五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ

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第292話:王女への贈り物、そして未来の設計図

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 王家との会談の日が、刻一刻と近づいていた。アキオは、そのプレッシャーと、日々増大する聖域の責務の中で、改めて、妻たち一人一人との絆を、深く、そして確かめることの重要性を感じていた。彼女たちこそが、彼の力の源泉であり、そして、この聖域の魂そのものだからだ。
 キナとの、野性的な魂の交歓を終えた翌日。アキオは、その一日を、エルドリアの王女にして、彼の第三夫人である、セレスティーナと共に過ごすことに決めた。

 彼女は、王女としての気品と、母としての慈愛、そして、国を背負う者としての、冷静で、時にドライとさえ思えるほどの、現実的な視点を併せ持つ、複雑で、そして魅力的な女性だ。アキオは、そんな彼女に、どんな一日を贈れば、その心の奥底に、本当に触れることができるのか、ずっと考えていた。

 その日の午前、アキオは、セレスティーナを、新・中央館に併設された、町の「学び舎」へと誘った。そこでは、クラウディアが作成したカリキュラムに基づき、町の全ての子供たちが、身分に関係なく、生き生きと学んでいた。
「セレスティーナ。君に、俺たちの町の、未来の姿を見てもらいたいんだ」
 アキオは、彼女を案内しながら、この聖域の、新しい教育システムについて、詳しく説明を始めた。
 読み書き算盤といった基礎的な学問だけでなく、それぞれの子供の興味や才能に合わせ、農業、木工、薬草学、そして、凛やクラウディアが直接教える、初歩の魔術理論まで、多岐にわたる実践的な技術を、等しく学べる機会が与えられていること。そして、何よりも、知識や技術以上に、助け合い、共に生きるという、共同体の精神を育むことを、最も大切な理念としていること。

 セレスティーナは、その話を聞きながら、自らの故国エルドリアの、硬直した身分制度と、貴族だけが享受してきた教育の現実を思い、静かに、しかし真剣に、アキオの言葉に耳を傾けていた。彼女の、その美しい横顔には、感嘆と、そして、自国の未来への、深い思索の色が浮かんでいた。
「…素晴らしい、システムですわ、アキオ様。いえ、システム、という言葉では、軽すぎますわね。これは、国の、魂の形そのものですわ」

 その日の午後。アキオは、セレスティーナを、町の設計司令室へと招き入れた。そこは、凛とクラウディアが、聖域の未来を描き出す、町の頭脳とも呼ぶべき場所だ。
 アキオは、セレスティーナの前に、一枚の、巨大な羊皮紙を広げた。
「これは…?」
 そこに描かれていたのは、壮大で、美しく、そしてどこまでも機能的な、一つの巨大な建物の、完璧な設計図だった。三つの大きな校舎が、中央の図書館と講堂を囲むように配置され、その周りには、広大な運動場と、実践的な農業を学ぶための、豊かな畑が広がっている。
「『エルドリア王立学院』の、設計図だ。君と、クリストフ王子が創ろうとしている、新しい国の、未来を担う子供たちのための、最高の学び舎だ」

 アキオは、この数日間、凛とクラウディアの助けを借りながら、セレスティーナから聞いたエルドリアの文化や建築様式と、アキオの町の教育理念を完全に融合させた、最高の教育施設の設計図を、秘密裏に完成させていたのだ。
「君の国の未来を、俺も、一緒に創りたい。そう思ってな」

 セレスティーナは、その、あまりにも壮大で、そして愛情のこもった贈り物に、言葉を失った。
 これは、どんな宝石やドレスよりも、彼女の魂を、そして、彼女が人生を賭けて成し遂げようとしている、その全てを、深く、そして完璧に理解してくれている、という、何よりの証だった。それは、彼女が、心のどこかで、アキオに最も求めていた、「ロマンティック」の形だったのかもしれない。
 彼女の、常に冷静で、ドライだったはずの瞳から、大粒の涙が、その設計図の上に、ぽろぽろとこぼれ落ちた。
「アキオ様…これは…国、そのものですわ…。わたくしに、未来そのものを、くださるというのですか…」
 彼女は、アキオの胸に、その顔をうずめ、子供のように、声を上げて泣いた。

 その夜、セレスティーナの私室。
 二人の営みは、これまでのどの夜よりも、深く、そして穏やかなものだった。それは、ただの男女の交わりではない。国の未来を共に創造するという、絶対的な誓いを交わした、「王」と「女王」の、魂の結合であった。
 セレスティーナは、アキオの腕の中で、初めて、王女としての重責も、国の未来への不安も、全てを忘れ、ただ一人の、愛される女性としての、安らぎと、幸福に、その身を委ねる。
 アキオもまた、彼女の、その気高く、そしてどこまでも深い愛情を、その全身全霊で受け止める。彼は、この誇り高き王女が、これから先、どんな困難に直面しようとも、自らが、その隣で、永遠に支え続けていくことを、固く、固く誓うのだった。
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