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王都への旅
順調
しおりを挟む次の日も、その次の日も。
一行は朝から夕暮れまで、街道を進み続けた。
舗装された道は次第に土へと変わり、風景も緑の平原から穏やかな丘陵地へと移ろっていく。
移動自体は順調で、魔物の影も瘴気の濃さも問題はなかった。
はるも、見た目には落ち着いていた。
外套とフードを深く被り、馬車の窓から流れる景色を静かに眺めている。
――だが、昼を少し過ぎた頃。
はるはふと、胸の奥がずしりと沈むような感覚に襲われた。
(……あれ……?)
視界がわずかに揺れ、手足に力が入りにくい。
無意識のうちに、はるは窓枠へと身体を預けるように寄りかかった。
その小さな異変を見逃さなかったのは、向かいに座っていたミエルだった。
「はるくん? ……顔色が良くない。大丈夫ですか?」
静かな声で問いかけられ、はるはゆっくりと振り向く。
「……なんだか……体が、重くて……」
声にも張りがなく、気だるげだった。
ミエルはすぐに表情を引き締め、馬車を止めるよう外へ合図を送る。
「少し、診るよ。無理しないで」
はるを支えながら座り直させ、脈、呼吸、魔力の流れを丁寧に確かめる。
ミエルの眉が、わずかに寄った。
「……魔力波形が、昨日より乱れている」
「それに、微熱が出てる」
すぐさま馬車を降り、カエルスのもとへ向かう。
「団長。彼に異変があります。
魔力波形が不安定で、疲労が表に出始めているようです。」
カエルスは短く頷いた。
「……足を止める。セナにも見せろ。」
その指示に、一行は即座に動きを止めた。
⸻
しばらくして、セナが馬車へと乗り込んでくる。
「どれ……」
手際よく診察を引き継ぎ、魔力の状態を探ると、セナは小さく息を吐いた。
「流石に疲れが来たか。
この移動距離だ、無理もない」
柔らかな光が、セナの掌から溢れる。
ヒールの温もりが、はるの身体を包み込んだ。
「……あったかい……」
まぶたが重くなり、意識がゆっくりと沈んでいく。
「今は休め。無理に起きていなくていい」
セナにそう促され、はるは素直に身体を預けた。
セナの膝にそっと頭を乗せると、そのまま眠りに落ちていく。
寝息が安定したのを確認し、ミエルが小さく頷いた。
「眠ったようです。ひとまず大丈夫でしょう。」
「次の村まではこのまま行けるだろう。俺も同乗する。この状態じゃテント泊は厳しい。」
セナの言葉に、カエルスは頷き、一行は再び動き出した。
⸻
日が傾き始めた頃、一行は小さな農村へと辿り着いた。
畑と家屋がこぢんまりと並ぶ、素朴な村。
だが街道沿いという立地もあり、旅人の往来は多い。
そのためか、宿屋は一軒ながらも比較的しっかりとした造りをしていた。
事情を説明すると、宿屋は快く建物を貸し切ることを了承する。
「今夜は、ここで休もう」
「はるの様子を見る。移動は明日以降だ」
アルバートの言葉に、全員が異を唱えなかった。
はるはそのまま宿屋の一室へ運ばれ、
ベッドへと寝かされる。
外では、騎士たちが静かに見張りにつき、
宿屋の中には、張り詰めた緊張と同時に、安堵の空気が流れていた。
旅は順調だった。
だが――“黒の力”を抱える少年の身体は、確実に限界へ近づきつつあった。
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