僕の王子様

くるむ

文字の大きさ
27 / 62
第三章

"礼人さん"という人 2

しおりを挟む
僕の家がだんだん近くなってきた。
楽しい2人っきりの時間もあとわずかだ。

「そういえば、そろそろ新入生歓迎スポーツ大会があるよな」
「あー、そうですね……」

そうだった。
運動音痴だから、なるべく考えないようにしてたんだけど……。

「どうした? テンション低いな」
「……あはは。僕、運動苦手で」
「そうなのか? バレーとかも?」
「……う、はい」

「そうかぁ。だけど、出場しないと仮装担当押し付けられちゃうぞ」
「……うっ。やっぱ、そうですよね。……でも、なんなんですか、この仮装担当って」

「んー……、確か俺が入る2年くらい前の先輩たちの時代に、人数が余った人たちが悪乗りで始めたことが切っ掛けらしいぞ。女装したり男装したり、コスプレしたり……」

「……女装……。なんかヤだな。そろそろどれに出るか決めると思うんですけど、礼人さんはやっぱサッカーですか?」
「いや、多分バレーかな」
「そうなんですか? 意外です」
「そうか?」
「はい。……何となくですけど、礼人さんは走り回ったりして目立つ方があってる気がします。あ、もちろんバレーが地味って言ってるわけじゃないですけど」

だってこんなにかっこいいんだもん。
動き回って髪靡かせて……、絶対絵になるよ!

「……歩は俺に目立って欲しいか?」
「え?」

急に真顔で聞かれて、戸惑った。

戸惑って、だけど礼人さんがジッと僕を見ているので、僕もちょっと真剣に考えてみた。
さっきのは勢いとノリで喋ったようなもので、僕の本音とは少しずれているような気もするから。


もしも、もしも本当に礼人さんが目立つことをしたとしたら、きっと礼人さんのファンの子たちが大喜びしてさらに礼人さんを追いかける人が増えたりしてライバルが半端ないことになっちゃうだろう。

ただでさえ、なんのとりえもない僕は自信だってあるわけじゃないのに。


「やっぱ、目立ってほしくないです……。かっこいい礼人さんを見たい気持ちはありますけど、後々のことを考えると面白くないです。心……狭いですよね」

「……ふっ。いいや。目立ってかっこいいとこ見せてくれって言われたらどうしようかと思ったよ。歩のリクエストなら応えてやりたいって思うけど、俺もそういうのは好きじゃないからな」

「…………」

目立つのが嫌い……?
こんなに派手な外見なのに?

「信じられないって顔してるな。髪をこの色にしてるのは単に好きだからだ。……まあ、中学の時に色々あってムシャクシャしてたから、卒業と同時に気分転換でもしてやろうと思ったのが切っ掛けではあるんだけどな」

「いろいろ……ですか?」

「そ。色々。部活で先輩にいちゃもん付けられたり、マネージャーの争いのタネになってたり……、同級生にやっかまれたりしたこともあったな」

「…………」
「変わらないんだよ。どんな格好していても。一度シロにも余計な注目を浴びないためにも、髪を黒に戻した方がいいんじゃないかって言われたことはあるけど。……俺、中学の時は地毛だったんだぜ」

そう淡々と話す礼人さんの表情は、いろんなことを諦めてしまっているような表情だ。
傍から見ると派手な風貌でかっこよすぎるから近寄りがたく感じるし、下手すると嫌味かと思うくらいのオーラを醸し出してる人なのに。


綺麗でかっこよくて、何でも出来そうなスーパーマンのような人だと勝手に思っていたけど……。
……いや、出来る人なのかもしれないけど……。


「……僕のわがまま言ってみてもいいですか?」
「なんだ?」

「今度、2人っきりの時か、そうじゃ無ければ同好会の仲間内の時だけかに……、本当の、余計なことを意識しない好き勝手に振る舞う礼人さんを見せてください。……他の人たちにこれ以上かっこいい礼人さんは見せたくないけど、僕は見たいから」

僕の本音の本音。
どう考えても独占欲丸出しの、わがままな本音だけど。


「"余計なことを意識しない"か……。それ、いいな」


礼人さんは柔らかく微笑んでくれた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない

豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。 とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ! 神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。 そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。 □チャラ王子攻め □天然おとぼけ受け □ほのぼのスクールBL タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。 ◆…葛西視点 ◇…てっちゃん視点 pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。 所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

フードコートの天使

美浪
BL
西山暁には本気の片思いをして告白をする事も出来ずに音信不通になってしまった相手がいる。 あれから5年。 大手ファストフードチェーン店SSSバーガーに就職した。今は店長でブルーローズショッピングモール店に勤務中。 そんなある日・・・。あの日の君がフードコートに居た。 それは間違いなく俺の大好きで忘れられないジュンだった。 ・・・・・・・・・・・・ 大濠純、食品会社勤務。 5年前に犯した過ちから自ら疎遠にしてしまった片思いの相手。 ずっと忘れない人。アキラさん。 左遷先はブルーローズショッピングモール。そこに彼は居た。 まだ怒っているかもしれない彼に俺は意を決して挨拶をした・・・。 ・・・・・・・・・・・・ 両片思いを2人の視点でそれぞれ展開して行こうと思っています。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話

日向汐
BL
「好きです」 「…手離せよ」 「いやだ、」 じっと見つめてくる眼力に気圧される。 ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26) 閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、 一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨ 短期でサクッと読める完結作です♡ ぜひぜひ ゆるりとお楽しみください☻* ・───────────・ 🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧 ❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21 ・───────────・ 応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪) なにとぞ、よしなに♡ ・───────────・

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

刺されて始まる恋もある

神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

【完結】期限付きの恋人契約〜あと一年で終わるはずだったのに〜

なの
BL
「俺と恋人になってくれ。期限は一年」 男子校に通う高校二年の白石悠真は、地味で真面目なクラスメイト。 ある日、学年一の人気者・神谷蓮に、いきなりそんな宣言をされる。 冗談だと思っていたのに、毎日放課後を一緒に過ごし、弁当を交換し、祭りにも行くうちに――蓮は悠真の中で、ただのクラスメイトじゃなくなっていた。 しかし、期限の日が近づく頃、蓮の笑顔の裏に隠された秘密が明らかになる。 「俺、後悔しないようにしてんだ」 その言葉の意味を知ったとき、悠真は――。 笑い合った日々も、すれ違った夜も、全部まとめて好きだ。 一年だけのはずだった契約は、運命を変える恋になる。 青春BL小説カップにエントリーしてます。応援よろしくお願いします。 本文は完結済みですが、番外編も投稿しますので、よければお読みください。

処理中です...