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第三章
"礼人さん"という人 2
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僕の家がだんだん近くなってきた。
楽しい2人っきりの時間もあとわずかだ。
「そういえば、そろそろ新入生歓迎スポーツ大会があるよな」
「あー、そうですね……」
そうだった。
運動音痴だから、なるべく考えないようにしてたんだけど……。
「どうした? テンション低いな」
「……あはは。僕、運動苦手で」
「そうなのか? バレーとかも?」
「……う、はい」
「そうかぁ。だけど、出場しないと仮装担当押し付けられちゃうぞ」
「……うっ。やっぱ、そうですよね。……でも、なんなんですか、この仮装担当って」
「んー……、確か俺が入る2年くらい前の先輩たちの時代に、人数が余った人たちが悪乗りで始めたことが切っ掛けらしいぞ。女装したり男装したり、コスプレしたり……」
「……女装……。なんかヤだな。そろそろどれに出るか決めると思うんですけど、礼人さんはやっぱサッカーですか?」
「いや、多分バレーかな」
「そうなんですか? 意外です」
「そうか?」
「はい。……何となくですけど、礼人さんは走り回ったりして目立つ方があってる気がします。あ、もちろんバレーが地味って言ってるわけじゃないですけど」
だってこんなにかっこいいんだもん。
動き回って髪靡かせて……、絶対絵になるよ!
「……歩は俺に目立って欲しいか?」
「え?」
急に真顔で聞かれて、戸惑った。
戸惑って、だけど礼人さんがジッと僕を見ているので、僕もちょっと真剣に考えてみた。
さっきのは勢いとノリで喋ったようなもので、僕の本音とは少しずれているような気もするから。
もしも、もしも本当に礼人さんが目立つことをしたとしたら、きっと礼人さんのファンの子たちが大喜びしてさらに礼人さんを追いかける人が増えたりしてライバルが半端ないことになっちゃうだろう。
ただでさえ、なんのとりえもない僕は自信だってあるわけじゃないのに。
「やっぱ、目立ってほしくないです……。かっこいい礼人さんを見たい気持ちはありますけど、後々のことを考えると面白くないです。心……狭いですよね」
「……ふっ。いいや。目立ってかっこいいとこ見せてくれって言われたらどうしようかと思ったよ。歩のリクエストなら応えてやりたいって思うけど、俺もそういうのは好きじゃないからな」
「…………」
目立つのが嫌い……?
こんなに派手な外見なのに?
「信じられないって顔してるな。髪をこの色にしてるのは単に好きだからだ。……まあ、中学の時に色々あってムシャクシャしてたから、卒業と同時に気分転換でもしてやろうと思ったのが切っ掛けではあるんだけどな」
「いろいろ……ですか?」
「そ。色々。部活で先輩にいちゃもん付けられたり、マネージャーの争いのタネになってたり……、同級生にやっかまれたりしたこともあったな」
「…………」
「変わらないんだよ。どんな格好していても。一度シロにも余計な注目を浴びないためにも、髪を黒に戻した方がいいんじゃないかって言われたことはあるけど。……俺、中学の時は地毛だったんだぜ」
そう淡々と話す礼人さんの表情は、いろんなことを諦めてしまっているような表情だ。
傍から見ると派手な風貌でかっこよすぎるから近寄りがたく感じるし、下手すると嫌味かと思うくらいのオーラを醸し出してる人なのに。
綺麗でかっこよくて、何でも出来そうなスーパーマンのような人だと勝手に思っていたけど……。
……いや、出来る人なのかもしれないけど……。
「……僕のわがまま言ってみてもいいですか?」
「なんだ?」
「今度、2人っきりの時か、そうじゃ無ければ同好会の仲間内の時だけかに……、本当の、余計なことを意識しない好き勝手に振る舞う礼人さんを見せてください。……他の人たちにこれ以上かっこいい礼人さんは見せたくないけど、僕は見たいから」
僕の本音の本音。
どう考えても独占欲丸出しの、わがままな本音だけど。
