【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ

文字の大きさ
166 / 188

第163話 アマラの評判

しおりを挟む
「これはちょっと予想外だったな……」

 砦の執務室では殿下が頭を抱えていた。捕虜となった兵士の数は6000人にも及ぶ。それは別にいいんだけどね、問題はその処遇だ。

「正直僕も予想外でしたね。まさかアマラがこんなに兵士に慕われているなんて思いもよりませんでした」

 アマラの印象といえば自分勝手で自分のためなら平気で他人を犠牲にできる。実際村や街を滅ぼしているし最近は聖都ですら壊滅させてしまっている。そんなアマラが治めているんだから当然民衆の反発もあるはずだとみんな考えていたはずなのだ。

 当初の予定では攻め落とした砦や街の人達の協力を得られ、投降した兵士たちも味方にできる。それが上層部の考え方だった。

 しかしある兵士は「アマラ様はこの国の救世主だ」と称え、またある民間の義勇兵は「アマラ様はこの国から貧困を無くそうと努力され、多くの命が救われている」とその統治ぶりを評価していたのだ。

 つまり僕たちは解放軍のつもりでいたのに彼らにしてみれば僕たちはただの侵略者に過ぎない、ということだ。

 なので当然エストガレスの軍に加わるなんてことはあるわけなく、それどころかアマラが自分たちを救うために動いてくれると信じているそうな。マジか。

「ニーグリンドの内部調査はことごとく失敗に終わっていたからな。これでは計画を下方修正する必要があるな」

 隣に新しい国が誕生したのだから当然内部調査のために密偵は放たれていたそうだ。だが帰ってきた者は誰もいないらしい。そしてここの砦の人達の話によると、ニーグリンドにはどの街にも普通に爵位持ちの悪魔がいるのだから国外の商人も旅人も寄り付かない始末なんだそうだ。

「そうですね。まさか石にして収納するわけにもいきませんしねぇ」

 そんなことしたら完全に悪者だし。一応砦の収容施設には入れてあるけど、その面倒を見ているのもニーグリンドの人達なんだよね。つまり反逆の機会ありまくり。このままここに置いておけば、僕らが砦を出たら武器を手にして襲ってきそうだね。

「となると本国へ移送するしかないな。飛空艇で6000人運べるか?」
「一応軍隊移送用に巨大な奴もありますから運べます。それでも2つに分けてかなりの人数が必要になりますけど」

 一番大型のもので収容人数5000人だ。それでも見張り等も必要なのでしばらくはここが手薄になる。運転に関してはちゃんとできる人を教育していたので僕が乗り込む必要はないけどね。

「そうか、ならそれで頼む。明日の朝から移送を開始したいから朝になったら砦の外に用意しておいてくれ」
「わかりました」

 僕は頭を下げ、執務室を後にする。なんというか、いつの間にか殿下の相談役みたいなポジションになっちゃってるよ。

 ひとまず捕虜の処遇についてはこれで大丈夫かな。しかしマドゥーラから聞いた「アマラは兵士が無駄に死ぬことを望んでいない」という話は衝撃だった。アーカサスの砦をすんなり明け渡したのも「勝てそうになかったら砦くらいくれてやれ。無駄死にを増やす前にさっさと降伏しろ」というとても国王らしからぬ命令があったからだとか。

 考えられる罠としては砦に陣取った僕たちを全員まとめて魔法で吹き飛ばすことか。結界こそ張ってあるけど、向こうには魔王ニーグリがいる。その気になれば砦ごと吹き飛ばしてくる、というのは十分考えられることだ。

「うーん、僕の方でもアマラの人物像を一度確認したほうがいいかな」

 そう思い立ち、ここで働く民間の人たちに話を聞くことにした。今はもう夕飯も終えているし手の空いた人もいるだろう。僕は早速食堂の方へと向かった。




 食堂にはおばちゃん達が多い。一般の兵士だと警戒されるけど、小柄な僕ならそこまで警戒されないかも。そう思い話しかけてみた。

「あの、すいません。エストガレスの者なのですが、少しお話よろしいでしょうか」
「なんだい、随分小さいね。エストガレスじゃこんな子供も戦っているのかい!」
「あの、僕これでも17なんですけど……」

 いやまぁ、平均よりは少しどころかかなり小さいかもしんないけどさ。

「そうかい。そういやなかなか立派な格好をしているね。貴族様かい?」

 僕が身に着けているのは特製の法衣で神霊アウラ様の髪が織り込まれたものだ。装飾こそ質素だけど神気を帯びており、それが眩く映るのかもしれない。

「いえ、民間の者です。冒険者なんで。アマラについて少しお話を伺いたいのですがよろしいですか?」
「アマラ様のかい? いいとも。かの御方が如何に立派な御方か。それを聞けばあんたらも侵略戦争なんて起こす気なくなるだろうさ」

 多少渋るどころか笑顔だよ。しかもなにこの心酔ぶりは?

