【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

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第162話 アーカサスの砦攻略戦4

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 《※三人称でお送りいたします》

 極太の光は多くの悪魔達を飲み込んだ。悪魔達を束ねるリーダー、カルスは伯爵級の力を持つ人魔である。しかしそのカルスも自らの力を持ってしても防ぐことは不可能と判断し攻撃の回避に専念した。

 軽うじて避けることはできたものの、その光が過ぎ去った後を見て戦慄を覚える。

「な、なんなのだこの威力は……!」

 先刻ルウが放った神気発衝ディバインマッシャー程のサイズではなかったが、それでもカルスにしてみれば今日初めて見る魔法である。そのインパクトはかなりのものがあった。

 そしてその光が過ぎ去った場所にいた悪魔達は一体残らず消滅しており、避けて正解だったと冷や汗を流す。

 しかしその安堵も一瞬のことだった。

 マドゥーラが操る配下の人工聖霊達がこちらに攻撃を仕掛けてきたからだ。元々その距離は100ほどしかなかった。空中戦においてその距離は短く、神気発衝ディバインマッシャーによって隊列を崩され、浮き足立つ悪魔達が体制を立て直す時間もない。

「かかれ!」

 マドゥーラの号令で人工聖霊達が前線の悪魔達を次々に斬り伏せていく。悪魔達の中にはグレーターデーモンに分類される種類もいたが、特殊能力を発揮する間もなく落とされていった。

 そして人工聖霊達は特定の一体を守るように編隊を組み、悪魔達の密集する中へ突撃していく。

 そして守られていたその人工聖霊が剣を天に掲げた。その人工聖霊が元にした魔法は言わずもがなかの神域への昇華ディバインレムルである。

 その人工聖霊を中心に光が広がる。範囲がくっそ広いためカルスでは配下のデーモン達を守る術もなかった。爵位持ちの悪魔なら自分で防ぐ術をもっているが、グレーターデーモンは攻撃に特化した種類が多く抗う術を持たない。そのため、この魔法一つで容易に戦況が覆るのだ。

「なんなんだあれは!? まさか聖霊だとでも言うのか?」

 配下の大半が消滅し、カルスは焦りを覚えた。神域への昇華ディバインレムルという魔法はカルスもその存在は知っている。だがその使い手は少ない。覚えるにしても光との親和性がSランクで魔力が800というあまりにも限定された条件のため、ニーグリンドには使い手の存在しない魔法であった。

「カルス、部隊を撤退させな。アーカサスの砦はくれてやってかまわないから」
「つまり兵には投降させろ、とおっしゃるのですかリティス様」

 悪魔達の部隊長はカルスだが、リティスは今や男爵級から侯爵級にまでのし上がったアマラの側近である。どちらが上かは言うまでもない。

 リティスの格好といえばおおよそ戦場には似合わない露出のある赤いワンピース姿だ。それでもその持つ雰囲気がカルスより上の存在であることを示していた。

「そうだ。私達悪魔は粛清されるから撤退させる。だが投降した人間には捕虜としての身分が保証されるはずさ。アマラ様は人間の兵士たちが無駄に死ぬことを望んじゃいないからね」
「おお、さすがは慈悲深きアマラ様でございます。わかりました、人間の兵士達には撤退命令を伝えて参ります」

 リティスの言葉にカルスは感動した。確かにこのまま戦い続けても勝ち目はないことぐらいカルスもわかっていたのだ。悪魔達の損耗率でいえば既に壊滅状態。人間の兵士達の損耗率ももうじき2割に届こうとしていた。

 カルスは素早く地上へと向かう。幸い人工聖霊達はカルスには目もくれず周りのデーモン達を相手にしていた。

 だがマドゥーラは違った。マドゥーラの目的は部隊長の浄滅なのだから。
 マドゥーラは光の粒子を飛ばしながらカルスを追う。その速度はカルスを上回っており容易にカルスの行く手を阻んだ。

「伯爵級悪魔とお見受けする。お覚悟を」
「ま、待て! 今から人間の兵士達には投降させる。見逃してくれ、このままだと無駄に犠牲者が増えちまう」
「? 悪魔にしてはエラく人間くさいな。もしかして人魔というやつか?」

 通常悪魔は人間のことなど気にかけたりしない。ましてや名も知らぬ他人などゴミ同然である。それはマドゥーラも理解しており、だからこそカルスの言動には首を傾げざるを得なかった。

 それでもマドゥーラは油断せずその剣の切っ先をカルスに向ける。一方のカルスは帯剣こそしていたがその剣に手をかける様子もなかった。

「そうだ! 俺はアマラ様に忠誠を誓い、望んで人魔に身をやつした。この戦は俺達の負けでいい。アーカサスの砦はくれてやっても構わん。ただし、砦の人間を蹂躙するのだけはやめてくれ!」

 砦にいるのは何も戦闘員だけではない。砦での生活を支えるための非戦闘員も数多くいるのだ。その中には民間の協力者だっている。

「私に決める権利はない。だが進言はしてやろう。そのようなことをすれば我が主も王国を見放すだろうがな。行け」

 カルスの訴えにマドゥーラは淡々と答えると、剣の切っ先を下ろす。もちろん油断はしない。もし何か怪しい動きを見せればカルスは即座に真っ二つとなるだろう。

「感謝する。俺の名はカルス、悪魔の部隊を率いる隊長でもある」
「偉大なる魔導士、ルウ様に仕える聖霊アリス=マドゥーラだ」

 敵の部隊長を見逃すのは業腹だが、それでこの戦いが終わるなら主も許してくれるだろう。マドゥーラはそう信じて疑わなかった。

「もう一体強い力を持つ悪魔がいたが引いたか。だが他のデーモンどもは殲滅せねばなるまい」

 リティスは既に戦場から撤退していた。マドゥーラがリティスてはなくカルスを追ったのは怪しい動きをしていると判断したからに過ぎない。





 戦場ではニーグリンド兵が武装解除を始めていた。降伏を伝える白旗を持った伝令兵が馬を駆り、笛を吹いて投降を伝えたからだ。これが戦場における世界に設けられたルールで、投降した側は武器を地面に落として両手を後ろに組んで無抵抗の意思を伝えなければならない。

 勝った方もその時点で戦闘をやめ、敵兵を害してはならない、というのがこの世界における戦争のしきたりなのだ。

「まさか砦まで落とせるとはな……」

 確かにこの戦いは終始エストガレスが押していた。それなら普通は撤退して砦での籠城戦になると思っていたのだ。それが開戦したその日に戦いが終結である。

 将軍としては何か企んでいるのではないか、と疑わざるを得なかった。
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