「"余計なことを意識しない"か……。それ、いいな」
礼人さんは柔らかく微笑んでくれた。
楽しい2人っきりの時間もあとわずかだ。
「そういえば、そろそろ新入生歓迎スポーツ大会があるよな」
「あー、そうですね……」
そうだった。
運動音痴だから、なるべく考えないようにしてたんだけど……。
「どうした? テンション低いな」
「……あはは。僕、運動苦手で」
「そうなのか? バレーとかも?」
「……う、はい」
「そうかぁ。だけど、出場しないと仮装担当押し付けられちゃうぞ」
「……うっ。やっぱ、そうですよね。……でも、なんなんですか、この仮装担当って」
「んー……、確か俺が入る2年くらい前の先輩たちの時代に、人数が余った人たちが悪乗りで始めたことが切っ掛けらしいぞ。女装したり男装したり、コスプレしたり……」
「……女装……。なんかヤだな。そろそろどれに出るか決めると思うんですけど、礼人さんはやっぱサッカーですか?」
「いや、多分バレーかな」
「そうなんですか? 意外です」
「そうか?」
「はい。……何となくですけど、礼人さんは走り回ったりして目立つ方があってる気がします。あ、もちろんバレーが地味って言ってるわけじゃないですけど」
だってこんなにかっこいいんだもん。
動き回って髪靡かせて……、絶対絵になるよ!
「……歩は俺に目立って欲しいか?」
「え?」
急に真顔で聞かれて、戸惑った。
戸惑って、だけど礼人さんがジッと僕を見ているので、僕もちょっと真剣に考えてみた。
さっきのは勢いとノリで喋ったようなもので、僕の本音とは少しずれているような気もするから。
もしも、もしも本当に礼人さんが目立つことをしたとしたら、きっと礼人さんのファンの子たちが大喜びしてさらに礼人さんを追いかける人が増えたりしてライバルが半端ないことになっちゃうだろう。
ただでさえ、なんのとりえもない僕は自信だってあるわけじゃないのに。
「やっぱ、目立ってほしくないです……。かっこいい礼人さんを見たい気持ちはありますけど、後々のことを考えると面白くないです。心……狭いですよね」
「……ふっ。いいや。目立ってかっこいいとこ見せてくれって言われたらどうしようかと思ったよ。歩のリクエストなら応えてやりたいって思うけど、俺もそういうのは好きじゃないからな」
「…………」
目立つのが嫌い……?
こんなに派手な外見なのに?
「信じられないって顔してるな。髪をこの色にしてるのは単に好きだからだ。……まあ、中学の時に色々あってムシャクシャしてたから、卒業と同時に気分転換でもしてやろうと思ったのが切っ掛けではあるんだけどな」
「いろいろ……ですか?」
「そ。色々。部活で先輩にいちゃもん付けられたり、マネージャーの争いのタネになってたり……、同級生にやっかまれたりしたこともあったな」
「…………」
「変わらないんだよ。どんな格好していても。一度シロにも余計な注目を浴びないためにも、髪を黒に戻した方がいいんじゃないかって言われたことはあるけど。……俺、中学の時は地毛だったんだぜ」
そう淡々と話す礼人さんの表情は、いろんなことを諦めてしまっているような表情だ。
傍から見ると派手な風貌でかっこよすぎるから近寄りがたく感じるし、下手すると嫌味かと思うくらいのオーラを醸し出してる人なのに。
綺麗でかっこよくて、何でも出来そうなスーパーマンのような人だと勝手に思っていたけど……。
……いや、出来る人なのかもしれないけど……。
「……僕のわがまま言ってみてもいいですか?」
「なんだ?」
「今度、2人っきりの時か、そうじゃ無ければ同好会の仲間内の時だけかに……、本当の、余計なことを意識しない好き勝手に振る舞う礼人さんを見せてください。……他の人たちにこれ以上かっこいい礼人さんは見せたくないけど、僕は見たいから」
僕の本音の本音。
どう考えても独占欲丸出しの、わがままな本音だけど。
「"余計なことを意識しない"か……。それ、いいな」
礼人さんは柔らかく微笑んでくれた。
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