冷遇王子を匿ったらまさかのアレがついてきた

すずね

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第5話 1

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 アルベルトと共に学び、遊び、新しい食文化を生み出し、この夏、エリアスは十二歳になった。
 アルベルトの予言通り背が伸びて、母や長姉と並ぶくらいに成長している。
 屋敷の男性陣の中ではまだまだ小柄で声も高いままだが、関節が少しだけ太くなり、頑張れば二の腕に力こぶを作れるようになった。
 それでも、アルベルトが優しい声で名前を呼んでくれると、ついつい甘えて抱き付いたり膝に座ったりしてしまう。

「エリアス、あなたはこれから心も体も大人になっていく大事な年頃。対してアルベルトはすっかり大人になりました。そろそろ別の部屋で寝てはどうかしら」
 夏の終わり、婚約式を数日後に控えた晩餐の席でバレンティーナが言った。
 その場にいる両親と姉達の視線が集まる。
 食後のデザートにアップルパイを食べていたエリアスは、最後の一口を急いで紅茶で飲み込んだ。
「嫌です! 部屋は別にしてもいいけど、寝るときは一緒がいいです!」
 これから秋が来て、その後には厳しくて長い冬が来る。
 アルベルトと一緒の毛布に包まって寝ると温かくて快適なことを、この二年でエリアスは知ってしまった。
 これを覚えたら冬に一人では眠れない。
 それに、眠る直前までたわいない事を話しながら撫でてもらったり、背中をトントンされるのは心地よく、その時間を手放したくない。
「今は同じベッドでただ一緒に眠っているだけかもしれないけれど、アルベルトはそれでは済まないでしょう?」
「いえ、そんな事はありません」
 アルベルトが即答すると、バレンティーナはため息を吐く。
「男性同士は負担が大きいのだから、エリアスが十八歳になるまでは清いお付き合いをなさい」
「何言ってるのー! 僕達、そういうんじゃないもんねぇ」
 隣に座るアルベルトに同意を求めて視線を送れば、当然だとばかり、うなずき返してくれる。
「義母上、エリアスのことは誰よりも何よりも大切にすることを誓います。心配しないでください」
 自分が言うとわがままだと聞き流されがちなことを、いつも上手くまとめて信頼を得るアルベルトを、エリアスは自慢そうに満面の笑みで見つめる。
「エリアス、男女の夫婦とは違うけれど、家族として、兄弟のように仲良くやっていこう」
 アルベルトが手を出したので、エリアスは握手を返した。
「はい! アル兄様!」
「だが、これからは婚約者であり、婚姻を控えているのだから、対外的にも兄様と呼ぶのはやめておこうか。アルと呼んでごらん」
「……アル?」
 呼び方を変えるのは気恥ずかしいが、パートナーを愛称で呼ぶのは少し大人になったような気がして誇らしい。
 両親が二人きりの時に、互いを「サム」「ティナ」と呼び合うのを見かけ、密かに憧れていたのだ。


 その晩、いつものように二人で風呂に入る。
 頭と体を洗った後は、互いに湯をかけて流しあう。
 手拭いを頭に乗せ、一緒に「うぃ~」と言いながら湯舟に漬かった。
「僕らは男同士なんだから、清い関係って言ってもピンとこないよねぇ、アル兄様、あ、アル? えへへ」
「その手のことを話し合うとしても何年も先だからね」
「そうか、十八歳って言ってら六年か。ずっと先のことだね」
 将来的には、性的な触れ合いがある可能性もゼロではないのだと考えを改めたが、それでもやはりエリアスには現実感はなかった。

 風呂上りはアルベルトに頭を拭いてもらい、寝間儀を身に着ける。
 アルベルトが自分の身支度をしている間に、二人分の牛乳の準備を申しつけた。
 運ばれてきた牛乳瓶を手に取り、乾杯をして腰に片手を添える。
「「はあ~っ!」」
 息もぴったりに飲み干した。
 ほぼ毎日一緒に風呂に入っているせいか、声をかけ合わなくても阿吽の呼吸で流れるように身支度を進める。
 互いに髪を魔術で乾かして、丁寧に梳かす。
 アルベルトの真似をして伸ばし始めたエリアスの髪は、肩まで届くようになった。

 入浴後、部屋に戻る途中でシモンと出くわした。
「まだ一緒に寝てるんだって? どう見てもサイズ的に入らないんだから、せめてもう少し腰がしっかり出来上がってから……」
 アルベルトに両耳をふさがれ、前にもこんなことがあったと思い返す。
「そういったことは、エリアスが成人したら二人で話し合って決めるのでご心配なく」
 晩餐の席にはいなかったのに、バレンティーナと同じようなことを言う。
「高級娼館の伝はあるから、切羽詰まってきたら相談するんだぞ」
「はいはい、切羽詰まることがあったらね」
 シモンは、おざなりな返事を返すアルベルトの腕を引いて肩を抱き込み、耳打ちする。
「精通はまだみたいだけど、あそこの産毛が濃くなってきたからそろそろだぞ。子供を犯す変態になりたくなかったら、エリアスのおねだりに流されるなよ?」
「そんなの当たり前です!」
 アルベルトは大きな声できっぱりと答える。
 シモンの声は聞こえなかったが、下ネタのような言い方でからかいながら忠告し、それをアルベルトが否定したのだろう。
 なんだかんだ言ってアルベルトを気にかけているから、善意で言っているのは確かなのだが、いかんせんおふざけが過ぎる。

 ラウラと婚約が決まったシモンは、予想通り中央貴族の庶子だった。
 だが、出自が分かったところで人を食ったようなふざけた態度は変わらない。
 グラナート家に対する忠誠も、ラウラ隊の副隊長としての誇りも変わることはなかった。
 ユリアの婚約者は縁続きの伯爵家嫡男で、人柄は良いが貴族らしい貴族なので、エリアスは猫を被って接している。
 だから、庶民育ちで気兼ねなく話せるシモンのことを、実はエリアスも頼りにしている。
 揶揄に対しては厳しい口調のアルベルトだが、護衛として守ってもらう中で信頼関係を築きつつあるようだ。

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