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009 ボロ
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オレのような赤の他人のおじさんがパーティに入ることをなぜか快諾するエレオノール。彼女の狙いが分からないな。
クロエの所属する冒険者パーティ『五花の夢』は、同じ年頃の少女五人で結成されたパーティだ。オレのようなおじさんは、間違いなく異分子だろう。見た目からも明らかだし、話が合うとも思えない。
実際、オレに年頃の女の子の心の機微などまったく分からない自信がある。客観的に見て、上手くいくとは思えないのだが、どうして快諾してくれたんだ?
「………」
クロエとじゃれるエレオノールを見ながら、オレは結局エレオノールに疑問をぶつけられなかった。
なぜかは分からないが、せっかく快諾してくれたのだ。オレが話を蒸し返して、やっぱり反対するなんて言われたらかなわない。ここは沈黙を選ぼう。エルフの連中で言うところの沈黙は金ってやつだ。
「じゃあ、さっそくイザベルたちの所に行きましょう?」
「馬車を用意させましょうか?」
「いいわ、近くだもの。歩いていきましょ。ほら、叔父さんも早くー」
「ああ」
エレオノールと並んで仲良さそうに歩くクロエに返事をしながら、オレはクロエたちの後を追うように歩き始める。
「それでねー……」
「まあ! そんなことが……」
オレは少女たちの語らいを邪魔するほど野暮じゃない。まぁ、話に入れるとも思わんしな。少し離れて後ろから付いていく。
クロエたちの足は、リオン商会を出ると、大通りから外れ、裏路地へと進んでいく。治安が悪いとは言わないが、どこか寂れた感じがする。主に低所得者の多く住む地区だ。
おそらく、他の仲間はこの地区に住んでいるのだろう。寂れた雰囲気を破る少女たちの黄色い声は、なんとも場違いのような気がする。
「うぃーっく……」
前方から、朝から酒瓶を持ったみすぼらしい格好をした男が歩いてくるのが見えた。ただの酔っ払いだろうが、一応威嚇しておくか。クロエたちに絡まれたりしたら、殺してしまいかねない。
オレは全力でふらふらあるく酔っ払いの男を睨みつける。すると、男はビクリッと体を震わせ、きょろきょろとあたりを見渡す。
「ひぃっ」
そして、オレの姿に気が付くと、軽く悲鳴を上げてよろよろと後ろ歩きを始めた。
「あっ」
酔った体で後ろ歩きなんてしたからだろう。男の体が後ろに倒れ、大きく尻もちをつく。
「ん?」
「あら?」
さすがに目の前に人が倒れたら気になるのか、クロエとエレオノールの視線が倒れた男に向かう。クロエの視線をその薄汚い格好で奪うとは……許せんッ!
「ひやぁああああああああ!」
オレの本気の殺意を本能的に感じたのか、男が急いで立ち上がると、向こうに走っていく。
「ふんっ」
オレは腰に佩いた剣の柄から手を離すと、小さく鼻を鳴らす。あんな格好でクロエの前に出るなど、万死に値する。クロエに悪影響があったらどうしてくれるのだ。
「なんだったのかしら?」
「さあ?」
クロエたちは、突然転んで走り去った男が不思議なのか、疑問の声を上げていた。これ以上あの男のことを考えるなんて、無意味どころか有害ですらある。オレはクロエの気を引き戻すために口を開く。
「クロエ、仲間の家はまだか?」
「え? うん。あとちょっと。こっちよ」
クロエたちに誘われて辿り着いたのは、古いボロボロのアパートだった。外から見るだけでも、屋根や壁が剥がれ、今にも朽ちてしまいそうに見える。こんな所にクロエのパーティメンバーが?
「これはまた……」
姉貴の家も古いが、さすがにここまでひどくはない。こんな所に住んでいるのだ。よほど金銭的に苦しい生活をしているのだろう。
「貧しさから、冒険者へ……か」
毎年、食うに困って冒険者になる奴が一定数居るのは知っていたが……。そういう奴らは、装備の準備ができず、長い間低級ダンジョンをさまようことになる。食っていくのがやっとで、いつまでもろくな装備が準備できず、中級ダンジョンに挑戦することもできない。
そして、そんな状態から抜け出そうと無理をしてダンジョン攻略に乗り出し、死んでいくのだ。命は助かったが、深手を負って飢え死にになるケースもある。華々しい冒険者の活躍の裏にある冒険者の負の面である。
「ふむ……」
どうするべきかな。クロエが将来性の無い奴らとつるんでいる状況をオレはどうするべきだろうか。クロエから引き離してしまいたいが、それをクロエが素直に了承するかが問題だ。
冒険者のパーティとは、命を預け合う友だちよりも深い関係だ。
将来性が無いからとクロエを説得したところで、クロエが頷いてくれるかどうか……。クロエには頑固な一面があるからな……。まぁ、そんなところもかわいいんだが。まったく、厄介なことになったな。
「こっちよ」
そんなオレの心配など気付かず、クロエはニコニコとボロアパートに入っていく。仲間をオレに紹介できるのが嬉しいのだろうか?
