。
内容を見ると報酬自体は高くない物の、7日おきに報酬が支払われ、行事がある場合は別途支払いが行われたり、必要な場合は追加の依頼も発生するようです。
そこで一番懸念していた内容を探しますが……見当たりませんね。
「最大でどれだけの期間なのでしょうか」
「期間は設けておりません。こちらの望む間です」
「こちらから契約を打ち切る事は可能ですね?」
言葉が詰まりました。
どうやらあちらがイイというまで、ずっと続けさせるつもりだったのでしょう。
少しの間、護衛と王太子がヒソヒソ話をし、王太子が口を開きました。
「1年ごとの契約更新でどうでしょう。行事には参加して欲しいからその間は冒険に行けないが、それなりの報酬を支払わせて頂きます」
1年……ですか。行事に呼ばれるのは聖女という名を利用するつもりでしょうが、それ以外では行動の自由があるようですし、こちらの準備が整うまでは、便利な依頼として使えるでしょう。
3人の顔を見ます。
マットは難しい顔をしていますが、ロビーは涼しい顔を、ケイも不満はないようです。
永久にこの国に縛り付ける、それが回避できたのなら、悪くはない条件でしょうか。
「了解いたしました。その依頼、受けさせて頂きます」
一瞬王太子が目を見開いて両手で拳を作りかけましたが、咳払いをして平常心を取り戻しました。
「そうですか、ありがとうございます。それでは新しい契約書を作成しますので、都合の良い日に城に来ていただけますか? 聖都はここからですと馬で数日かかりますが、条文を書き直さなくてはいけませんので」
「かしこまりました。少々時間はかかりますが、必ずお伺いいたします」
王太子と私達が握手をし、その場は解散しました。
「あの王太子、すごく喜んでたね」
「ホント~、思わずガッツポーズを取りそうになってたね~」
「え、そうなのか?」
「はい。何としても私達に、祈りを捧げさせたかったのでしょう」
王太子たちは帰りましたが、私達はまだ会議室に残っています。
「でもどうすんだよ。俺達馬なんて持ってねーぞ?」
「そうだね、フランのサンダルフォン一頭じゃみんなは乗れないし……中古の馬車でも買おうか?」
「わぁ~いいね、馬車に乗っての旅って、なんだか憧れる~」
「確か依頼の中には、街を跨いでの物が有った筈です。それを受けながら行けば、路銀に困る事は無いでしょう」
「おっしゃ! んじゃ明日は馬車を見に行こうぜ!」
翌日は馬車を探しに街を歩き回っています。
4人が数日間の荷物を積んで移動できる、中古の馬車。
中々見つからないのでは? と思いましたが、あっさり良い物が見つかりました。
「こいつはどうだい? 行商人が新しいのを買ったから、コイツを売りに出したんだ。車輪と軸は新しいのに交換したから、簡単には壊れねぇぜ」
4人と荷物を積めて、更に幌まである馬車です。
大きくはありませんが、サンダルフォン一頭で引けますし、野営をする時は見張りと交代で馬車で眠れます。
「これは素晴らしいですね。ではこれを―――」
「まってフラン! ねぇおっちゃん、行商に使われてたんなら、床も傷んでるんじゃない? ほらここ、腐っちゃいないし、簡単には壊れないかもしれないけど、まだまだ補修は必要じゃない?」
「ほほぅ、ボウズ良く気が付いたな。補修と値引きとどっちがいい?」
「値引きで」
「もってけ泥棒! この額でどうだ」
「ここの端数をさ……」
「むむ、それは厳しいな、これでどうだ」
ロビーが店長と交渉を始めました。
こんなに逞しかったのですね、ロビーは。どちらかというと大人しい子だと思っていました。
「ロビーはね、お父さんが商人をやってるんだよ~。だから交渉はロビーに任せれば大丈夫~」
「そうだったのですか。それは頼りになります」
かなりの値引きとオマケを付けてもらい、馬車を購入出来ました。
さっそくサンダルフォンに引いてもらいましょう。
やはりそうでしたか。見覚えのある顔だとは思っていましたが、まさかこの国の王太子まで出て来るとは思っても居ませんでした。
しかし゛真実にする ”とは一体?
