僕の王子様

くるむ

文字の大きさ
26 / 62
第三章

"礼人さん"という人

しおりを挟む
帰り道を礼人さんと歩きながら、僕はさっきの言葉が気になっていた。
先輩達みんなが知っていることだから、敢えて隠しているという事でも無さそうだけど……。
だからと言って僕が聞いてしまっていいのかどうか、判断が付かなかった。

「歩」
「はい」

僕の名前を呼んだ礼人さんが、立ち止まって僕を見た。

「さっきの……、気になるか?」

静かに僕を見る礼人さんに、ちょっとドキッとした。

もしかしたら、僕にはまだ足を踏み入れては欲しくないと思っているかもしれない。
だけど……。

「すみません。……気になります。でも……」
「気にならないと困るよな」

「……、え?」

想像すら出来ない言葉を耳にして、僕はポカンと礼人さんを見上げた。

「だってそうだろ? 好きになった奴のことは、ふつう誰だって気になるものだ」
「……あ。はい、そうですよね!」

ホッとして思わず勢いづけて返事をして、結局礼人さんに笑われてしまった。

でもそれからは礼人さんも僕も、変に入っていた肩の力を抜くことが出来て、礼人さんは僕に家庭の事情を話してくれた。


「……じゃあ今のお母さんは、お父さんの再婚相手なんですか」

「ああ。……俺ってこんなんだし、普段の言動からは想像つかないかもしれないんだけど、結構人見知りで神経質なんだよな。……あの人……、母さんは優しくていい人だし、父さんの再婚相手として認めることは出来ていても、なかなか"家族"として打ち解けるまではいかなくて苦労してる」

ちょっぴり自嘲気味に話す礼人さんに、僕は思わず手を伸ばして礼人さんの掌をギュッと握りしめた。
驚いて、礼人さんが僕を見た。


「……礼人さんはやっぱり優しいですね」
「え?」

礼人さんは目を丸くした。心底驚いた表情で。

「だって、そうやって新しいお母さんに真剣に向き合うことが出来るなんて……。どうでもいいと思っていたらそんな風に考えたりしないと思うんです。神経質とかそういうんじゃなくて、きっとそれは礼人さんが優しいからなんだって、僕は思います」

「歩……」

驚いた表情で僕を見ていた礼人さんが、少しうれしそうな顔をして下を向いた。


「やっぱり、俺のセンサーは正しかったな」

「え?」

「言ったろ? 人を見る目があるって。俺、結構自分と気の合うやつを見つけるのは得意なんだ。……再会できてよかった。ここに来てくれてありがとうな」

「礼人さん……。僕、頑張ってここ受験してよかったです」
「そうだな」

本当に、あの時諦めなくてよかった。


もしもここを受験していなければ、僕は今こうしてここにいることは無かったんだ。


そう考えたら、あの時の僕に"よくやった!"と言ってやりたくなった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

フードコートの天使

美浪
BL
西山暁には本気の片思いをして告白をする事も出来ずに音信不通になってしまった相手がいる。 あれから5年。 大手ファストフードチェーン店SSSバーガーに就職した。今は店長でブルーローズショッピングモール店に勤務中。 そんなある日・・・。あの日の君がフードコートに居た。 それは間違いなく俺の大好きで忘れられないジュンだった。 ・・・・・・・・・・・・ 大濠純、食品会社勤務。 5年前に犯した過ちから自ら疎遠にしてしまった片思いの相手。 ずっと忘れない人。アキラさん。 左遷先はブルーローズショッピングモール。そこに彼は居た。 まだ怒っているかもしれない彼に俺は意を決して挨拶をした・・・。 ・・・・・・・・・・・・ 両片思いを2人の視点でそれぞれ展開して行こうと思っています。

刺されて始まる恋もある

神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。

闘乱世界ユルヴィクス -最弱と最強神のまったり世直し旅!?-

mao
BL
 力と才能が絶対的な存在である世界ユルヴィクスに生まれながら、何の力も持たずに生まれた無能者リーヴェ。  無能であるが故に散々な人生を送ってきたリーヴェだったが、ある日、将来を誓い合った婚約者ティラに事故を装い殺されかけてしまう。崖下に落ちたところを不思議な男に拾われたが、その男は「神」を名乗るちょっとヤバそうな男で……?  天才、秀才、凡人、そして無能。  強者が弱者を力でねじ伏せ支配するユルヴィクス。周りをチート化させつつ、世界の在り方を変えるための世直し旅が、今始まる……!?  ※一応はバディモノですがBL寄りなので苦手な方はご注意ください。果たして愛は芽生えるのか。   のんびりまったり更新です。カクヨム、なろうでも連載してます。

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

罰ゲームって楽しいね♪

あああ
BL
「好きだ…付き合ってくれ。」 おれ七海 直也(ななみ なおや)は 告白された。 クールでかっこいいと言われている 鈴木 海(すずき かい)に、告白、 さ、れ、た。さ、れ、た!のだ。 なのにブスッと不機嫌な顔をしておれの 告白の答えを待つ…。 おれは、わかっていた────これは 罰ゲームだ。 きっと罰ゲームで『男に告白しろ』 とでも言われたのだろう…。 いいよ、なら──楽しんでやろう!! てめぇの嫌そうなゴミを見ている顔が こっちは好みなんだよ!どーだ、キモイだろ! ひょんなことで海とつき合ったおれ…。 だが、それが…とんでもないことになる。 ────あぁ、罰ゲームって楽しいね♪ この作品はpixivにも記載されています。

伯爵令息アルロの魔法学園生活

あさざきゆずき
BL
ハーフエルフのアルロは、人間とエルフの両方から嫌われている。だから、アルロは魔法学園へ入学しても孤独だった。そんなとき、口は悪いけれど妙に優しい優等生が現れた。

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

君さえ笑ってくれれば最高

大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。 (クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け) 異世界BLです。

処理中です...