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二 皇女アガーテについて
消えたマシュマロ 二
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にわかに、この事故あるいは事件が動き出したのは、わずか十五分後のことだった。「花鳥宮」の応接室のソファに腰かけて、アウローラはやや手持ち無沙汰にいた。むろん、フィリベルト帝とヴァルフリード、アガーテ皇女、そして侍女エリカも同席している。
応接室は豪華な調度品が皇家の富と権勢を示すかのごとく揃えられているものの、その華やかさとは裏腹に、室内の空気は重く淀んでいる。
「今ひとたび問おう。一体、何があったのだ」
フィリベルト帝は、あの晩餐のときとはうって変わって、今このときはまさに皇帝という威厳をたずさえた声で、傍付きの侍従に尋ねている。
「それが……」
侍従は言いにくそうに口ごもった。
「マグダレーネ様が、池に突き落とされたと主張なさっているのです」
「突き落とされた?」
ヴァルフリードは、筆で描いたような眉をひそめてみせ、怪訝を訴えた。
「誰にだ」
「それが、犯人の顔は見ていない、とのことだそうです」
そして、侍従はこうも付け加える。
「犯人は、確か、マシュマロを所持していたはずだ、とも証言なさっています」
侍従が言うにはこうだ。マシュマロは庭園にいる者たちに配られた菓子であり、室内の者たちにはビスケットが配られている、とのこと。
「つまり、室内にいた者はビスケットが配られていて、菓子が配られてから、事件が起こったという約三分後の短時間で、室内から池まで移動して犯行に及ぶのは、不可能だということだな」
「もう一つの可能性もあるのでは、殿下」
やめようかとも思ったのだが、アウローラはそこで口を差し挟んでしまった。
「どうした、アウローラ」
「犯人は、菓子二種類ともをあらかじめ所持していた可能性もある。それができるのは、主催者側です」
「なるほど」
ヴァルフリードはほっそりした顎に手を当ててうなずいた。
「総じてこうだな──庭園にいた者、あるいは主催者たちの中に、犯人がいる、と」
それを聞いて、フィリベルト帝が複雑な表情で顎髭を撫でた。
「ただちに、マシュマロを配られた、そして、配った者たちを全員、庭園の四阿に集めよ」
フィリベルト帝の指示が飛ぶと、侍従が慌ただしく命令を伝えに行った。
アウローラは気づいていた。菓子を配っていた人物の中には、むろんアガーテ皇女がいることを。
「私は、疑われているのでしょうか」
アガーテは部屋の隅で震えるような怯えた声をだした。傍にいたフィリベルト帝が無言で首を横に振る。
「父上、私は無実です。誓って、マグダレーネ様を突き飛ばしてなどいませんわ」
「分かっている。おまえがそのような皇家の名誉を傷つける真似をする愚かな子ではないと、父親の私は、一番よく知っている」
肩に父の手が置かれて、ようやくアガーテは安堵の短い息をついた。
「信じてくださってありがとうございます、父上」
「根拠もないのにはなから娘を疑う父がどこにいる」
その父娘の会話を、アウローラはそっと見守っていたが、ヴァルフリードの向ける視線はいささか異なっている。
壁に寄り掛かるようにして広く逞しい背中を預けていた彼は、黙したままアウローラを手招きした。アウローラが不審がって近寄ると、彼はその耳元に顔を寄せ、小声で囁いた。
「こうは言っているが、アガーテが本当に犯人だったらどうする」
柔らかい吐息がアウローラの首筋をくすぐったく撫でて、アウローラは軽く身震いした。
「あなた様は、疑っていらっしゃるの?」
アウローラがむっとして聞き返すと、ヴァルフリードはそうだと言うように首肯する。
「アガーテは皇太子候補の一人。マグダレーネ嬢はおれの妃候補の一人。同じく立場を争う身とあれば、政治的な動機がないとは言い切れないだろう」
アウローラは目を剥いて反論した。
「ヴァル様までアガーテ殿下を疑えとおっしゃるのです!?」
アウローラが声を荒げかけると、ヴァルフリードは薄い唇の前に人差し指を立てた。
「しっ。声を抑えてくれないか」
アウローラは声を呑んだ。部屋にはまだ、父娘がいるのだ。
「彼女が犯人だった場合、そんな彼女を庇ったきみの徳が疑われる。そして、そんなきみと懇意にしている、おれも」
