有栖と奉日本『カクれんぼ』

ぴえ

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第三章:まぁだだよ

有栖_3-2

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「改めて、自己紹介をさせて頂きます。自分はイチさん……いえ、一色さんの部下の有栖と言います」
 和室の茶の間に通された有栖は相手がお茶と茶菓子の準備をし終え、向かいに座るとそう言って、一礼した。
「ご丁寧にどうも。一応、まだ一色の家内をしている一色 京(いっしき みやこ)です」
 京は笑顔で少しトゲのあるように言うが、有栖は笑えない。
「えーっと、その、反応に困ります」
「そうよね、ごめんなさい。ちょっとした嫌味よ、あの人にも言っておいて」
「一応、ここに来ているのは内密なので」
 京の言った『あの人』というのは彼女の上司を指しているのは明らかだった。そして、有栖がここに来ていることは一色には内緒だった。それは今回の調査は学生の素行と裏金調査、ということになってはいるが本当は一色の娘である楓が関わっている可能性を伏せているので、無関係であるはずのこの家の調査が知られれば怪しまれてしまう。
「私も、あの人には内緒にしている方がいいのかしら?」
「お願いします」
「別にいいけど。どうせ最近は帰ってこないし、来ても離婚の話だけだし」
「えーっと、なんと言ったらいいのか……」
「まぁ、有栖さんの話を聞く代わりにちょっと私の愚痴にも付き合ってよ。言える相手がいないから、こっちはストレスが溜まってるの」

 そこから京はつらつらとストレスを吐き出した。

 一色から急に離婚を切り出されたこと。
 その離婚の理由は言えない、と告げられたこと。
 離婚を受け入れないことを言うと別居をお願いされたこと。
 別姓にしてくれ、と言われたがそれは楓の学園生活に支障があると嫌なので断ったこと。

「なんか一気に上司のプライベートを知ってしまって気まずさで吐きそうです」
「あはは、そうよね」
 有栖のげんなりした表情を見て、京は楽しそうに笑う。肝の据わった女性だな、と有栖は少し感心した。
「でもね……あの人が急に理不尽なことを言ったってことは、言わなきゃならない状況なんだってことは解ってる。たぶん、私達のことを考えてのことなのよ。あの人はいつも自分のことより、人のことだから」
 京は笑顔を消し、寂しそうに言った。有栖も話を聞きながら一色の行動には何か別の意味があるのではないか、と感じていた。理由を言わない、というのが彼の部下として仕事しているからこそ、違和感がある。
「でも、家族だからさ。打ち明けて欲しい――だから、別居以外は断ってるの」
「娘さんを溺愛している感じからすると、浮気するような人でもないですしね」
「仮に浮気だとしたら、絶対に別れない。私よりあの人に似合う女なんていないんだから」
 そう断言する自信満々な態度の京を見て、有栖は根拠はないが納得してしまった。
「じゃあ、私の話は終わり。そっちの話を聞きましょうか」
「はい、宜しくお願いします。では、まず――」
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