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第336話:奇跡の、その、後で
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神の御業としか思えない聖域創造の儀式。
その圧倒的な光景を目の当たりにした国王や貴族、そして才媛たちは、しばらく言葉を失っていた。乾いた風が吹き抜けるだけだった不毛の荒れ地は、今や生命の息吹に満ちた緑の楽園へと完全に生まれ変わっている。
やがて驚愕から覚めた国王がアキオの元へと歩み寄り、その声には隠しきれない興奮とそして真剣な響きがあった。
「アキオ殿…。貴殿は我々に神の恵みそのものを与えてくださった。だが正直に言おう。我々はこの聖なる土地をどう扱えばよいのか全く分からん。この奇跡を正しく民の幸せに繋げるにはどうすればよいのだろうか?」
その国王の切実な問い。それこそがアキオが待っていた言葉だった。
「ええ、もちろんお任せください」
アキオはにっこりと微笑んだ。
「聖域は作っただけではただの土地です。それを活かすための『人』もセットで贈り物をさせていただきます」
アキオは「聖域開発指導チーム」を王都へ派遣することを提案した。
「まず先日お会いした凛のご友人方。皆素晴らしい才媛だが母として辛い経験をされたと聞きました。この聖地でならもう悲しい思いをさせることはありません。我が聖域の産婆であるエマをリーダーとして医療チームを派遣し、出産と育児の技術の全てを王都の産婆たちに伝授させましょう」
そのあまりにも心のこもった申し出に国王だけでなく、後ろで聞いていた才媛たちの目も潤む。
「さらにこの祝福された土地に最適な農法を教える農業チーム。そしてこの聖地を中心とした新しい区画を整備するための建設チームもお貸しします」
アキオはそこで一度言葉を切り、そして国王に逆提案をした。
「ですが陛下。一方的な支援では真の同盟とは言えません。その代わりと言ってはなんですが、王都の優秀な若者たちを今度は俺たちの聖域へ留学させてはいただけませんか? 俺たちも王都の進んだ学問を学びたい。互いに教え合い学び合う、それこそが真の同盟でしょう」
その言葉を聞いて、これまで聖域創造の奇跡をただ静かにそして鋭く観察していたミランダ姫がすっと前に進み出た。
「お兄様。いえ、国王陛下」
彼女が初めて自らの意志で口を開いた。その場にいた全員の視線が彼女に集まる。
「もしその人材交流のお話が真であれば、その最初の留学生としてこのわたくしを聖域へ派遣していただくことはかないませんでしょうか」
「なんと、ミランダ。お前がか?」
国王が驚きの声を上げる。だがミランダは動じない。
「ですがわたくしの目的はただ学ぶことだけではございません」
彼女はアキオを真っ直ぐに見つめ、そして宣言した。
「まずアキオ様の聖域にてこの奇跡の本質とその運用方法を学ばせていただきたい。そしてその後、わたくしはエルドリア王国へと向かいたいと思います」
その言葉に国王もアキオも息をのんだ。エルドリア。それは国王が彼女の縁談相手として考えている国の名前だったからだ。
「エルドリアにも『小さな聖域』があると伺いました。この奇跡が本当に再現可能な普遍的なものであるのか。そして違う土地で育った聖域がどのように機能するのか。それをこの目で確かめ、そしてわたくしの知識がかの国の聖域の発展の一助となるか試してみたいのです。それこそが新しい盟約を結んだ我が国がエルドリアに示すべき最初の誠意ではありませんこと?」
そのあまりにも戦略的でそして高潔な申し出。
国王は書庫にこもってばかりだと思っていた自分の妹が、いつの間にか自国の未来と同盟国との関係までを見据える王族としての器を持っていたことに気づき感嘆した。
アキオもまた彼女のその探究心と行動力に深く感銘を受け、その申し出を心から歓迎した。
「…素晴らしいお考えですな、ミランダ殿下。ええ、喜んでお受けいたします。聖域は貴女を歓迎します」
こうして【ミランダ姫、聖域にて研修後、エルドリアへ公式派遣】という壮大なプロジェクトが決定した。
彼女は兄の政略の駒としてではなく、自らの意志でエルドリアへの道を切り拓いたのだ。