ヴァルフリードがあまりにも自分勝手なことを言うので、アウローラは正面から彼を睨み据えた。
「殿下に私の交友関係をうんぬんされる筋合いはありませんわっ」
「そうか、そうだな、その通りだ」
ヴァルフリードは少し疲れたように苦笑する。
「いや、きみが言い切るなら、アガーテは無実なのだろう。きみが信じたアガーテを疑うことは、きみを疑うことになるものな」
アウローラはヴァルフリードがあっさり引き下がるのを意外に思ったが、ややあってから、にやりと笑いかける。
「弁護はお任せを。勝算がありますわ。真実へと導ける……ね」
「よし、名推理を期待しておこう」
ヴァルフリードも、アウローラと同じ不敵な笑みを唇に乗せた。
「ところで、さっき『ヴァル』と呼んでくれた」
──気づかれた。
「呼んでおりません」
「いや、きみの小鳥のような声が頭にこびりついて離れない」
「殿下の頭にこびりついているのは、妄言です」
「きみに一晩中こびりつきたいし、こびりつかれたい。奥までじっくりと……」
それこそ、砂糖菓子もかくやのこびりつく甘ったるい声だ。
「この下郎、皇帝陛下の御前ですわよっ」
♢
庭園の四阿には、およそ二十五名の人々が集められていた。マシュマロを配られた貴族たち。そして、マシュマロを配ったアガーテ皇女や、侍女たち。全員が頼りなさげに辺りをきょろきょろと見回している。
装飾の鳳凰が屋根上で誇らしげに佇んでいる四阿は、普段であれば貴族たちの憩いの場なのだろう。だが今は、裁きの場へと変貌を遂げていた。
やがて、着替えを終えたマグダレーネが、侍女に付き添われて四阿に姿を現した。まだ湿って重そうな髪を後ろで結い、今度は藤色のドレスに身を包んでいる。その頬は、怒りか冷えに紅潮しているらしい。
「マグダレーネ嬢」
フィリベルト帝が、努めて彼女の怒りをたしなめるような声で尋ねた。
「落ち着かれたか。何があったのか、話してくれないか」
「はい、陛下。この身に起こりましたことを包み隠さずお話いたします」
マグダレーネは、深呼吸を一つしてから話し始めた。
「私は、池のほとりであの美しい錦鯉たちを眺めておりました。そうしたら、背後からいきなり、誰かに突き飛ばされたのです」
「犯人の顔は見ていないと言っていたな」
ヴァルフリードが、紙に羽根ペンで証言を書き記しながら、平坦な口調で問いかける。
「ええ、見ておりません。後ろから突き飛ばされましたので」
マグダレーネは悔しそうに唇を噛んでいる。その唇は、池に落ちた直後からは血色が戻っていたが。
「ですが、犯人がマシュマロを持っていたことは確かですわ」
「なぜ、それが分かる」
「それは……」
マグダレーネは少しためらってから答えた。
「突き飛ばされる直前、池に白い何かが落ちるのが見えたのです。マシュマロだと思います。それが水面に浮いていまして……」
「それで?」
「私が池に落ちて、水から顔を上げたとき、そのマシュマロは、もう消えていました」
四阿がひとしきりのざわめきに包まれる。
「ですから、犯人が証拠隠滅のために持ち去ったのだと思われます」
マグダレーネは集まった人々を見回した。その視線が、ゆっくりとアガーテ皇女のところで止まる。
「あのう。アガーテ殿下は、客人に菓子を配る役目でしたわね」
たちまちに、アガーテの顔から血の気が引いていく。もちろん予期していた質問だろうが、こうして実際に言われるのとはわけが違うだろう。
「ということは……」
別の貴族がひそりと囁きだす。
「そうか。アガーテ皇女殿下もマシュマロを多く持っていらしたということか」
「まさか。皇女殿下が」
「皇太子妃候補のマグダレーネ様を排除するために?」
「皇位継承争いの一環か」
交わされる囁き声が次第に大きくなっていく。疑惑の目がアガーテへと向けられていく。
「違います!」
アガーテは必死に抗弁した。
「私は何もしていません! マグダレーネ様に危害を加えようなどという無用な疑いを招いたのは我が身の不徳のいたすところではございますが……」
「ですが、アガーテ殿下はマシュマロを持って私の一番近くにいらっしゃったでしょう」
「それは、あなたに挨拶をするために──」
「嘘をおっしゃらないでくださいませ!」
マグダレーネの声がガラスを石でひっかいたような軋みをあげた。
「あなた様が犯人では!? 皇位継承の邪魔をするためにこんなことを! そもそも、皇家への不敬となる可能性を承知で、皇女様を訴えるはずはございませんわ!」