「はぁ……」
まぁ、まずは会ってからだな。会って見極めないといけない。クロエの害となる奴かどうかを。
オレは自分にそう言い聞かせてボロアパートへと足を踏み出した。
クロエを説得する言葉を考えながら……。
クロエの所属する冒険者パーティ『五花の夢』は、同じ年頃の少女五人で結成されたパーティだ。オレのようなおじさんは、間違いなく異分子だろう。見た目からも明らかだし、話が合うとも思えない。
実際、オレに年頃の女の子の心の機微などまったく分からない自信がある。客観的に見て、上手くいくとは思えないのだが、どうして快諾してくれたんだ?
「………」
クロエとじゃれるエレオノールを見ながら、オレは結局エレオノールに疑問をぶつけられなかった。
なぜかは分からないが、せっかく快諾してくれたのだ。オレが話を蒸し返して、やっぱり反対するなんて言われたらかなわない。ここは沈黙を選ぼう。エルフの連中で言うところの沈黙は金ってやつだ。
「じゃあ、さっそくイザベルたちの所に行きましょう?」
「馬車を用意させましょうか?」
「いいわ、近くだもの。歩いていきましょ。ほら、叔父さんも早くー」
「ああ」
エレオノールと並んで仲良さそうに歩くクロエに返事をしながら、オレはクロエたちの後を追うように歩き始める。
「それでねー……」
「まあ! そんなことが……」
オレは少女たちの語らいを邪魔するほど野暮じゃない。まぁ、話に入れるとも思わんしな。少し離れて後ろから付いていく。
クロエたちの足は、リオン商会を出ると、大通りから外れ、裏路地へと進んでいく。治安が悪いとは言わないが、どこか寂れた感じがする。主に低所得者の多く住む地区だ。
おそらく、他の仲間はこの地区に住んでいるのだろう。寂れた雰囲気を破る少女たちの黄色い声は、なんとも場違いのような気がする。
「うぃーっく……」
前方から、朝から酒瓶を持ったみすぼらしい格好をした男が歩いてくるのが見えた。ただの酔っ払いだろうが、一応威嚇しておくか。クロエたちに絡まれたりしたら、殺してしまいかねない。
オレは全力でふらふらあるく酔っ払いの男を睨みつける。すると、男はビクリッと体を震わせ、きょろきょろとあたりを見渡す。
「ひぃっ」
そして、オレの姿に気が付くと、軽く悲鳴を上げてよろよろと後ろ歩きを始めた。
「あっ」
酔った体で後ろ歩きなんてしたからだろう。男の体が後ろに倒れ、大きく尻もちをつく。
「ん?」
「あら?」
さすがに目の前に人が倒れたら気になるのか、クロエとエレオノールの視線が倒れた男に向かう。クロエの視線をその薄汚い格好で奪うとは……許せんッ!
「ひやぁああああああああ!」
オレの本気の殺意を本能的に感じたのか、男が急いで立ち上がると、向こうに走っていく。
「ふんっ」
オレは腰に佩いた剣の柄から手を離すと、小さく鼻を鳴らす。あんな格好でクロエの前に出るなど、万死に値する。クロエに悪影響があったらどうしてくれるのだ。
「なんだったのかしら?」
「さあ?」
クロエたちは、突然転んで走り去った男が不思議なのか、疑問の声を上げていた。これ以上あの男のことを考えるなんて、無意味どころか有害ですらある。オレはクロエの気を引き戻すために口を開く。
「クロエ、仲間の家はまだか?」
「え? うん。あとちょっと。こっちよ」
クロエたちに誘われて辿り着いたのは、古いボロボロのアパートだった。外から見るだけでも、屋根や壁が剥がれ、今にも朽ちてしまいそうに見える。こんな所にクロエのパーティメンバーが?
「これはまた……」
姉貴の家も古いが、さすがにここまでひどくはない。こんな所に住んでいるのだ。よほど金銭的に苦しい生活をしているのだろう。
「貧しさから、冒険者へ……か」
毎年、食うに困って冒険者になる奴が一定数居るのは知っていたが……。そういう奴らは、装備の準備ができず、長い間低級ダンジョンをさまようことになる。食っていくのがやっとで、いつまでもろくな装備が準備できず、中級ダンジョンに挑戦することもできない。
そして、そんな状態から抜け出そうと無理をしてダンジョン攻略に乗り出し、死んでいくのだ。命は助かったが、深手を負って飢え死にになるケースもある。華々しい冒険者の活躍の裏にある冒険者の負の面である。
「ふむ……」
どうするべきかな。クロエが将来性の無い奴らとつるんでいる状況をオレはどうするべきだろうか。クロエから引き離してしまいたいが、それをクロエが素直に了承するかが問題だ。
冒険者のパーティとは、命を預け合う友だちよりも深い関係だ。
将来性が無いからとクロエを説得したところで、クロエが頷いてくれるかどうか……。クロエには頑固な一面があるからな……。まぁ、そんなところもかわいいんだが。まったく、厄介なことになったな。
「こっちよ」
そんなオレの心配など気付かず、クロエはニコニコとボロアパートに入っていく。仲間をオレに紹介できるのが嬉しいのだろうか?
「はぁ……」
まぁ、まずは会ってからだな。会って見極めないといけない。クロエの害となる奴かどうかを。
オレは自分にそう言い聞かせてボロアパートへと足を踏み出した。
クロエを説得する言葉を考えながら……。
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