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第二章
5心の支え
しおりを挟む太陽の光が満ち、長らく咲かなかった聖花が咲き始めてしばらく。
ハクセンス王国では多くの花が咲き、作物にも恵まれて始めた頃、祭りが催された。
聖花が咲く頃に催される祭りだった。
「ああ、なんてありがたいのかしら」
「聖花を生きている間に生で見れるなんて」
「しかも女王陛下が祝いに出産した母親に聖花の造花を下さるとか」
聖花とは大変貴重な物であるが職人や魔導士が協力して作った造花にはわずかであるが魔力が込められている。
「ジュリア、見てごらん」
「はい」
「皆、本当に喜んでいる。聖花を見れることは幸福な事なんだ」
特に老人などは、死ぬ前に本物の聖花を見たいというのは夢だったが、その夢が叶い、造花までも貰えるとなれば天にも昇る気持ちだった。
「本当は聖花を生まれて来た赤ちゃんや、お母さんにプレゼントしたかったのだけど」
「それは無理だ…気持ちだけは伝わっているだろう」
聖花は多くのお祝いにも使われる。
特に命の誕生に聖花で特に白い百合を贈る事は祝福を与える行為だったが、聖花の数にも限りがあるのでよく似た造花を作ったのだ。
まだ圧倒的に数が足りず、今年は難しいのだった。
「何より聖花を咲かせることができただけでも素晴らしい事だ」
「そうかしら」
「ああ」
ジュリエットは聖女でなくなったにもかかわらず以前よりも聖女の力が強くなり、効率よく聖花を咲かせている。
せめて目で触れることができるようにと思いを込めた。
だが、ジュリエットは聖花にそれ程の価値を見出しているわけではなかった。
「聖花はそれ程のものでないわ」
「え?」
「確かに聖花は平和の象徴だけど。人の心にも聖なる花は咲くのだから」
国が安泰である。
幸せになれる花だと言われているが聖花が咲いていてもいなくとも関係ないと思っていた。
「幸福は聖花に与えてもらうものじゃない。自分で見つけなくては」
「そうだな。誰かに頼り誰かに幸せにしてもらうのは本当の幸せじゃない」
アルフレッド自身も聖花のありがたさを理解はしても絶対ではないと思っていた。
「ただ心の支え、神への信仰心は解ってやってくれ」
「ええ」
ジュリエットも神に縋りたい気持ちは痛いほどわかる。
希望を失い絶望を感じていたあの頃は何かに縋っていなければ生きて行けなかったから。
「きっと…」
ジュリエットが言葉を放とうとした時だった。
大きな地震が襲った。
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