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閑話2.二人の王子
しおりを挟むブリチア王国には二人の王子がいる。
第一王子であるクレイルと第二王子のルゴニス。
二人はとても対照的な性格をしているが決して仲が悪いわけではない。
物腰柔らかく、学問を愛するのクレイルに対して、剣術に優れたルゴニスは正反対ながらも共に競いながらも国を思う良き王子だった。
幼少の頃はとても仲が良かったが、その内王位継承権をめぐって争うようになった。
クレイルは立太子しているが、体が弱い。
その為、一部の家臣からはルゴニスを次代の王にとの声が上がっていた。
しかしブリチア王国では王家に限らず貴族等も長子が跡継ぎになる決まりがあった。
世継ぎ争いをしない為にこの法律ができたのだ。
余程の事がない限り覆す事ができないのだが、周りが争う中。
何時の間にか第一王子派と第二王子派の二つの派閥が生まれ、派閥同士の争いに二人は巻き込まれていた。
そして現在、クレイルとルゴニスが対立関係にあると噂が流れている。
***
すっかり冷めた紅茶を飲みながら部屋に飾ってある家族写真を見つめる。
「ルゴニスは少々直情的な所はありますが、性根がまっすぐな子です。兄弟で骨肉の争いをする程愚かではありませんし、王位に興味はありませんわ」
「ああ…だからこそ何故イライザ嬢の婚約を破棄したか。もっと穏便な方法があったはずだ」
少しばかり直情的な部分は欠点であるが貴族令嬢が婚約破棄をされるのは外聞が悪く、不名誉な事だと解っているのにも関わらず、こんな真似をした事に納得できなかった。
「真実の愛ですか…」
「何だ?」
「いいえ、ふと思ったのです」
貴族間の間で流行っている言葉だった。
ルゴニスも公の場で婚約破棄をした時に放った言葉でもある。
「何故、真実の愛だなんて言ったのでしょう」
「あの言葉か」
貴族の婚姻は政略結婚が多い。
中には例外もあるが、どうしても身分が邪魔をする。
貴族は権力もあるが義務もあるが、良好な関係を築いている貴族もいる。
形こそ違うが、愛の形であると二人も思っていた。
「真実の愛とは何だ?政略結婚で結ばれた愛は偽りなのか?」
「若い貴族の中では男女が恋に落ちて駆け落ちまで考えたと言う方がいたようですわ…ですが、家を捨てられなかった者は諦めたり、駆け落ちした二人も生活に耐え切れなくなったケースがあります」
大体は家から勘当された後、男性側がとんずらすることが多い。
ユーリのように計画的な駆け落ちができる方が稀なのだが、何故ルゴニスはあんな事を言ったのか。
「一緒にいたご令嬢と、最近親しくしているとは聞いていたが」
「だとしても、随分とねぇ?」
ルゴニスの性格上、ちゃんと話し合いをするはずなのにおかしいと思いながらも、真実はまだ隠れたままだった。
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