「初めましてアレクサンダー王太子。私はフランチェスカと申します」
「お、おれはマットでご、ござる!」
「僕はロビー」
「私はケイです~」
順に挨拶をすると、アレクサンダー王太子は丁寧に握手をしてくれました。
確かサザンクロス聖国は教皇がトップに君臨していますが、実際はその下にいる聖王が国を統治しているはず。
宗教色が強く、国民には宗教に入る事が推奨されています。
「それではビジネスの話といきましょう。奥の部屋を借りるよ」
受付嬢に了解を得、2階の会議室に入りました。
会議室には私達4人と、王太子とその護衛5名です。
王太子が中央のイスに座り、私達はその向かいに座りました。
「さてフランチェスカ聖女。我が国からの長期依頼があるのですが、受けてもらえないだろうか」
早速話が始まりましたが、まだ内容を聞いていないため、答える事が出来ません。
「まずは内容をお聞かせ願えますか?」
「ん? おおそうでした、おい」
王太子の隣に座っていた護衛が、羊皮紙を取り出してこちらに向けます。
「聖女様に依頼したいのは、教皇様と共に日々の祈りをお願いしたいのです。可能ならば宮殿で、無理な場合は出先で朝晩1回づつ、国の安寧を祈ってください」
羊皮紙を見ると細かい条件が書かれています。
内容を見ると報酬自体は高くない物の、7日おきに報酬が支払われ、行事がある場合は別途支払いが行われたり、必要な場合は追加の依頼も発生するようです。
そこで一番懸念していた内容を探しますが……見当たりませんね。
「最大でどれだけの期間なのでしょうか」
「期間は設けておりません。こちらの望む間です」
「こちらから契約を打ち切る事は可能ですね?」
言葉が詰まりました。
どうやらあちらがイイというまで、ずっと続けさせるつもりだったのでしょう。
少しの間、護衛と王太子がヒソヒソ話をし、王太子が口を開きました。
「1年ごとの契約更新でどうでしょう。行事には参加して欲しいからその間は冒険に行けないが、それなりの報酬を支払わせて頂きます」
1年……ですか。行事に呼ばれるのは聖女という名を利用するつもりでしょうが、それ以外では行動の自由があるようですし、こちらの準備が整うまでは、便利な依頼として使えるでしょう。
3人の顔を見ます。
マットは難しい顔をしていますが、ロビーは涼しい顔を、ケイも不満はないようです。
永久にこの国に縛り付ける、それが回避できたのなら、悪くはない条件でしょうか。
「了解いたしました。その依頼、受けさせて頂きます」
一瞬王太子が目を見開いて両手で拳を作りかけましたが、咳払いをして平常心を取り戻しました。
「そうですか、ありがとうございます。それでは新しい契約書を作成しますので、都合の良い日に城に来ていただけますか? 聖都はここからですと馬で数日かかりますが、条文を書き直さなくてはいけませんので」
「かしこまりました。少々時間はかかりますが、必ずお伺いいたします」
王太子と私達が握手をし、その場は解散しました。
「あの王太子、すごく喜んでたね」
「ホント~、思わずガッツポーズを取りそうになってたね~」
「え、そうなのか?」
「はい。何としても私達に、祈りを捧げさせたかったのでしょう」
王太子たちは帰りましたが、私達はまだ会議室に残っています。
「でもどうすんだよ。俺達馬なんて持ってねーぞ?」
「そうだね、フランのサンダルフォン一頭じゃみんなは乗れないし……中古の馬車でも買おうか?」
「わぁ~いいね、馬車に乗っての旅って、なんだか憧れる~」
「確か依頼の中には、街を跨いでの物が有った筈です。それを受けながら行けば、路銀に困る事は無いでしょう」
「おっしゃ! んじゃ明日は馬車を見に行こうぜ!」
翌日は馬車を探しに街を歩き回っています。
4人が数日間の荷物を積んで移動できる、中古の馬車。
中々見つからないのでは? と思いましたが、あっさり良い物が見つかりました。
「こいつはどうだい? 行商人が新しいのを買ったから、コイツを売りに出したんだ。車輪と軸は新しいのに交換したから、簡単には壊れねぇぜ」
4人と荷物を積めて、更に幌まである馬車です。
大きくはありませんが、サンダルフォン一頭で引けますし、野営をする時は見張りと交代で馬車で眠れます。
「これは素晴らしいですね。ではこれを―――」
「まってフラン! ねぇおっちゃん、行商に使われてたんなら、床も傷んでるんじゃない? ほらここ、腐っちゃいないし、簡単には壊れないかもしれないけど、まだまだ補修は必要じゃない?」
「ほほぅ、ボウズ良く気が付いたな。補修と値引きとどっちがいい?」
「値引きで」
「もってけ泥棒! この額でどうだ」
「ここの端数をさ……」
「むむ、それは厳しいな、これでどうだ」
ロビーが店長と交渉を始めました。
こんなに逞しかったのですね、ロビーは。どちらかというと大人しい子だと思っていました。
「ロビーはね、お父さんが商人をやってるんだよ~。だから交渉はロビーに任せれば大丈夫~」
「そうだったのですか。それは頼りになります」
かなりの値引きとオマケを付けてもらい、馬車を購入出来ました。
さっそくサンダルフォンに引いてもらいましょう。
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