その先に待つ若き王との出会いを、彼女はまだ知らない。
アキオたちの周りで、また一つ、新しい物語の歯車が大きく、そして面白く回り始めた。
その圧倒的な光景を目の当たりにした国王や貴族、そして才媛たちは、しばらく言葉を失っていた。乾いた風が吹き抜けるだけだった不毛の荒れ地は、今や生命の息吹に満ちた緑の楽園へと完全に生まれ変わっている。
やがて驚愕から覚めた国王がアキオの元へと歩み寄り、その声には隠しきれない興奮とそして真剣な響きがあった。
「アキオ殿…。貴殿は我々に神の恵みそのものを与えてくださった。だが正直に言おう。我々はこの聖なる土地をどう扱えばよいのか全く分からん。この奇跡を正しく民の幸せに繋げるにはどうすればよいのだろうか?」
その国王の切実な問い。それこそがアキオが待っていた言葉だった。
「ええ、もちろんお任せください」
アキオはにっこりと微笑んだ。
「聖域は作っただけではただの土地です。それを活かすための『人』もセットで贈り物をさせていただきます」
アキオは「聖域開発指導チーム」を王都へ派遣することを提案した。
「まず先日お会いした凛のご友人方。皆素晴らしい才媛だが母として辛い経験をされたと聞きました。この聖地でならもう悲しい思いをさせることはありません。我が聖域の産婆であるエマをリーダーとして医療チームを派遣し、出産と育児の技術の全てを王都の産婆たちに伝授させましょう」
そのあまりにも心のこもった申し出に国王だけでなく、後ろで聞いていた才媛たちの目も潤む。
「さらにこの祝福された土地に最適な農法を教える農業チーム。そしてこの聖地を中心とした新しい区画を整備するための建設チームもお貸しします」
アキオはそこで一度言葉を切り、そして国王に逆提案をした。
「ですが陛下。一方的な支援では真の同盟とは言えません。その代わりと言ってはなんですが、王都の優秀な若者たちを今度は俺たちの聖域へ留学させてはいただけませんか? 俺たちも王都の進んだ学問を学びたい。互いに教え合い学び合う、それこそが真の同盟でしょう」
その言葉を聞いて、これまで聖域創造の奇跡をただ静かにそして鋭く観察していたミランダ姫がすっと前に進み出た。
「お兄様。いえ、国王陛下」
彼女が初めて自らの意志で口を開いた。その場にいた全員の視線が彼女に集まる。
「もしその人材交流のお話が真であれば、その最初の留学生としてこのわたくしを聖域へ派遣していただくことはかないませんでしょうか」
「なんと、ミランダ。お前がか?」
国王が驚きの声を上げる。だがミランダは動じない。
「ですがわたくしの目的はただ学ぶことだけではございません」
彼女はアキオを真っ直ぐに見つめ、そして宣言した。
「まずアキオ様の聖域にてこの奇跡の本質とその運用方法を学ばせていただきたい。そしてその後、わたくしはエルドリア王国へと向かいたいと思います」
その言葉に国王もアキオも息をのんだ。エルドリア。それは国王が彼女の縁談相手として考えている国の名前だったからだ。
「エルドリアにも『小さな聖域』があると伺いました。この奇跡が本当に再現可能な普遍的なものであるのか。そして違う土地で育った聖域がどのように機能するのか。それをこの目で確かめ、そしてわたくしの知識がかの国の聖域の発展の一助となるか試してみたいのです。それこそが新しい盟約を結んだ我が国がエルドリアに示すべき最初の誠意ではありませんこと?」
そのあまりにも戦略的でそして高潔な申し出。
国王は書庫にこもってばかりだと思っていた自分の妹が、いつの間にか自国の未来と同盟国との関係までを見据える王族としての器を持っていたことに気づき感嘆した。
アキオもまた彼女のその探究心と行動力に深く感銘を受け、その申し出を心から歓迎した。
「…素晴らしいお考えですな、ミランダ殿下。ええ、喜んでお受けいたします。聖域は貴女を歓迎します」
こうして【ミランダ姫、聖域にて研修後、エルドリアへ公式派遣】という壮大なプロジェクトが決定した。
彼女は兄の政略の駒としてではなく、自らの意志でエルドリアへの道を切り拓いたのだ。
その先に待つ若き王との出会いを、彼女はまだ知らない。
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