光と瘴気の境界で

天気

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王都への旅

野営

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エルダ村の朝は、花の香りとともに静かに始まった。
夜露を含んだ花々が朝日を受けてきらめき、畑一面が淡く輝いている。

出発の準備が整い、馬がいななきを上げる中、
はるは馬車へ向かう途中で、何度も振り返るように花畑を見つめていた。

「……きれいだね……」

名残惜しさを隠しきれないその様子に、隣を歩いていたルートが苦笑する。

「ごめんね。ゆっくり観る時間、取れなくて……」
少し屈んで視線を合わせ、柔らかく続けた。
「また来よう。今度は、ちゃんと時間を作ってさ」

「……うん」
はるは小さく頷き、最後にもう一度だけ花畑を目に焼き付ける。

その背を、アルバートとセナが静かに見守っていた。



前日と同じように、はるは馬車へと乗り込む。
中にはすでにミエルが腰を下ろしており、穏やかな笑みで迎えた。

「また揺れるから、無理しないで。気分が悪くなったらすぐ言って」

「はい……ミエルさん」

馬車がゆっくりと動き出し、一行はエルダ村を後にした。

道はなだらかで、緑が続く穏やかな街道。
ところどころで小休憩を挟みながら、無理のない速度で進んでいく。

はるは窓から流れる景色を眺めたり、
セナやミエルと他愛ない話をしたりしながら、静かに時間を過ごした。

(……こうして進んでるんだ……王都へ……)

不安がないわけではない。
それでも、馬車の外で見守る人たちの存在が、心を支えていた。



日が傾き、空が茜色に染まるころ、
一行は街道脇の開けた場所で足を止めた。

「ここで野営だ」

カエルス・アルバートの指示に従い、騎士たちが手早く準備を始める。
焚き火が起こされ、テントが張られ、周囲には簡易的な結界が展開された。

はるは馬車の中で、セナとミエルの診察を受ける。

「波形も大きく乱れていませんね」
「今日は日が落ちるからここまでだ。テント泊になる。」

ミエルが優しく言い、セナが頷いた。

「今日はよく動いたし、早めに休もう」

簡素な夕食をゆっくりと口にし、
はるは用意されたテントへ案内される。

外では焚き火のはぜる音と、騎士たちの低い話し声が聞こえる。

布に包まれた寝床に横になると、
旅の疲れがじわじわと体に広がっていった。

(……明日も、進むんだ……)

そう思いながら、はるは目を閉じる。

夜空の下、静かな野営地で、
王都へ続く旅路は、確実に前へと進んでいた。







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