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11.敵の前でも微笑みを
しおりを挟む気持ちを切り替え私は戦場に向かった。
「はー…」
扉の前で深呼吸をして、広間に入った。
私が入ると同時に視線は私に集中したけど気にすることはない。
前を向き背筋を伸ばして、中央に歩いて行く。
「アルデンテ侯爵令嬢ですわよ」
「本当にいらっしゃるなんて」
私を見る目は同情だったり嘲笑いだったりと様々だけど、この程度の視線で怯まない。
「ごきげんよう?素敵な舞踏会ですわね」
「ええ…ええそうですわね」
戸惑いながらも私の笑顔に返事をする令嬢。
彼女達は私が意気消沈しているかと思っていたのだろうけど、ここで暗い表情なんて見せるものか。
「お気の毒ですわね。アルデンテ侯爵令嬢」
「ご機嫌麗しゅうございますわ。ボンネス伯爵令嬢」
貴族派の伯爵令嬢で王族とは敵対する派閥の令嬢。
殿下に恋慕の情を抱き、私に対して今まで悪意を隠すことがなかった。
「何でも殿下は真実の愛を見つけられたとか。家臣としては喜ばしいのですが…長年連れ添った貴女様を正妃に留め置かなかったのは残念ですわ」
副音声が聞こえるわね。
遠回りに一切の情も無く捨てられて哀れだとも言いたいのだろう。
「殿下は本当に愛する人を見つけましたわ。妾や側妃は不要だと仰せでしたので。ですから万一側妃になる方は私よりも苦労なさいますわ。殿下は私にも幸せなって欲しいが為に側妃にされませんでしたの」
「なっ!」
遠回しに側妃は不幸になるだけ。
日陰の存在で哀れなだけだと言ってあげたわ。
ずっと殿下の側妃を狙っていた物ね。
「殿下は妃は一人しか娶らないそうですわ。その意味はご存じですわね?」
「えっ…ええ」
殿下の寵妃を狙っていた貴族令嬢は少なくない。
正妃よりも責任が少なく子供さえ生まれれば権力を得られると思っていたのだろうけど。
その代わり待っているのは修羅場のみ。
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公妾は修道院に送られてしまうのが暗黙の了解だった。
「殿下はお優しい方ですわ。ですから私もそのお気持ちに応えるつもりですの。御心配には及びませんわ」
「くっ…」
大勢の前で私がいかに哀れであるかを語りたかったのでしょうけど甘いわ。
ここで感情的になって泣くとでも?
そんな軟じゃないし、泣き名入りなんて情けない事をするわけがない。
「偉そうに…婚約解消になって婚約者がいないからおこぼれを貰う卑しい令嬢が!」
去ろうとする私に、暴言を吐かれてしまった。
一瞬私は立ち止まったのを良い事に彼女はニヤリと笑いながらこの場で辱めようとしているのが解った。
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