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31.信仰心とは
しおりを挟む世界には多くの宗教がある。
信仰心は人の数だけあるけど、イプシロン首長連合国は人々の信仰に関して強引だと言うのは有名だった。
信仰とは誰かに強制するものではない。
自分達が信仰する神々以外は悪だと唱える官僚は表向きには心地よい言葉を言いながらも、異教徒を信仰する他民族を排除しているのだ。
私も異教徒を侮辱する気はない。
でも純粋な気持ちで信仰する人に詐欺まがいな真似をしてお金を奪う聖職者もいる。
だからこそ、慎重にならなくてはならなかった。
イプシロン連合首長国の代表は信仰心が厚い方ではあるが良い政治を行い、自国のハルモニア神を心から敬っていると聞く。
実際彼は政治と宗教は別として考えているとお父様から聞いたことがある。
「ジル、晩餐会は滞りなく終わったそうです」
「それはようございました」
「イプシロンの勅使は聖職者でありながら我が国の宗教を批難してまいりましたが。あくまで我らの信仰心と他国は別だと訴えました。異教徒を侮辱することは許されず、同盟国からの賛同を得られました」
宗教が異なれば考え方が異なる。
本当の意味で信仰心とは何か、宗教を大事にされている人は異教徒を貶すような真似はしないわ。
「ただ、晩餐会は問題なかったのですがその勅使が問題を起こしました」
「問題?」
「はい、イプシロン首長連合国の西の地では日照り続きで作物が育たず、流行病で民が苦しめられているのです。ハルモニア神の怒りだと勅使はおっしゃって」
「祟りと…」
「はい、我が国がハルモニア神を信仰しないからではと」
酷い言いがかりだわ。
信仰とは強制して行われるものなのか。
「代表は何と」
「イシド代表は数十年前から日照りが続ているので、神の怒りは関係ないと。病に関しても同様です」
イプシロンの代表は噂通りのお方のようだわ。
ただ問題はその下にいる者達が何が何でもアクアパレスに援助をさせたいようだわ。
「金銭的援助をすれば他国から何と言われるか…同盟国や従国ならば食料を差し出すことはできますが、これまで我が国に対して友好的ではない国でしたので難しいかと」
「食料を差し出してその後も援助を頼られて続けたらアクアパレスにも影響ができます」
他の国もと援助を頼んで来るだろうし。
「貿易は互いに利益がなくては成立しません」
「同等の対価となる物があれば良いのですが」
イプシロンは南部の国。
作物も育ちにくい土地で価値のある物はないだろうか。
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