5 / 29
4
しおりを挟む
「こんな年にもなってどうかと思うけれど、またあのお話を聞かせてくれないかしら・・・悲しいお話ではあるけれど、最後に少しだけ希望が持てるようなところが好きなの」
今日は満月の夜だ。
子供のころから、満月になると胸がざわついて眠れなくなるエレーヌ。
そんなエレーヌのために、彼女が眠るまでメリダは様々な話をしてくれたが、その中でも特にエレーヌが一番気に入っている話があった。
『東の聖女と西の王子』という話だ。
メリダの家に伝わる話で、本としては存在しないものらしい。
昔々のこと、心優しい東の聖女は、西にある魔族の国の王子と恋に落ちた。
東の国の王は、西の国を狙っていたが、まるで武神のような強さを誇る西の王子の存在があっては、戦を仕掛けたとしても敗北は必至だった。
そこで、東の王は、西の王子が聖女にだけは心を許しているということを利用し、彼女に西の王子を騙し討ちにするようにと命令する。
しかし、聖女はそれを拒んだ為、怒った王は彼女を人質にして西の王子を従わせようと画策する。
彼の重荷になることを良しとしなかった聖女は、自ら命を絶ってしまう。
西の王子が知らせを聞いて駆けつけた時には、彼女はすでにこと切れてしまっていた。
悲しむ王子だったが、聖女にいつも付き従っていた司祭から彼女の最後の手紙を渡される。
手紙には、『また必ず転生してあなたの前に現れるから、今度はきっと一緒になりましょう』と書かれていた。
その手紙を胸にしまい込んだ西の王子は、その長き命が尽きるまで聖女を探し続けることを誓ったという・・・。
◇
「ねぇ、メリダ、このお話に出てくる国はもう無いのかしら?」
「そうですね、そもそも本当にあった話かどうかも分かりませんし、本当の話だったとしても、この話自体がずいぶん昔のものでしょうから、もう無くなっているでしょうね」
「・・・それはそうね」
「お話ももう終わりましたし・・・もう眠れそうですか?お嬢様」
メリダは優しく微笑んだ。
「ええ、ありがとう。メリダのおかげだわ、おやすみなさい」
「お嬢様も良い夜を・・・おやすみなさいませ」
就寝の挨拶をしたメリダは、エレーヌの部屋を後にした。
◇
夜も更け、一人眠りについたエレーヌの枕元に人影があった。
「あなたを失ったのも、こんな夜でしたね・・・」
肩にかかる銀色の髪をした赤い瞳が美しい男は、愛しげにエレーヌの横顔を見つめ、感慨深そうに呟いた。
今日は満月の夜だ。
子供のころから、満月になると胸がざわついて眠れなくなるエレーヌ。
そんなエレーヌのために、彼女が眠るまでメリダは様々な話をしてくれたが、その中でも特にエレーヌが一番気に入っている話があった。
『東の聖女と西の王子』という話だ。
メリダの家に伝わる話で、本としては存在しないものらしい。
昔々のこと、心優しい東の聖女は、西にある魔族の国の王子と恋に落ちた。
東の国の王は、西の国を狙っていたが、まるで武神のような強さを誇る西の王子の存在があっては、戦を仕掛けたとしても敗北は必至だった。
そこで、東の王は、西の王子が聖女にだけは心を許しているということを利用し、彼女に西の王子を騙し討ちにするようにと命令する。
しかし、聖女はそれを拒んだ為、怒った王は彼女を人質にして西の王子を従わせようと画策する。
彼の重荷になることを良しとしなかった聖女は、自ら命を絶ってしまう。
西の王子が知らせを聞いて駆けつけた時には、彼女はすでにこと切れてしまっていた。
悲しむ王子だったが、聖女にいつも付き従っていた司祭から彼女の最後の手紙を渡される。
手紙には、『また必ず転生してあなたの前に現れるから、今度はきっと一緒になりましょう』と書かれていた。
その手紙を胸にしまい込んだ西の王子は、その長き命が尽きるまで聖女を探し続けることを誓ったという・・・。
◇
