全寮制男子高校 短編集

天気

文字の大きさ
3 / 21

3

しおりを挟む



文化祭まで後5日の朝、
いつもよりも体が重かった。
熱っぽく、喉が痛み咳き込む。
それでも生徒会室へ向かおうと寮から歩いていると
体育館横で空とすれ違った。

咳き込みながら歩いている朝陽

「お前、仮病で気引きたいんだろ」

嘲る声。

「、っちがう、けほっ」

「ふん」

元来た道に踵を返す空。

もう直ぐ校舎にたどり着くというところで

「おい」

次の瞬間、冷たい水が全身に浴びせられた。
11月に入り、日差しがあれば暖かさも感じるものの
ヒヤリとした風が吹いていた。

「……っ」

声も出なかった。
濡れた制服が肌に張り付き、震えが止まらない。
ゆっくり顔を上げると、バケツを持った空が立っていた。

「ハハッゴミ以下だな」

そう言い残して、空は去っていく。

いつもより遅い時間の登校で1限が始まっている時間もあり、周りには他の生徒はおらず、生徒会室まで見られずに行くことができた。

朝陽は生徒会室で
濡れた制服を脱ぐとジャージに着替え、机に向かった。
仮眠室から毛布を持ってきて肩から掛けるが
指先が震え、文字が滲む。
頭がぼうっとして、思考が遅れる。


——まだ、終わってない。


その一念だけで、ペンを握り続けた。

けれど、書類の山は減らない。
効率は落ち、時間だけが過ぎていく。

昼休み立ち上がる気力も体力もなく、
誰もいない生徒会室で、朝陽は一人、熱に浮かされたように作業を続けていた。


——助けて、なんて。いや、やらなきゃ。


そんな言葉を、口に出すことはできなかった。










しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幸せごはんの作り方

コッシー
BL
他界した姉の娘、雫ちゃんを引き取ることになった天野宗二朗。 しかし三十七年間独り身だった天野は、子供との接し方が分からず、料理も作れず、仕事ばかりの日々で、ずさんな育て方になっていた。 そんな天野を見かねた部下の水島彰がとった行動はーー。 仕事もプライベートも完璧優秀部下×仕事中心寡黙上司が、我が儘を知らない五歳の女の子と一緒に過ごすお話し。

【完結】君の穿ったインソムニア

古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。 純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。 「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」 陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

告白ゲーム

茉莉花 香乃
BL
自転車にまたがり校門を抜け帰路に着く。最初の交差点で止まった時、教室の自分の机にぶら下がる空の弁当箱のイメージが頭に浮かぶ。「やばい。明日、弁当作ってもらえない」自転車を反転して、もう一度教室をめざす。教室の中には五人の男子がいた。入り辛い。扉の前で中を窺っていると、何やら悪巧みをしているのを聞いてしまった 他サイトにも公開しています

天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら

たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生 海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。 そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…? ※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。 ※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。

紹介なんてされたくありません!

mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。 けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。 断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

キミがいる

hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。 何が原因でイジメられていたかなんて分からない。 けれどずっと続いているイジメ。 だけどボクには親友の彼がいた。 明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。 彼のことを心から信じていたけれど…。

処理中です...