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講義選択を教室にて(2)
しおりを挟む講師の説明を聞きつつ講義を選んだ私はそのあとの時間を持て余していた。
仕方ない、仕方無ない。
だって講義を選ぶのが早すぎたから。
ただ言い訳させてもらうと、選ぶ項目が少なすぎたのだ。
一年目だからかほとんど必須だったし、ぶっちゃけると必須科目だけで一年を過ごしても問題なさそうだった。
二年目以降に受けたい講義があって、その基礎として受けないといけない講義、なんてのがない限り無理に講義を入れる必要はない。
……私は錬金術関連の自由講義を入れたけどね。
あと、多分だけど、これ午後は詰め込まないで自由にする事で他の雑事をしてくれって感じなんじゃないかと思った。
貴族なら社交が必要だし、社交をしなくとも社会勉強って感じでギルドに登録したり、冒険に出たり?
図書館に入り浸る、って選択肢もありそうだし、そういった自己を高めるのに午後は使ってくれっといった印象を受けるのだ。
正直、十歳の子供に何を期待しているのだろか? と突っ込みたい。
ただ、この世界は多分に漏れず精神年齢が高めだから問題ないのかもしれないが。
特に貴族としてきちんと教育を受けていれば、午後の空きを上手く利用して自己を高める事ができるだろう。
「(そもそも一年の時、無知のまま暴走しても、まだ修正がきくし、問題ない可能性もあるよねぇ)」
遊び呆けて一年を過ごしたとしても、一年の終わりに親に思い切り叱責されたりしてさ、結果として周囲を見れば皆ちゃんとスキルアップしてて自分との差は明らか。
そんなこんなで心を入れ替えて二年目以降は真面目になりました? 的な?
ただしそこで分からなければ切り捨てられる、と。
案外シビアな貴族社会ならありえそう。
怖い怖い。
そういった暗黙の了解的な当たり前が崩れるとすれば王族やら高位貴族やらが複数人で怠惰な学園生活を送る事ぐらいかな、と思う。
そう、例えば『ゲーム』のように、ね。
「(いや。放課後は外に冒険に出たりしていたし、怠惰は言い過ぎか。王侯貴族としてはどうなんだ? とは思わなくもないけど)」
巻き込まれてしまう周囲としては迷惑でしかないだろう。
特に貴族としては下位であり、元々平民だったヒロインは人一倍勉強しないといけないはずなのだから余計に。
元々、攻略キャラである王子達とヒロインではスタートが違いすぎる……はずなのだ。
ヒロインも一緒になって活発的? に動いていたけどねぇ。
よくよく考えるとヒロインはよく色々なイベントと心から楽しめていたもんだ。
ゲームでは描かれていないだけで相当の勉強家なのかもしれないが、その割には発言がいろいろ問題あった気がしなくもない。
リアリティを追求しているわけじゃないから突っ込んでいけない所というやつかもしれないが、それでも。
ヒロインは一体どうやって時間を捻出していたのだろうか?
講義の一覧表を見る限り、少なくとも一年目は外に出ている暇なんてなさそうなんだけどねぇ。
全くもって『ヒロイン』の言動は謎だなと改めて思った。
ああ、いっその事勉強に一心不乱になっていればヒロインと接触を避けられるだろうか?
「(案外、引きこもりはいい案だったかも?)」
朝、なんとなく思いついた事だが、さほど悪い案ではないきがしてきた。
引きこもる大義名分が思いついたら、実行を考えてもいいかもしれない。
「(とはいえ、今のところ夢物語だよねぇ)」
真面目に講義に出つつ、ヒロインと接触しない方法を考えなければ。
全く思いつかないが。
なんて考えているうちに他の生徒も講義を選び終えたらしく、ミーティング? は終わり講師が教室を出ていく。
少しばかり緩んだ雰囲気の中、私はさっさと片付けると席を立つ。
ちらっと視線を教室内に走らせるとロアベーツィア様が男子生徒と談笑している姿が目に入る。
女生徒の姿が見えない所、ヒロインとは本当に接触していないらしい。
できれば入学式の乱入者について少しばかり話をしたかったが、他の人がいる所でする話でもないので諦める。
「(ヒロインは……誰かわからないしいっか)」
ならば教室にいる理由もない。
私は誰かに声をかける事もなく教室を出て行った。
……顔見知りがいないって悲しいね。
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