「ねぇ、メリダ、このお話に出てくる国はもう無いのかしら?」
「そうですね、そもそも本当にあった話かどうかも分かりませんし、本当の話だったとしても、この話自体がずいぶん昔のものでしょうから、もう無くなっているでしょうね」
「・・・それはそうね」
「お話ももう終わりましたし・・・もう眠れそうですか?お嬢様」
メリダは優しく微笑んだ。
「ええ、ありがとう。メリダのおかげだわ、おやすみなさい」
「お嬢様も良い夜を・・・おやすみなさいませ」
就寝の挨拶をしたメリダは、エレーヌの部屋を後にした。
◇
夜も更け、一人眠りについたエレーヌの枕元に人影があった。
「あなたを失ったのも、こんな夜でしたね・・・」
肩にかかる銀色の髪をした赤い瞳が美しい男は、愛しげにエレーヌの横顔を見つめ、感慨深そうに呟いた。
32
あなたにおすすめの小説
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
転生者と忘れられた約束
悠十
恋愛
シュゼットは前世の記憶を持って生まれた転生者である。
シュゼットは前世の最後の瞬間に、幼馴染の少年と約束した。
「もし来世があるのなら、お嫁さんにしてね……」
そして、その記憶を持ってシュゼットは転生した。
しかし、約束した筈の少年には、既に恋人が居て……。
【完結】聖女の私を処刑できると思いました?ふふ、残念でした♪
鈴菜
恋愛
あらゆる傷と病を癒やし、呪いを祓う能力を持つリュミエラは聖女として崇められ、来年の春には第一王子と結婚する筈だった。
「偽聖女リュミエラ、お前を処刑する!」
だが、そんな未来は突然崩壊する。王子が真実の愛に目覚め、リュミエラは聖女の力を失い、代わりに妹が真の聖女として現れたのだ。
濡れ衣を着せられ、あれよあれよと処刑台に立たされたリュミエラは絶対絶命かに思われたが…
「残念でした♪処刑なんてされてあげません。」
断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった
Blue
恋愛
王立学園で行われる学園舞踏会。そこで意気揚々と舞台に上がり、この国の王子が声を張り上げた。
「私はここで宣言する!アリアンナ・ヴォルテーラ公爵令嬢との婚約を、この場を持って破棄する!!」
シンと静まる会場。しかし次の瞬間、予期せぬ反応が返ってきた。
アリアンナの周辺の目線で話しは進みます。
学園は悪役令嬢に乗っ取られた!
こもろう
恋愛
王立魔法学園。その学園祭の初日の開会式で、事件は起こった。
第一王子アレクシスとその側近たち、そして彼らにエスコートされた男爵令嬢が壇上に立ち、高々とアレクシス王子と侯爵令嬢ユーフェミアの婚約を破棄すると告げたのだ。ユーフェミアを断罪しはじめる彼ら。しかしユーフェミアの方が上手だった?
悪役にされた令嬢が、王子たちにひたすらざまあ返しをするイベントが、今始まる。
登場人物に真っ当な人間はなし。ご都合主義展開。
【完結】土壇場で交代は困ります [おまけ1話更新]
himahima
恋愛
婚約破棄⁈いじめ?いやいや、お子様の茶番劇に付き合ってる暇ないから!まだ決算終わってないし、部下腹ペコで待ってるから会社に戻して〜〜
経理一筋25年、社畜女課長が悪役令嬢と入れ替わり⁈ 主人公は口が悪いです(笑)
はじめての投稿です♪本編13話完結、その後おまけ2話の予定です。
【完結】シロツメ草の花冠
彩華(あやはな)
恋愛
夏休みを開けにあったミリアは別人となって「聖女」の隣に立っていた・・・。
彼女の身に何があったのか・・・。
*ミリア視点は最初のみ、主に聖女サシャ、婚約者アルト視点侍女マヤ視点で書かれています。
後半・・・切ない・・・。タオルまたはティッシュをご用意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる