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閑話1.社交界の噂
しおりを挟むユーリとアイリスが国外追放になった翌日。
噂は広まり、駆け落ちした二人の噂でもちきりだった。
愛の為に全てを捨てた二人は本当の真実の愛だと騒ぐ若い者は多かった。
それまでも叶わぬ恋に身を焦がした者は多かった。
しかし、そう言った場合男側が後から逃げるか、なかった事にしてとんずらする方が多いのだ。
最後は女性だけ噂のネタにされるのだが、最後まで愛を貫いたユーリの姿勢は賛美されてしかるべきだったし、騎士団の仕事の引継ぎもしっかり終えていた。
中途半端に自分の仕事を投げ出したわけでもないので、同僚や部下も心配はしても責める姿勢は見せなかったのだから、ユーリの評価は鰻登りだ。
そして騎士の鑑でもあるユーリにそこまで決意させたアイリスはとても魅力的な女性で、侯爵家の跡継ぎの座と天秤にかけるまでもないと言われる始末だった。
こうなればステンシル侯爵家は責められ、罵倒を浴びせられても仕方ない。
第二王子殿下に婚約破棄を突きつけられたのもイライザに原因があるのだと世間は信じ込んだのだった。
「本当に、ゲンキンな人達です事」
「解っていた事だがな」
王宮内の一室にてお茶を飲みながらため息をつく王妃は社交界の噂を集め、ため息をついていた。
「単純な方が多くて本当に助かりましたわ」
「これ程上手くいくとは思わなかった」
カップを片手に新聞を見ながら、考え込む。
「今頃国境を抜けた頃でしょうね」
「問題なくシメリス帝国に到着できるといいが」
「ユーリは聖騎士ですのよ?大丈夫ですわ…それに影の者に護衛をさせておりますわ」
騎士団団長であるユーリからすれば旅など慣れたものなので問題ないとは思うも心配する王妃。
「しかし、大それたことをしたものだ」
「あら?私は想定内ですわ。念の為に誓約書を保管して置いて良かったですわ」
引き出しから出したのはユーリとアイリスの婚約する誓約書だった。
一緒に保管されているのは二人が婚姻した証も置かれている。
「これで二人を引き裂く無粋な真似はできませんわね?」
「王妃よ、そなたも中々の腹は黒だな。近いうちに我が国はシメリス帝国と同盟を結ぶことになっているのだぞ」
「ですから、同盟を結ぶ前に国外追放をしたのです」
王妃は不敵に微笑みながらも目は冷たかった。
「イライザ嬢はご自分に全く非がないと思っているでしょうね?息子との婚約破棄も、昨日の一件も」
「だろうな」
今回の騒動が起きた原因でもある第二王子殿下の婚約破棄騒動。
それがすべての始まりだった。
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