68 / 81
時間の巻き戻し1
しおりを挟む『素敵な王子様と可愛いお姫様 ~略奪からの奪還~』から得た情報が事実なら、解除方法がないと諦めかけている“転換の魔法”が解除される。確証が欲しいシェリは放課後教会に行くことにしている。
昼休憩時、昨日の今日なのでレーヴを伴ってアデリッサが突撃をかましには来なかった。アデリッサが来ないだけで平和な時間を過ごせるなら、もう2度と来ないでほしい。
移動教室の際、遠くから見えたレーヴとアデリッサ。未だ心の矢印はアデリッサに向いたままでも、レーヴ自身の感情が彼女を好きな人と思わなくなった。しかし、今レーヴが事実を知ったとアデリッサが知ると考え無しのくせに行動力だけはすごい彼女のこと。此方が想像もしない行動をしてしまう危険が極めて高い。
もう少し、もう少しの間だけレーヴには魔法にかけられている演技をしてもらうしかない。
(殿下……あともう少しお待ちください……うまくいけば……あなたを解放させられます)
今のシェリに迷いはない。
せめて、最後くらいは自分の手で解決したい。
今日は生クリームたっぷりのカフェモカを飲んだだけで昼食を済ませた。固形物を食べる気が起きなかった。
図書室に入り、目当ての人がいないか探す。
彼を探すのは苦労する。
「いた」
シェリの目当ての人――ミエーレが机に突っ伏して寝ていた。万年寝不足な彼だがここ最近特に目の隈が酷くなっていた。夜遅くまで調べ物してると眠そうな顔で言っていたのは何時だったか。
普段の調子で“転換の魔法”に解除方法はないと言っておきながら、ミエーレは密かに解除方法がないかを探していたのだ。クロレンス王立学院の書庫量は相当な物。ヴァンシュタイン公爵邸でも調べ物、学院でも調べ物、天才と名高い彼でもやはり睡魔には勝てない。
隣に座って寝顔を見つめる。
目の隈を除けば、絵本に出てくる王子様の容姿をしている。
金貨を溶かしたような金糸、深慮を彷彿とさせる碧眼。顔の造形も非常に整っており、一目見ただけで女性の心を鷲掴む美貌。
この全てを台無しにしているのが目の隈。迫力が増して近寄り難い。シェリは昔から付き合いがあるので気にしない。
「ん……」
起きる気配がない。眠ったばかりなのか、深い眠りに就いているのか。
シェリはそっと金髪を撫でた。
「羨ましいわ」
指を通るさらさらな髪。ふわりと舞うと香る甘い香り。ミエーレの名の通り、彼自身甘い物は好きだ。
「ねえ……ミエーレ。寝ててもいいわ。聞いてほしいの」
ミエーレの触り心地の良い髪を触りながら語る。
「殿下を助けられる方法があるかもしれない。わたしが昔から読んでる本を知ってるでしょう? 昨日、その本のシリーズなのかしらね『素敵な王子様と可愛いお姫様 ~略奪からの奪還~』っていうタイトルがあったの。
聞いたことがないでしょう? わたしもないの。なんとなく、興味が出て本を読んだら……」
ピタリと手を止めた。
「……“転換の魔法”解除に繋がる魔法の存在が記されてあったの」
66
あなたにおすすめの小説
チョイス伯爵家のお嬢さま
cyaru
恋愛
チョイス伯爵家のご令嬢には迂闊に人に言えない加護があります。
ポンタ王国はその昔、精霊に愛されし加護の国と呼ばれておりましたがそれももう昔の話。
今では普通の王国ですが、伯爵家に生まれたご令嬢は数百年ぶりに加護持ちでした。
産まれた時は誰にも気が付かなかった【営んだ相手がタグとなって確認できる】トンデモナイ加護でした。
4歳で決まった侯爵令息との婚約は苦痛ばかり。
そんな時、令嬢の言葉が引き金になって令嬢の両親である伯爵夫妻は離婚。
婚約も解消となってしまいます。
元伯爵夫人は娘を連れて実家のある領地に引きこもりました。
5年後、王太子殿下の側近となった元婚約者の侯爵令息は視察に来た伯爵領でご令嬢とと再会します。
さて・・・どうなる?
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
真実の愛は、誰のもの?
ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」
妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。
だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。
ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。
「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」
「……ロマンチック、ですか……?」
「そう。二人ともに、想い出に残るような」
それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。
欲深い聖女のなれの果ては
あねもね
恋愛
ヴィオレーヌ・ランバルト公爵令嬢は婚約者の第二王子のアルバートと愛し合っていた。
その彼が王位第一継承者の座を得るために、探し出された聖女を伴って魔王討伐に出ると言う。
しかし王宮で準備期間中に聖女と惹かれ合い、恋仲になった様子を目撃してしまう。
これまで傍観していたヴィオレーヌは動くことを決意する。
※2022年3月31日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
瀬月 ゆな
恋愛
ロゼリエッタは三歳年上の婚約者クロードに恋をしている。
だけど、その恋は決して叶わないものだと知っていた。
異性に対する愛情じゃないのだとしても、妹のような存在に対する感情なのだとしても、いつかは結婚して幸せな家庭を築ける。それだけを心の支えにしていたある日、クロードから一方的に婚約の解消を告げられてしまう。
失意に沈むロゼリエッタに、クロードが隣国で行方知れずになったと兄が告げる。
けれど賓客として訪れた隣国の王太子に付き従う仮面の騎士は過去も姿形も捨てて、別人として振る舞うクロードだった。
愛していると言えなかった騎士と、愛してくれているのか聞けなかった令嬢の、すれ違う初恋の物語。
他サイト様でも公開しております。
イラスト 灰梅 由雪(https://twitter.com/haiumeyoshiyuki)様
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる