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010 ジゼル
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コンコンコンッ!
強く叩くと壊れてしまいそうなほどボロボロなドアをクロエは遠慮なく叩く。意外としっかりしているのか、装飾も無いタダの木の板のようなドアは、硬い音を響かせた。
「はーいー」
中からまだ年若い少女の声が聞こえてくる。どうやら、本当にこんなボロアパートに住んでいるようだ。由々しき事態だな。クロエに友だちを選ぶように言いたくはないが、ここの住人とは関係を見つめ直さなくてはならないだろう。
「だれー?」
目の前のドアが開くと、小柄な人影が現れる。
「やっほージゼル」
「こんにちは、ジゼル」
「おぉー! クロクロにエルエルじゃん! やっほー!」
姿を現したのは、クロエよりも小さい少女だった。燃えるような赤い髪のポニーテール。大きな緑の瞳がキラリと意志の強そうな光を放っている。非常に活発な印象を受けた。
ジゼルの服は、少しきつそうなくらいのパツパツのミニスカートワンピース姿だ。言っちゃなんだが、小さい服を無理やり着てる感じだな。ワンピースにも繕った跡があるし、財政的に苦労しているのが分かる。なぜか、腰にベルトを巻いて剣を佩いているが、その剣も安物だ。
剣を佩いているのは予想外だったな。剣は安いものでもけっこうな金が必要になる。こんな所に住んでいる少女が持っているのは、少し予想外だった。
「およ? そっちのおじさんだれー?」
ジゼルと呼ばれた少女が、緑の瞳を大きく開いてオレを見つめる。見ているだけで好奇心の大きさを感じさせるワクワクした雰囲気を感じる瞳だった。
「ジゼル、こっちはアベル叔父さん。あたしの叔父さんよ。叔父さん、こっちはジゼル」
もうちょっと説明があってもいいのだがな。
オレはクロエの紹介に苦笑いをかみ殺して笑顔を浮かべる。
「アベルだ」
「あーしがジゼルだよっ! よろしくね、アベるんっ!」
「ほぅ」
まさか会って一発目であだ名呼びしてくるとは思わなかった。このジゼルという少女、面白いな。
「よろしく、ジゼル」
オレはジゼルに右手を伸ばすと、ジゼルは躊躇うことなくオレの手を取って握手した。やはり気が強い女の子だ。
オレは握手をしたままジゼルと見つめ合う。ジゼルはオレから目を逸らさない。やはりこの少女、気が強いようだ。剣を佩いているのだから、おそらく剣で戦うのだろう。前衛には、これぐらい気の強い奴の方がいい。
この少女は伸びるな。
そんな直感を感じていると、オレとジゼルの握り合った手に、軽く手刀が落とされる。
「もうっ! 2人ともなに見つめ合ってるのよ! ほらっ! 離した離した!」
クロエが、オレとジゼルの間に入るようにして割って入ったのだ。
「なーにクロクロ、妬いてるのー?」
「そんなんじゃないったら! もうっ!」
ジゼルのからかうような声に、クロエがふんすっ! と鼻息荒く言い返す。クロエも本気で怒っているわけではない。ただの少女同士の戯れだろう。怒った顔のクロエもかわいい。
「もう、ジゼルったら」
軽く息を吐いて、クロエの怒り顔が微笑みに変わる。少なくとも、このジゼルという少女とは冗談を言い合えるほど仲が良いことが分かった。これは、引き離すのは難しそうだな。無理をすれば、クロエに嫌われてしまう。そんなことは耐えられない。
「さて、どうするか……」
オレは小さな呟きを口の中で転がし、思案にふける。クロエが離れたくないのなら、無理に引き離すのは難しい。別の手段が必要だ。
「手が無いわけではないが……」
オレの期待に応えてくれるかどうかが疑問だが、いくつか手段を考えておこう。
「イザベルとリディはどうしたのでしょう? 外出中ですか?」
「そだよー。王都の外にお出かけしてるー」
エレオノールの問いかけに、ジゼルはなぜかつま先立ちをして、くるりと一回転して答える。軸のブレがない綺麗な一回転だ。体幹の強さが分かる。しかし、このジゼルという少女、頭は大丈夫だろうか? なぜ回ったんだ?
「いつ頃帰ってくるのか聞いていませんか?」
「聞いてないなー。たぶん、夜には帰ってくるだろうけどー」
察するに、このボロアパートに三人で暮らしているのだろう。そして、同居人の二人が外出中のようだ。いつ戻ってくるかは不明。
この狭いボロアパートに三人で暮らしているとは……。よほど金銭的に苦労していると思われる。
ジゼルには磨けば光るものを感じたが、残り二人はどうだろうか?
できれば、オレの期待以上の資質を持っていてほしいものだ。
「どうするクロエ? また明日にするか?」
パーティメンバーとの顔合わせは明日に持ち越すか。クロエに訊いてみる。
「うーん……。できれば早い方がいいのよねー。ジゼル、イザベルたちの居場所は分かる?」
「うんっ。たぶんあそこだと思うよー」
「じゃあ、迎えに行きましょ! ジゼル、案内頼める?」
「りょっ!」
ジゼルが笑顔でクロエの問いに、手を胸にあてて兵士の敬礼を真似してみせる。なんとも軽い調子の少女だが、大丈夫だろうか?