マグダレーネの言い分はもっともだった。むやみに皇家の人間を疑えば、仮に無実だったとき、疑って冤罪をかけた方に罪が問われかねない。
「そんな。本当に何もしていませんわ。皆さま、信じてください……」
アガーテの声が消え入りかけた。フィリベルト帝は、苦渋の表情で娘アガーテを見つめている。できることなら娘の嫌疑を晴らしてやりたい、そんな顔だ。
「──お待ちください」
だから、アウローラがそこで初めて発言すると、全員が振り向いて、一斉にアウローラを見た。
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「それが……」
侍従は言いにくそうに口ごもった。
「マグダレーネ様が、池に突き落とされたと主張なさっているのです」
「突き落とされた?」
ヴァルフリードは、筆で描いたような眉をひそめてみせ、怪訝を訴えた。
「誰にだ」
「それが、犯人の顔は見ていない、とのことだそうです」
そして、侍従はこうも付け加える。
「犯人は、確か、マシュマロを所持していたはずだ、とも証言なさっています」
侍従が言うにはこうだ。マシュマロは庭園にいる者たちに配られた菓子であり、室内の者たちにはビスケットが配られている、とのこと。
「つまり、室内にいた者はビスケットが配られていて、菓子が配られてから、事件が起こったという約三分後の短時間で、室内から池まで移動して犯行に及ぶのは、不可能だということだな」
「もう一つの可能性もあるのでは、殿下」
やめようかとも思ったのだが、アウローラはそこで口を差し挟んでしまった。
「どうした、アウローラ」
「犯人は、菓子二種類ともをあらかじめ所持していた可能性もある。それができるのは、主催者側です」
「なるほど」
ヴァルフリードはほっそりした顎に手を当ててうなずいた。
「総じてこうだな──庭園にいた者、あるいは主催者たちの中に、犯人がいる、と」
それを聞いて、フィリベルト帝が複雑な表情で顎髭を撫でた。
「ただちに、マシュマロを配られた、そして、配った者たちを全員、庭園の四阿に集めよ」
フィリベルト帝の指示が飛ぶと、侍従が慌ただしく命令を伝えに行った。
アウローラは気づいていた。菓子を配っていた人物の中には、むろんアガーテ皇女がいることを。
「私は、疑われているのでしょうか」
アガーテは部屋の隅で震えるような怯えた声をだした。傍にいたフィリベルト帝が無言で首を横に振る。
「父上、私は無実です。誓って、マグダレーネ様を突き飛ばしてなどいませんわ」
「分かっている。おまえがそのような皇家の名誉を傷つける真似をする愚かな子ではないと、父親の私は、一番よく知っている」
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「こうは言っているが、アガーテが本当に犯人だったらどうする」
柔らかい吐息がアウローラの首筋をくすぐったく撫でて、アウローラは軽く身震いした。
「あなた様は、疑っていらっしゃるの?」
アウローラがむっとして聞き返すと、ヴァルフリードはそうだと言うように首肯する。
「アガーテは皇太子候補の一人。マグダレーネ嬢はおれの妃候補の一人。同じく立場を争う身とあれば、政治的な動機がないとは言い切れないだろう」
アウローラは目を剥いて反論した。
「ヴァル様までアガーテ殿下を疑えとおっしゃるのです!?」
アウローラが声を荒げかけると、ヴァルフリードは薄い唇の前に人差し指を立てた。
「しっ。声を抑えてくれないか」
アウローラは声を呑んだ。部屋にはまだ、父娘がいるのだ。
「彼女が犯人だった場合、そんな彼女を庇ったきみの徳が疑われる。そして、そんなきみと懇意にしている、おれも」
ヴァルフリードがあまりにも自分勝手なことを言うので、アウローラは正面から彼を睨み据えた。
「殿下に私の交友関係をうんぬんされる筋合いはありませんわっ」
「そうか、そうだな、その通りだ」
ヴァルフリードは少し疲れたように苦笑する。
「いや、きみが言い切るなら、アガーテは無実なのだろう。きみが信じたアガーテを疑うことは、きみを疑うことになるものな」
アウローラはヴァルフリードがあっさり引き下がるのを意外に思ったが、ややあってから、にやりと笑いかける。
「弁護はお任せを。勝算がありますわ。真実へと導ける……ね」
