転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった

angel

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第1章 シルヴァリオン

【13】 問題しか無いんですけどー!?

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唇に柔らかいものが触れてきたと思ったら、0距離で超絶イケメン皇子の顔があった。

これは…キス!?????

現世で18年、転生後の15年 合計33年も守り通したファーストキスが、超絶イケメンとはいえ男に奪われた。
唇がユックリと解放された後、腰に響くようなイケボで「好きだ…」と切なそうな瞳で言われるが、こっちはそれどころじゃない。

「ボクは男ですけど…」小声で言ってみると「わかってる問題ない」の返事が返ってくる。



いやいやいやいやいやいや!!問題しか無いんですけどー!?



シアーズ皇国は同性婚も認めていると聞いている、そういう面でも先進国だが、日本でもエーリス王国でも同性の恋愛は未だにマイノリティだ。

「愛してるんだ、私の皇子妃になってほしい」

いやいやいやいやいやいや!!あんたイッパイ婚約者いるんでしょ!?
ボクは王になってゲームクリアするんだから、皇子妃になんてなってる場合じゃないんですよ!?

「無理です」と断ると捨てられた犬のような顔をした。

いや反則でしょその顔、こっちが悪いみたいじゃないの。
ファーストキスを奪われたショックと親友になれてると思ってた男の行為に、不覚にも涙がこぼれてしまった。

背後にシアーズの夜景を背負ったチョーイケメンが眉間にシワを寄せ困ったような顔をした。





その後、ボクはリムジンで一人で皇子宮に帰らされてオーディンが戻ってくることはなかった。


次の日の朝もオーディンは帰ってきてなくて、ボクは黒服さんに促され一人で学園に登校した。
(断ったことショック受けてたみたいだな…)
断られたことなんて、ないのかもしれない。
でもファーストキスを男に奪われたボクもショックなんだ、被害者はこっちですけど。
オーディンがいない学園はひどく居心地が悪かった。
昼休み、いつもの部屋で昼食を食べているとき黒服さんに「オーディンは?」と聞くと王宮で仕事らしく今日は学園に来ないらしい。

(ホントかな…昨夜のことで顔会わせづらいからいいけど)
会わなかったら会わないで、どんどん気まずくならないだろうか?
できれば笑顔で『冗談だった』とか『ごめんごめん、お互い忘れて親友になろう』とか言ってくれないだろうか。

その日も次の日もオーディンは帰ってこず、お風呂もご飯も学園も一人ぼっちだった。
ボクはだんだんと腹が立ってきた。
(オーディンはボクに意地悪をしてるんだ)
学校に向かうリムジンの中でボクは黒服さんに昼食はいらないと告げた。
オーディンがいないならあそこで食べる必要もないのに、黒服さんがダメだと言う。

「そんな事言われる筋合いはない!ボクはボクのしたいようにするからほっといて!」怒りが爆発してしまった。


午前の授業を終え、食堂に行ってみた。
高等部専用の食堂は結構賑わっていた。
食券でも買うシステムなのかとウロウロしてたら、コックさんに『どれでも好きなの持っていっていいんだよ』と言われた。
無料のビュッフェスタイルのようだ、天国かよ。
お皿にイッパイ好きなのだけを盛り、窓際の空いてた席に座る。
周りの席を見ると、仲良さそうにおしゃべりしながら食べる生徒たち。
ボクはオーディンと一緒に楽しく食べてたことを思い出しシュンとなる。
(なんでこうなっちゃったんだろ)
留学してから友達が出来なくても平気だったけど、さすがに本当のボッチは堪える。
お皿の料理はまだ残ってたけど、食欲がなくなり片付けようと立ち上がると「ここいいかな?」と誰かがボクに話しかけてきた。

大きなその人は襟元の学年章の色を見ると最上級生のようだった。
座り直し「どうぞ」と言うと人懐っこい顔で笑ってくれた。

(これは友達になるチャンスでは―――?)

ボクは料理をつまみつつチラチラと隣の上級生を見る。
目が合うと「あ!それ美味しくないでしょ」とボクのフォークに刺さってるウインナーを指差す。
この食堂の美味しくないランキング1位なんだそうだ。

(この人にはボクが見えてるんだ…普通に会話してくれる嬉しいな)
この窓際の席がお気に入りだとか、これだけは食べたほうがいいランキングとか話は尽きない。
食べ終わってしまったボクがまだお話してたいなとモジモジしてたら、上級生がボクの左腕の半袖シャツをまくりあげた。
「ここ赤くなってるよ」指さされた場所は、自分では見えない腕の裏側だった。
(虫刺されかな…?)温暖なシアーズにはエーリスではいなかったダニや蚊がいるのかもしれないな。

楽しい昼休みだったけど、この日もオーディンは夜になっても帰ってこなかった。
赤くなってた腕に黒服さんに虫刺されの薬をもらって自分で塗った。
よく見ると内ももや背中にも赤い痕が見えてゾッとした。ボクは虫が大の苦手なのだ。
防虫剤的なものはないのかと聞くと、虫よけハーブを渡された。

明日学園に行く前に、布団と【タカハシサン】を日光に干そう。
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