「ニーグリンドができる前、つまりこの国がまだルストリアだった頃の話さ。特に元王女の散財が酷くてね、無能な国王は重税を課して貴族どもは私腹を肥やす最悪な国だったよ。そのときに立ち上がったのがアマラ様なのさ。アマラ様は他所の国からの来訪者だったんだけどね、レジスタンスに入って瞬く間にリーダーとなったのさ」

 なるほど、政変が起きそうだったから国ごと乗っ取る計画を立てたわけか。しかしアマラがリーダーなら悪魔を使ったはずだ。よく受け入れられたよね。

「そして元王女を始めとした王族は全員捕らえられ、断頭台送りになったわけさ。そしてアマラ様が王となりニーグリンドができたわけさね」
「わざわざ断頭台送りにしたんですね。彼なら容赦なく殺すと思っていましたが」
「うん? アマラ様を知っている口ぶりだね」
「ええまぁ、同じ国の出ですから」
「へーっ、そうなのかい。後でアマラ様のことを聞かせておくれよ」
「そうですね、いいですよ」

 うーん、聞いても信じなさそう。まぁ、信じそうな話だけしておこう。

「で、アマラ様が王様になってアルテア教を捨てろと仰ったのさ。神は人を救わない、なぜなら人は欲深いからだ。しかし悪魔は欲のある人間を好む。真に人を助けるのは神ではなく悪魔だ、と説き始めたもんだから最初はみんな圧政がまた始まるのかと怯えていたさ。でもアマラ様は悪魔達の力を使い人々に恵みをもたらしたのさ」
「悪魔が恵みを……?」
「そうさ。悪魔が魔獣を狩るから肉も安く手に入る。田畑もニーグリ様の巫女の御力で豊穣が約束され、孤児達は皆住む所を与えられ食糧も配給されている。領主は全員アマラ様に忠誠を誓った悪魔だからね、人間のような不正もない」

 そしてそのおばちゃんは如何にアマラが凄い人物かを語る。ただ問題がないわけじゃないと僕は感じた。アマラの本質は恐らく変わらない。彼はコミュニティの人間に与えるばかりで自立の協力はしていなかった。

 今回も同じで魔獣は悪魔が狩るのだから冒険者は不要になる。そうなると肉は悪魔が狩る以外に手に入れるのは困難になるだろう。そして田畑も常に豊穣が約束されているのならそこに発展はないはずだ。害虫対策すら必要なくなってるんだとさ。

 そして教育には力を入れておらず、ニーグリンドの人たちは今や飼い馴らされて悪魔無しでは成り立たない生活を送っているのではないだろうか。もしそうならハッキリ言って歪さしかない。

「特にニーグリ様に仕える巫女様はみんなの憧れだね。でも可愛らしい男しかなれないのはなんでかしらね?  あら、あんただったら巫女様になれるかもしれないね。おんたも改宗したらどうだい?」
「いえ、全力で遠慮します」

 僕は頭を下げ、そそくさと退散することにした。なんで巫女なのに男がやるのかさっぱり理解できない……。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

異世界で世界樹の精霊と呼ばれてます

空色蜻蛉
ファンタジー
普通の高校生の樹(いつき)は、勇者召喚された友人達に巻き込まれ、異世界へ。 勇者ではない一般人の樹は元の世界に返してくれと訴えるが。 事態は段々怪しい雲行きとなっていく。 実は、樹には自分自身も知らない秘密があった。 異世界の中心である世界樹、その世界樹を守護する、最高位の八枚の翅を持つ精霊だという秘密が。 【重要なお知らせ】 ※書籍2018/6/25発売。書籍化記念に第三部<過去編>を掲載しました。 ※本編第一部・第二部、2017年10月8日に完結済み。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...