「よし、名推理を期待しておこう」
ヴァルフリードも、アウローラと同じ不敵な笑みを唇に乗せた。
「ところで、さっき『ヴァル』と呼んでくれた」
──気づかれた。
「呼んでおりません」
「いや、きみの小鳥のような声が頭にこびりついて離れない」
「殿下の頭にこびりついているのは、妄言です」
「きみに一晩中こびりつきたいし、こびりつかれたい。奥までじっくりと……」
それこそ、砂糖菓子もかくやのこびりつく甘ったるい声だ。
「この下郎、皇帝陛下の御前ですわよっ」
♢
庭園の四阿には、およそ二十五名の人々が集められていた。マシュマロを配られた貴族たち。そして、マシュマロを配ったアガーテ皇女や、侍女たち。全員が頼りなさげに辺りをきょろきょろと見回している。
装飾の鳳凰が屋根上で誇らしげに佇んでいる四阿は、普段であれば貴族たちの憩いの場なのだろう。だが今は、裁きの場へと変貌を遂げていた。
やがて、着替えを終えたマグダレーネが、侍女に付き添われて四阿に姿を現した。まだ湿って重そうな髪を後ろで結い、今度は藤色のドレスに身を包んでいる。その頬は、怒りか冷えに紅潮しているらしい。
「マグダレーネ嬢」
フィリベルト帝が、努めて彼女の怒りをたしなめるような声で尋ねた。
「落ち着かれたか。何があったのか、話してくれないか」
「はい、陛下。この身に起こりましたことを包み隠さずお話いたします」
マグダレーネは、深呼吸を一つしてから話し始めた。
「私は、池のほとりであの美しい錦鯉たちを眺めておりました。そうしたら、背後からいきなり、誰かに突き飛ばされたのです」
「犯人の顔は見ていないと言っていたな」
ヴァルフリードが、紙に羽根ペンで証言を書き記しながら、平坦な口調で問いかける。
「ええ、見ておりません。後ろから突き飛ばされましたので」
マグダレーネは悔しそうに唇を噛んでいる。その唇は、池に落ちた直後からは血色が戻っていたが。
「ですが、犯人がマシュマロを持っていたことは確かですわ」
「なぜ、それが分かる」
「それは……」
マグダレーネは少しためらってから答えた。
「突き飛ばされる直前、池に白い何かが落ちるのが見えたのです。マシュマロだと思います。それが水面に浮いていまして……」
「それで?」
「私が池に落ちて、水から顔を上げたとき、そのマシュマロは、もう消えていました」
四阿がひとしきりのざわめきに包まれる。
「ですから、犯人が証拠隠滅のために持ち去ったのだと思われます」
マグダレーネは集まった人々を見回した。その視線が、ゆっくりとアガーテ皇女のところで止まる。
「あのう。アガーテ殿下は、客人に菓子を配る役目でしたわね」
たちまちに、アガーテの顔から血の気が引いていく。もちろん予期していた質問だろうが、こうして実際に言われるのとはわけが違うだろう。
「ということは……」
別の貴族がひそりと囁きだす。
「そうか。アガーテ皇女殿下もマシュマロを多く持っていらしたということか」
「まさか。皇女殿下が」
「皇太子妃候補のマグダレーネ様を排除するために?」
「皇位継承争いの一環か」
交わされる囁き声が次第に大きくなっていく。疑惑の目がアガーテへと向けられていく。
「違います!」
アガーテは必死に抗弁した。
「私は何もしていません! マグダレーネ様に危害を加えようなどという無用な疑いを招いたのは我が身の不徳のいたすところではございますが……」
「ですが、アガーテ殿下はマシュマロを持って私の一番近くにいらっしゃったでしょう」
「それは、あなたに挨拶をするために──」
「嘘をおっしゃらないでくださいませ!」
マグダレーネの声がガラスを石でひっかいたような軋みをあげた。
「あなた様が犯人では!? 皇位継承の邪魔をするためにこんなことを! そもそも、皇家への不敬となる可能性を承知で、皇女様を訴えるはずはございませんわ!」
マグダレーネの言い分はもっともだった。むやみに皇家の人間を疑えば、仮に無実だったとき、疑って冤罪をかけた方に罪が問われかねない。
「そんな。本当に何もしていませんわ。皆さま、信じてください……」
アガーテの声が消え入りかけた。フィリベルト帝は、苦渋の表情で娘アガーテを見つめている。できることなら娘の嫌疑を晴らしてやりたい、そんな顔だ。
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