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32.貿易
しおりを挟む南国でも作物が育たず日照りが続く土地ではできる物。
アクアパレス王国と対等に交渉できるような物があれば――。
「待ってください、イプシロン王国の主食は確か」
あったわ。
アクアパレス王国から食料以外で救う方法。
「どうしされました?」
「一方的な援助をするのではなく、あくまで貿易という形を取る方法があります」
「え?」
そうだわ。
何も食料を差し出さなくても別の方法があるじゃない。
「まさかそんな手をお使いになるとは」
「金銭のやり取りや、食料の援助は後から問題が生じます」
輸入に関しては食料が腐らない物が必要だろう。
イシド代表はともかく、他の官僚の言いたいことは即座に食べられる食料を望みながら他にも要求しないとは言い切れない。
だからこそ、一方的な支援をするのではない。
「まかさ労働を買うとは…斬新な方法を考えられましたね」
「これならば、双方ともに利益を得ることができますし、アクアパレス王国が過度な援助をしているとは思われません」
私が考えたのはイプシロン国の一部の土地に作物を作り、その作物を作る時に農家の方の労働を買うシステムだった。
利益の三割を彼等に提供する。
勿論金銭でやり取りをするのではなく取れた作物を差し出すのだ。
「輸入は危険が多く、その土地の方の口に合わない事が多いでしょう。海から海に運ぶ間に菌が繁殖する可能性もあります」
「確かに、現在感染病の原因は他国から渡って来た可能性もあります」
「ですから、その土地の農家の方々の労働をアクアパレス側が買うんです。そしてそこで取れた作物の一部を彼等に提供するんです」
他にも手つかずになっている土地をアクアパレス王国が買い取り権利を貰う。
その間、その土地で取れた穀物を使って飢えをしのいでもらえばいいわ。
「勅使の願いはあくまで飢えに苦しみ国民を救う事です。そしてもう一つ。感染病を救う案を提示すればいいのです」
「感染病を救う方法があるんですか…」
「五年前に我が国でも感染病により多くの人が死亡する事がありました。ですが、不思議な事にある領地だけは被害が少なかったのです」
病の原因を突き止めるきっかけになったのはお父様が視察に向かった時だった。
その土地では王都ではまずありえない状況だったからこそ病にかかったのだけど、お父様が機転を利かせた事で死亡率は低くなった。
もしかしたら、イプシロン国も同じではないかと思ったのだ。
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