36 / 37
番外編
晩餐のあと
しおりを挟む晩餐を終えた、ナーヴェとアメリア。
「今日はまだもう少し確認したい書類が残っているから、君は先に眠っていてくれないか?」
ナーヴェはアメリアを寝室まで送りとどけ、彼女から就寝の挨拶を聞くとにこやかに微笑んで、また来た廊下を戻っていった。
静かな寝室に一人佇むアメリア。
今はナーヴェの仕事が終わるのを待っているだけにも関わらず、とても幸せな気分だった。
ナーヴェは先に眠って、と言っていたが彼女は何だか眠る前にもう一度、彼の顔が見たいような気がして、眠らずに窓のほうを眺めながらベッドに横たわっていた。
それから1時間ほどして、音もなく扉が開いたかと思うと、誰かが近づいてくるような気配がした。
ナーヴェ様だわ、お仕事が終わったのね・・・
と扉側に背を向けていたアメリアは思った。
一度起き上がるために態勢を正そうとすると、耳のあたりにナーヴェの柔らかな髪がふわりと触れたのを感じた。
彼のぬくもりが伝わってきたアメリアは、急に自分の胸の鼓動が騒がしくなったように感じられた。
彼女は咄嗟に目を瞑った。
どうもナーヴェはアメリアが眠っていると思っているらしい。
彼女の両頬に優しく手を添えてから、ゆっくりと口づけを落とした。
彼女はつい驚いて目を開けてしまった。
「あ・・・」
すると、穏やかな翡翠色の瞳がこちらを見つめていた。
「ナーヴェ様・・・」
アメリアの顔は真っ赤だった。
「起こしてしまったかな?愛しい眠り姫・・・」
アメリアは起き上がり、それから二人で少し話をした。
ナーヴェはいつでも楽しそうに頷きながら、彼女の話を聞いてくれる。
ちょうど日付が変わる時刻になった。
「少し目を瞑って待っていて・・・」
アメリアが目を瞑ってから数分が経っただろうか、一度この場を離れた彼が戻ってきたような感じがした。
「・・・目を開けて」
彼女が目を開くと、頬を赤く染めたナーヴェがいた。
彼はどこから持ってきたのか、沢山の百合が束ねられた大きな花束をアメリアに手渡したのだった。
「本当は朝になったら渡すつもりで用意をしていたのだけれど・・・待ちきれなくて・・・」
彼の照れるような顔を見たアメリアは、いつも綺麗な顔をなさっているけれど、こういう顔をするととても可愛らしい方だわ・・・としみじみ思った。
「誰よりも早く君に言いたかったから・・・誕生日おめでとう!アメリア」
花束を貰ったことは嬉しかったが、やはり自分にとって一番の喜びは彼が笑顔で隣にいてくれることなのだと、アメリアは今の幸せに感謝したのだった。
9
あなたにおすすめの小説
【完結】有能外交官はドアマット夫人の笑顔を守りたい
堀 和三盆
恋愛
「まあ、ご覧になって。またいらしているわ」
「あの格好でよく恥ずかしげもなく人前に顔を出せたものねぇ。わたくしだったら耐えられないわ」
「ああはなりたくないわ」
「ええ、本当に」
クスクスクス……
クスクスクス……
外交官のデュナミス・グローは赴任先の獣人国で、毎回ボロボロのドレスを着て夜会に参加するやせ細った女性を見てしまう。彼女はパルフォア・アルテサーノ伯爵夫人。どうやら、獣人が暮らすその国では『運命の番』という存在が特別視されていて、結婚後に運命の番が現れてしまったことで、本人には何の落ち度もないのに結婚生活が破綻するケースが問題となっているらしい。法律で離婚が認められていないせいで、夫からどんなに酷い扱いを受けても耐え続けるしかないのだ。
伯爵夫人との穏やかな交流の中で、デュナミスは陰口を叩かれても微笑みを絶やさない彼女の凛とした姿に次第に心惹かれていく。
それというのも、実はデュナミス自身にも国を出るに至ったつらい過去があって……
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
婚約者の心変わり? 〜愛する人ができて幸せになれると思っていました〜
冬野月子
恋愛
侯爵令嬢ルイーズは、婚約者であるジュノー大公国の太子アレクサンドが最近とある子爵令嬢と親しくしていることに悩んでいた。
そんなある時、ルイーズの乗った馬車が襲われてしまう。
死を覚悟した前に現れたのは婚約者とよく似た男で、彼に拐われたルイーズは……
紫の瞳の王女と緑の瞳の男爵令嬢
秋野 林檎
恋愛
「わ……私と結婚してください!」と叫んだのは、男爵令嬢ミーナ
プロポーズされたのは第一騎士団の団長、アークフリード・フェリックス・ブランドン公爵
アークフリードには、13年前に守りたいと思っていた紫の髪に紫の瞳をもつエリザベスを守ることができず死なせてしまったという辛い初恋の思い出があった。
そんなアークフリードの前に現れたのは、赤い髪に緑の瞳をもつミーナ
運命はふたりに不思議なめぐりあいの舞台を用意した。
⁂がついている章は性的な場面がありますので、ご注意ください。
「なろう」でも公開しておりますが、そちらではまだ改稿が進んでおりませんので、よろしければこちらでご覧ください。
本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました
音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。
____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。
だから私は決めている。
この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。
彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。
……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。
番認定された王女は愛さない
青葉めいこ
恋愛
世界最強の帝国の統治者、竜帝は、よりによって爬虫類が生理的に駄目な弱小国の王女リーヴァを番認定し求婚してきた。
人間であるリーヴァには番という概念がなく相愛の婚約者シグルズもいる。何より、本性が爬虫類もどきの竜帝を絶対に愛せない。
けれど、リーヴァの本心を無視して竜帝との結婚を決められてしまう。
竜帝と結婚するくらいなら死を選ぼうとするリーヴァにシグルスはある提案をしてきた。
番を否定する意図はありません。
小説家になろうにも投稿しています。
彼は亡国の令嬢を愛せない
黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。
ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。
※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。
※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる