どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)

水神瑠架

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講義選択を教室にて

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 入学式が無事(?)終わり、私たちは教室へと行く事に。
 ロアベーツィア様は先ほどの問題を兄と話し合うのか、別の用事か講堂を出たところで別れた。
 のんびり歩いてもあっという間についた教室を前に私はひそかにため息をつく。

「(とりあえず、自称婚約者ちゃんがこのクラスではない事を願いたいわぁ)」

 大丈夫、だと思いたい。
 根拠も何もないけど。
 私は気合を入れなおすと教室へと入る。
 のんびり歩いていたせいか席はほどほどに埋まっていた。
 この学園では席順は決まっていない。
 と、いうよりも席も自由だ。
 自分の席というものは存在しない。
 こういった所がつくづく『大学』のようだと感じる。
 空いている席に適当に……と思ったが、なにやら前の方が開いているのをみて若干げんなりする。

 権力社会の力は子供にも浸透しているようで。

 別に権力はすべからず悪とは思っていない。
 その権威の恩恵にあずかっている身でもあるわけだし。
 ただ、ここまでわかりやすいと『前』の意識が若干嫌気をさすだけで。
 
「(だからと言って「権力は悪だ!」と言ってみたり「私が変えてやる!」なんてする気は更々ないけどねぇ)」

 別にそんな革新的? 革命的な思考しているわけじゃあるまいし。
 時折『前』の常識とか道徳観が顔を出すだけの話でしかない。
 なんて誰かに向けて言い訳をしつつ空いている席に座る。

「<さてさて、これから一年間の講義を決めないと>」
「<ん? んな感じなのか?>」
「<うーん。『大学』っぽい感じだね>」

 冊子を眺め得つつクロイツにこたえる。

 まず『ゲーム』の場合だが。
 講義の日程は一年ごとに変えられる。
 より正確いうならば半年ごとだが、まぁそれはともかく。
 講義は座学である「教養」「魔法」「歴史」「錬金術」の四種類、実技の「魔法」「格闘(剣技)」の二種類。
 全部で六種類の講義から選ぶ事になっていた。
 選ぶ講義によって各々のステータスがアップする仕様である。
 このステータスは今後攻略キャラを攻略する際必要になるので適当というわけにはいかなかった。
 例えばお兄様の場合「教養」でアップするステータス値が一定値以上ないとイベントが発生しなかったりする。
 そんな感じで攻略キャラにあわせて講義を選ぶ必要がある。

 簡単にクロイツに説明すると「<典型的と言えば典型的、か?>」なんて言っていた。
 多分この手のゲームではありふれていると思うよ?
 
「<ただし、一年目はチュートリアルみたいな感じだから、『システム』側の言う通り設定するのが普通だったけどね>」
「<ふーん。まぁ現実ではあんま役には立たない知識だな? そもそも、実際はもっと講義数があるしな>」
「<そういうこと>」

 クロイツが言ったように実際の講義数はもっと多い。
 さらにその中でも必修と選択があるのだから十歳には過酷な事である。
 その分、変更は半年に一度ではない。
 自由と言っても良い。
 前半ならば変更しても単位はとれるし、結構自由に変更している人が多いらしい。
 後半だと補修を頼んだりしないと単位習得は無理みたいだからか、変更する人は少ないみたいだけどね。
 
「<けどよー。錬金術って講義があんけど、これは無理じゃねーの? 確か特殊技能だろ?>」
「<あー。基礎は一応やるって感じかな。創造錬金はともかく付加錬金は基本誰でもできるしね。錬金術の歴史とかを基礎項目として二年生まではやるって感じかな。魔法とかもそうだしね>」
「<意外としっかりしてんな>」
「<一応貴族を教育する場だしねぇ>」

 高学年になると「領地経営」とかも選択できるらしい。
 平民は「文官コース」とか「武官コース」とかになるんじゃないかな?
 今の私には関係ない話だけどねぇ。

 目の前の、というか今年の講義を選ぶだけでいっぱいいっぱいですから。

 ちなみに『ゲーム』だと、一週間ごとにイベントが起こるかどうかの判定があった。
 数値的にクリアしているイベントの中からランダムでイベントが起こる。
 時折、強制イベントが起こる以外は全部の週で判定がされる。
 つまり月四回、イベントが起こるって計算だ。
 ま、条件が達成されていないと何事も起こらず、1日寝ていた、なんてこともあったけどね。
 だからこそイベントを効率良く起こすためにスケジュール管理が結構シビアらしい。
 ルート的に「逆ハールート」とかもあったはずだけど、その場合二週目以降じゃないと無理だと思う。
 チュートリアルをのんびりやっていたら間に合わなそうだし。
 
「(それこそ好感度が引き継ぎになる二週目以降じゃないとルートの開示すらムリそうだよねぇ)」
 
 どちらにしろゲーム上でのお話なんだけどさ。
 
「<さて、と。講義どうするかなぁ>」
「<まずは必須科目を埋めて、そのあとに選択か?>」
「<まぁね。最初の一か月は変更すること前提だし、空き時間にいろいろ受講してみるのも手かもね?>」

 そこらへんは『大学』みたいな感じかな。
 そう考えると結構シビアだよなぁ。
 学ぶ意欲があれば詰め込むこともできるけど、逆に最低限で終わらせる事もできる。
 最低限の知識量では卒業後泣くはめになるだろうけど。
 いや、早ければ高学年で後悔するかもね。
 そうならないためにも二年までの基礎を受けているうちに、できれば一年次のうちに目的を明確に持ったうえで選択しないといけない。
 
 結局貴族っていうのは早熟を求められるのかも。
 
 私はずらっと並んだ講義の数々に目を通しつつ、内心苦笑する。
 貴族は、そして魔力を持っている平民は子供で居続ける事が許されない。
 ある種特別であるために。

「(各自、家で家庭教師に教えを受けているのだから、そんな事貴族ならばわかって当然、なんだろうけどね)」

 なんとも厳しい世界である。
 いやまぁ、私もその世界で生きていく一員ではあるのだけれど。

「(平民も学園に入学した時点でそういった雰囲気を肌で感じるはず)」

 そうじゃないとこの学園ではやっていけない。

 ただなぁ……。

 『ゲーム』の内容を思い浮かべてひそかに眉を顰める。

 『ゲームのヒロイン』はそこの感受性は欠けていた気がするんだよね。

 ストーリーには最低限しか目を通していなかった。
 そんな『私』でもそう感じたのだ。
 ゲームだからそれですんではいたが、現実として同じ性質ならば困る事になるだろう、と思う。

「(さてはて『ヒロインさん』はどうなのかな? ……そもそもいればの話だけど)」

 この期に及んで可能性を考えている自分に何とも言えない気分になるが、仕方無い。
 私はあくまで平穏が欲しいのだから。

「(ま、とりあえずいいや。講義選ぼう)」

 考えても仕方のない事は後回しにするに限る。
 私は意識を切り替えると講義の説明文に目を通し始めるのだった。


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