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第三章:まぁだだよ
有栖_3-3
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「それでは、これで失礼します」
「もう少しゆっくりしていけばいいのに。どう? 夕食とかも一緒に」
「いえ、仕事もまだ残っていますので」
京の残念そうな表情に笑顔を返し、有栖は玄関へとむかった。見送りの為に、京もとことことついてくる。夕食の誘いは有り難いが、反保との情報共有があるのでそちらの方が大切だ。
時刻は午後四時過ぎ。桜華学園の授業も終わっているので、部活の調査をしていなければ反保達もユースティティアに戻っている頃合いだ。
「本日はありがとうございました」
「いえいえ。あの人の部下と話せて楽しかったわ。あの人からも、娘からも貴女の話は聞いていたから一度会ってみたかったの」
「なるほど、ヒドい言われようだとテンションが下がるので聞かないでおきますね」
そう返した有栖に京は笑う。
「あの人は褒めていたし、娘は感謝していたわ。有栖さん、あの人のこと宜しくね」
「自分なんかがイチさんの為に出来ることなんて少ないとは思いますが、できる限り迷惑をかけないように頑張ります」
互いに笑顔で言葉を交わし、有栖は一礼して一色家から出て行った。
「あれ? 有栖さん」
有栖が家を出て数歩進んだときだ。背後から聞き覚えのある声が彼女を呼びかけた。
「楓ちゃん、今帰り?」
振り返るとそこには一色の娘――楓がいた。桜華学園の制服を着て、肩にカバンをかけているので、下校中なのだろう。
「うちに来ていたんですか?」
「うん、学生の素行関係でちょっと話を聞きたくてね」
「そうなんだ。そういえば、最近、うちの高校にも警察やらユースの人が出入りしてるけど、同じかな? 何か事件でもあったんですか?」
「いや、そういうのじゃなくて警察もユースティティアも学生の保護の強化期間みたいなやつよ」
さらり、と有栖が嘘をつけるのは京にも同様の話をするため準備をしていたからだ。
「へぇ、品行方正な私には関係ないことだね」
「夜遅くに猫探ししていた前科者が何を言う」
「それは時効ってことで」
親しみのある会話を交わしながらも、有栖は楓の様子を観察していた。
「最近は高本さんのカフェには行ってないの?」
「あー、最近はちょっとドタバタしてて」
「そう。まぁ、寄り道のし過ぎは推奨しないけど、気晴らしぐらいはしときなよ。高本さんも会いたがってるだろうし」
「わかりました」
「じゃあ、自分はこれで」
「さようなら」
そこまで会話を交わすと、有栖は背を向け、楓は帰宅する為に家へと向かう。
ここで楓に直接聞き込みをしなかったのは露骨過ぎる、というのもあるが、それとは別に気になることがあったからだ。それは、先程、京と話した内容の一部分――有栖はユースティティアに戻る道中で、それを思い出す。
「学校の用品が紛失したりすることもあるそうです。最近、娘さんの学校用品を不自然な時期に買い換えたりしませんでしたか?」
「いいえ、無いわね」
その会話の通り、先程見た楓の『カバン』は新品ではなかった。使い込んでいるのは見て解る。だが――
「矛盾するな。彼の発言と」
有栖は右京の言葉を思い出す。
「学校帰りに会うと、薄いですけど、アザや傷。カバンがボロボロだったことが最近ありまして、聞いても誤魔化されて……有栖さん、助けてくれませんか?」
右京は確かにカバンがボロボロだったと言っていた。この矛盾が何を意味するのか……有栖は妙に気になった。
「もう少しゆっくりしていけばいいのに。どう? 夕食とかも一緒に」
「いえ、仕事もまだ残っていますので」
京の残念そうな表情に笑顔を返し、有栖は玄関へとむかった。見送りの為に、京もとことことついてくる。夕食の誘いは有り難いが、反保との情報共有があるのでそちらの方が大切だ。
時刻は午後四時過ぎ。桜華学園の授業も終わっているので、部活の調査をしていなければ反保達もユースティティアに戻っている頃合いだ。
「本日はありがとうございました」
「いえいえ。あの人の部下と話せて楽しかったわ。あの人からも、娘からも貴女の話は聞いていたから一度会ってみたかったの」
「なるほど、ヒドい言われようだとテンションが下がるので聞かないでおきますね」
そう返した有栖に京は笑う。
「あの人は褒めていたし、娘は感謝していたわ。有栖さん、あの人のこと宜しくね」
「自分なんかがイチさんの為に出来ることなんて少ないとは思いますが、できる限り迷惑をかけないように頑張ります」
互いに笑顔で言葉を交わし、有栖は一礼して一色家から出て行った。
「あれ? 有栖さん」
有栖が家を出て数歩進んだときだ。背後から聞き覚えのある声が彼女を呼びかけた。
「楓ちゃん、今帰り?」
振り返るとそこには一色の娘――楓がいた。桜華学園の制服を着て、肩にカバンをかけているので、下校中なのだろう。
「うちに来ていたんですか?」
「うん、学生の素行関係でちょっと話を聞きたくてね」
「そうなんだ。そういえば、最近、うちの高校にも警察やらユースの人が出入りしてるけど、同じかな? 何か事件でもあったんですか?」
「いや、そういうのじゃなくて警察もユースティティアも学生の保護の強化期間みたいなやつよ」
さらり、と有栖が嘘をつけるのは京にも同様の話をするため準備をしていたからだ。
「へぇ、品行方正な私には関係ないことだね」
「夜遅くに猫探ししていた前科者が何を言う」
「それは時効ってことで」
親しみのある会話を交わしながらも、有栖は楓の様子を観察していた。
「最近は高本さんのカフェには行ってないの?」
「あー、最近はちょっとドタバタしてて」
「そう。まぁ、寄り道のし過ぎは推奨しないけど、気晴らしぐらいはしときなよ。高本さんも会いたがってるだろうし」
「わかりました」
「じゃあ、自分はこれで」
「さようなら」
そこまで会話を交わすと、有栖は背を向け、楓は帰宅する為に家へと向かう。
ここで楓に直接聞き込みをしなかったのは露骨過ぎる、というのもあるが、それとは別に気になることがあったからだ。それは、先程、京と話した内容の一部分――有栖はユースティティアに戻る道中で、それを思い出す。
「学校の用品が紛失したりすることもあるそうです。最近、娘さんの学校用品を不自然な時期に買い換えたりしませんでしたか?」
「いいえ、無いわね」
その会話の通り、先程見た楓の『カバン』は新品ではなかった。使い込んでいるのは見て解る。だが――
「矛盾するな。彼の発言と」
有栖は右京の言葉を思い出す。
「学校帰りに会うと、薄いですけど、アザや傷。カバンがボロボロだったことが最近ありまして、聞いても誤魔化されて……有栖さん、助けてくれませんか?」
右京は確かにカバンがボロボロだったと言っていた。この矛盾が何を意味するのか……有栖は妙に気になった。
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