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10.その先
しおりを挟む国内の修道院にいては無理矢理連れ戻される可能性が高い。
ならば行くとしたら北の国が一番良いわ。
できるだけ俗世を離れて、静かに祈りながら過ごすのもいいかもしれない。
「これでも幼少期は、お父様と旅をしていたのよ。大丈夫…国を出ても生きていけるわ」
「お嬢様、私もお連れくださいませ」
「え?リィナを?」
修道院に入れば、結婚もできないし、神に仕えて生きていく。
まだ若いリィナを巻き込むような真似はしたくないし、彼女も貴族の娘。
縁談だって恵まれているのに。
「お嬢様お一人で国の外でなんて!私も行きますわ。北の国だろうと、修道院だろうとお供いたします」
「そう…じゃあ二人で行きましょう」
巻き込んでしまうのは申し訳ないけど、リィナが一緒であるなら心強いわ。
「ずっと王都の外へ出たいと思っていたの。色んな場所を旅して…」
「でしたら聖職者になって聖地巡礼の旅もいいですわ」
「そうね!」
私は国内にいれば何らかの理由で利用される可能性がある。
最悪の場合、侯爵家を降格させるために大臣達が動く可能性があるならば、その可能性を潰さなくては。
「お嬢様、私はずっと思っていました」
「何?」
「お嬢様はこれまで十分すぎる程頑張ってい参りました」
「リィナ…」
私の手を握りながら涙目で告げられた言葉に安堵した。
「正直、精神的もきつかったの…年相応ではないお妃教育。常に完璧でなくてはダメで、頑張れば頑張る程周りから冷たい目で見られる事もあったわ」
「お嬢様に完璧を求めながら理不尽です。ですが一番許せないのは殿下ですわ」
ずっと苦しくて投げ出したくなることが多かった。
でも、侯爵令嬢としての矜持が許さなかったし、私自身も役目を果たそうと必死に頑張って来た。
感情よりも理性で動いた結果、氷のような女だと言われるようにもなったわ。
完璧な王太子妃を求められながらも完璧であることを否定され解らなくなった。
殿下を支えるべく努力したのに結果的に殿下には堅苦しく見えたのは皮肉なものよね?
「殿下はお嬢様が陰でどれだけフォローをしていらしたのかご存じないのですわ。だから平然とこのように惨い事ができます」
「そうよね」
「困ればいいのですわ!お嬢様のありがたみを思い知るべきです」
氷のような女。
確かにそうかもしれないわ。
既に私は殿下を見限っているのだから。
酷い女よね?
だけど、こうなった以上はもう手助けは出来ないし、したいとも思わなくなっているの。
もう、関わりたくない。
これ以上振り回されたくないし取り乱したくないのが私の正直な思いだから。
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