「んじゃ、いこいこ。善は急げってねー」
オレたちはジゼルに導かれるようにボロアパートを後にした。
強く叩くと壊れてしまいそうなほどボロボロなドアをクロエは遠慮なく叩く。意外としっかりしているのか、装飾も無いタダの木の板のようなドアは、硬い音を響かせた。
「はーいー」
中からまだ年若い少女の声が聞こえてくる。どうやら、本当にこんなボロアパートに住んでいるようだ。由々しき事態だな。クロエに友だちを選ぶように言いたくはないが、ここの住人とは関係を見つめ直さなくてはならないだろう。
「だれー?」
目の前のドアが開くと、小柄な人影が現れる。
「やっほージゼル」
「こんにちは、ジゼル」
「おぉー! クロクロにエルエルじゃん! やっほー!」
姿を現したのは、クロエよりも小さい少女だった。燃えるような赤い髪のポニーテール。大きな緑の瞳がキラリと意志の強そうな光を放っている。非常に活発な印象を受けた。
ジゼルの服は、少しきつそうなくらいのパツパツのミニスカートワンピース姿だ。言っちゃなんだが、小さい服を無理やり着てる感じだな。ワンピースにも繕った跡があるし、財政的に苦労しているのが分かる。なぜか、腰にベルトを巻いて剣を佩いているが、その剣も安物だ。
剣を佩いているのは予想外だったな。剣は安いものでもけっこうな金が必要になる。こんな所に住んでいる少女が持っているのは、少し予想外だった。
「およ? そっちのおじさんだれー?」
ジゼルと呼ばれた少女が、緑の瞳を大きく開いてオレを見つめる。見ているだけで好奇心の大きさを感じさせるワクワクした雰囲気を感じる瞳だった。
「ジゼル、こっちはアベル叔父さん。あたしの叔父さんよ。叔父さん、こっちはジゼル」
もうちょっと説明があってもいいのだがな。
オレはクロエの紹介に苦笑いをかみ殺して笑顔を浮かべる。
「アベルだ」
「あーしがジゼルだよっ! よろしくね、アベるんっ!」
「ほぅ」
まさか会って一発目であだ名呼びしてくるとは思わなかった。このジゼルという少女、面白いな。
「よろしく、ジゼル」
オレはジゼルに右手を伸ばすと、ジゼルは躊躇うことなくオレの手を取って握手した。やはり気が強い女の子だ。
オレは握手をしたままジゼルと見つめ合う。ジゼルはオレから目を逸らさない。やはりこの少女、気が強いようだ。剣を佩いているのだから、おそらく剣で戦うのだろう。前衛には、これぐらい気の強い奴の方がいい。
この少女は伸びるな。
そんな直感を感じていると、オレとジゼルの握り合った手に、軽く手刀が落とされる。
「もうっ! 2人ともなに見つめ合ってるのよ! ほらっ! 離した離した!」
クロエが、オレとジゼルの間に入るようにして割って入ったのだ。
「なーにクロクロ、妬いてるのー?」
「そんなんじゃないったら! もうっ!」
ジゼルのからかうような声に、クロエがふんすっ! と鼻息荒く言い返す。クロエも本気で怒っているわけではない。ただの少女同士の戯れだろう。怒った顔のクロエもかわいい。
「もう、ジゼルったら」
軽く息を吐いて、クロエの怒り顔が微笑みに変わる。少なくとも、このジゼルという少女とは冗談を言い合えるほど仲が良いことが分かった。これは、引き離すのは難しそうだな。無理をすれば、クロエに嫌われてしまう。そんなことは耐えられない。
「さて、どうするか……」
オレは小さな呟きを口の中で転がし、思案にふける。クロエが離れたくないのなら、無理に引き離すのは難しい。別の手段が必要だ。
「手が無いわけではないが……」
オレの期待に応えてくれるかどうかが疑問だが、いくつか手段を考えておこう。
「イザベルとリディはどうしたのでしょう? 外出中ですか?」
「そだよー。王都の外にお出かけしてるー」
エレオノールの問いかけに、ジゼルはなぜかつま先立ちをして、くるりと一回転して答える。軸のブレがない綺麗な一回転だ。体幹の強さが分かる。しかし、このジゼルという少女、頭は大丈夫だろうか? なぜ回ったんだ?
「いつ頃帰ってくるのか聞いていませんか?」
「聞いてないなー。たぶん、夜には帰ってくるだろうけどー」
察するに、このボロアパートに三人で暮らしているのだろう。そして、同居人の二人が外出中のようだ。いつ戻ってくるかは不明。
この狭いボロアパートに三人で暮らしているとは……。よほど金銭的に苦労していると思われる。
ジゼルには磨けば光るものを感じたが、残り二人はどうだろうか?
できれば、オレの期待以上の資質を持っていてほしいものだ。
「どうするクロエ? また明日にするか?」
パーティメンバーとの顔合わせは明日に持ち越すか。クロエに訊いてみる。
「うーん……。できれば早い方がいいのよねー。ジゼル、イザベルたちの居場所は分かる?」
「うんっ。たぶんあそこだと思うよー」
「じゃあ、迎えに行きましょ! ジゼル、案内頼める?」
「りょっ!」
ジゼルが笑顔でクロエの問いに、手を胸にあてて兵士の敬礼を真似してみせる。なんとも軽い調子の少女だが、大丈夫だろうか?
「んじゃ、いこいこ。善は急げってねー」
オレたちはジゼルに導かれるようにボロアパートを後にした。
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