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第三章
"礼人さん"という人
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帰り道を礼人さんと歩きながら、僕はさっきの言葉が気になっていた。
先輩達みんなが知っていることだから、敢えて隠しているという事でも無さそうだけど……。
だからと言って僕が聞いてしまっていいのかどうか、判断が付かなかった。
「歩」
「はい」
僕の名前を呼んだ礼人さんが、立ち止まって僕を見た。
「さっきの……、気になるか?」
静かに僕を見る礼人さんに、ちょっとドキッとした。
もしかしたら、僕にはまだ足を踏み入れては欲しくないと思っているかもしれない。
だけど……。
「すみません。……気になります。でも……」
「気にならないと困るよな」
「……、え?」
想像すら出来ない言葉を耳にして、僕はポカンと礼人さんを見上げた。
「だってそうだろ? 好きになった奴のことは、ふつう誰だって気になるものだ」
「……あ。はい、そうですよね!」
ホッとして思わず勢いづけて返事をして、結局礼人さんに笑われてしまった。
でもそれからは礼人さんも僕も、変に入っていた肩の力を抜くことが出来て、礼人さんは僕に家庭の事情を話してくれた。
「……じゃあ今のお母さんは、お父さんの再婚相手なんですか」
「ああ。……俺ってこんなんだし、普段の言動からは想像つかないかもしれないんだけど、結構人見知りで神経質なんだよな。……あの人……、母さんは優しくていい人だし、父さんの再婚相手として認めることは出来ていても、なかなか"家族"として打ち解けるまではいかなくて苦労してる」
ちょっぴり自嘲気味に話す礼人さんに、僕は思わず手を伸ばして礼人さんの掌をギュッと握りしめた。
驚いて、礼人さんが僕を見た。
「……礼人さんはやっぱり優しいですね」
「え?」
礼人さんは目を丸くした。心底驚いた表情で。
「だって、そうやって新しいお母さんに真剣に向き合うことが出来るなんて……。どうでもいいと思っていたらそんな風に考えたりしないと思うんです。神経質とかそういうんじゃなくて、きっとそれは礼人さんが優しいからなんだって、僕は思います」
「歩……」
驚いた表情で僕を見ていた礼人さんが、少しうれしそうな顔をして下を向いた。
「やっぱり、俺のセンサーは正しかったな」
「え?」
「言ったろ? 人を見る目があるって。俺、結構自分と気の合うやつを見つけるのは得意なんだ。……再会できてよかった。ここに来てくれてありがとうな」
「礼人さん……。僕、頑張ってここ受験してよかったです」
「そうだな」
本当に、あの時諦めなくてよかった。
もしもここを受験していなければ、僕は今こうしてここにいることは無かったんだ。
そう考えたら、あの時の僕に"よくやった!"と言ってやりたくなった。
先輩達みんなが知っていることだから、敢えて隠しているという事でも無さそうだけど……。
だからと言って僕が聞いてしまっていいのかどうか、判断が付かなかった。
「歩」
「はい」
僕の名前を呼んだ礼人さんが、立ち止まって僕を見た。
「さっきの……、気になるか?」
静かに僕を見る礼人さんに、ちょっとドキッとした。
もしかしたら、僕にはまだ足を踏み入れては欲しくないと思っているかもしれない。
だけど……。
「すみません。……気になります。でも……」
「気にならないと困るよな」
「……、え?」
想像すら出来ない言葉を耳にして、僕はポカンと礼人さんを見上げた。
「だってそうだろ? 好きになった奴のことは、ふつう誰だって気になるものだ」
「……あ。はい、そうですよね!」
ホッとして思わず勢いづけて返事をして、結局礼人さんに笑われてしまった。
でもそれからは礼人さんも僕も、変に入っていた肩の力を抜くことが出来て、礼人さんは僕に家庭の事情を話してくれた。
「……じゃあ今のお母さんは、お父さんの再婚相手なんですか」
「ああ。……俺ってこんなんだし、普段の言動からは想像つかないかもしれないんだけど、結構人見知りで神経質なんだよな。……あの人……、母さんは優しくていい人だし、父さんの再婚相手として認めることは出来ていても、なかなか"家族"として打ち解けるまではいかなくて苦労してる」
ちょっぴり自嘲気味に話す礼人さんに、僕は思わず手を伸ばして礼人さんの掌をギュッと握りしめた。
驚いて、礼人さんが僕を見た。
「……礼人さんはやっぱり優しいですね」
「え?」
礼人さんは目を丸くした。心底驚いた表情で。
「だって、そうやって新しいお母さんに真剣に向き合うことが出来るなんて……。どうでもいいと思っていたらそんな風に考えたりしないと思うんです。神経質とかそういうんじゃなくて、きっとそれは礼人さんが優しいからなんだって、僕は思います」
「歩……」
驚いた表情で僕を見ていた礼人さんが、少しうれしそうな顔をして下を向いた。
「やっぱり、俺のセンサーは正しかったな」
「え?」
「言ったろ? 人を見る目があるって。俺、結構自分と気の合うやつを見つけるのは得意なんだ。……再会できてよかった。ここに来てくれてありがとうな」
「礼人さん……。僕、頑張ってここ受験してよかったです」
「そうだな」
本当に、あの時諦めなくてよかった。
もしもここを受験していなければ、僕は今こうしてここにいることは無かったんだ。
そう考えたら、あの時の僕に"よくやった!"と言ってやりたくなった。
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