五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ

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第206話:神狼の願いと、夫の誓い

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 凛とクラウディアの間に、かつて以上の友情が結ばれ、町の教育体制が新たな段階へと進み始めた頃。心の影が完全に晴れたアキオは、改めて妻たち一人一人と向き合う時間を、何よりも大切にしていた。その夜は、第二夫人であるキナとの時間だった。

 アキオがキナの部屋を訪れると、彼女はいつもの快活さとは少し違う、どこか物思いに耽るような表情で、窓の外の三つの月を見上げていた。
「だんな、おかえり」
「ああ、ただいま。どうしたんだ、キナ。何か考え事か?」
 アキオが隣に座ると、キナは彼の肩にこてんと頭を預けた。
「だんなが元気になったのは、本当に嬉しいんだ。でもよ、なんだか、あの夜、あたしにだけ泣きながら弱いところを見せてくれただんなも…あたしは、好きだったかもしれねえなって…」
 その言葉は、彼女なりの独占欲であり、アキオの全てを受け止めたいという、深い愛情の表れだった。アキオは、そんな彼女のいじらしさに、胸が温かくなるのを感じた。

「そういえば、だんな。シルヴィア姉ちゃんたちが作ってくれた、あの薬のことだけどよ」
 キナは、話題を変えるように体を起こした。「生命樹の活力剤」のことだ。
「あの薬を飲み始めてから、身体の奥から力が湧いてきて、疲れ知らずなんだ! 昔よりずっと身体も軽いし、狩りも上手くいく。これなら、本当に…」
 彼女はそこで一度言葉を切り、アキオの瞳を真っ直ぐに見つめた。その瞳には、いつもの快活さとは違う、真剣で、そして切実な光が宿っていた。
「なあ、だんな。あたし、この薬を飲み続けたら、本当に、シルヴィア姉ちゃんやアウロラ姉ちゃんみたいに、ずっと長く、だんなや子供たちと一緒にいられるようになるのか…?」

 アキオは、その純粋な愛情と願いに胸を打たれた。彼は、キナの手を固く握り、真摯に答えた。
「キナ…寿命がどうなるかは、まだ分からない。神様の領域かもしれないからな。だが、俺は、君が一日でも長く、笑顔で俺の隣にいてくれるように、この町の全ての知恵と力を使って、研究を続けると誓う。君は、俺の大切な、かけがえのない妻だからな」

 夫からの、力強い誓いの言葉。キナの瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。しかし、それはすぐに、太陽のような満面の笑みに変わった。
「…そっか! だんながそう言ってくれるなら、もう何も心配いらねえや! あたしは、だんなを信じるぜ!」
 未来への確かな希望を得て、キナの心は完全に満たされた。その夜の二人の交わりは、これまでの野生的な情熱だけでなく、共に長い未来を歩むことを誓い合った、深く、そしてどこまでも愛情に満ちたものとなった。神狼の血を引く妻は、夫の誓いを胸に、これ以上ないほどの幸福感の中で、その熱い身体を夫に預けるのだった。
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