22 / 71
22.真相③
しおりを挟む
彼は私の問いをすぐさま答えてくれた。
「いいや、一人もそんな者はいなかった。
確かに神官達は普通より魔力が多かったが、一定以上ではない。それに知識も古い書物からのみ。精神力なんてないからこそ、くだらないことをやろうとしている王家に怯えたんだ。そして魔術を行なわない彼らは訓練なんてやったことはない。
最初にこの術は出鱈目過ぎるといっただろう?
彼らが掛けた魔術は子供が集団で思い思いに落書きしたようなもの。それが何かと言われても、大人はその絵を見ても分からないし、書いた子供達ももはや分かっていない。
以前魔術について話した時に、『要件を満たしかつ過酷な訓練に耐えた者しか魔術を行えない、いいや正しくは行ってはいけない』といった理由はこれだ。
これはもはや魔術とは言えないような幼稚な代物だが、ある意味その危険は我々が掛ける術以上だ。
なぜなら自分達が魔術を掛けた認識もないからこそ、その結果さえ予想もしていない。
その結果は…君がよく知っているだろう。
だからマイナスでは魔術は厳重に管理し、勝手に行うことを固く禁じているんだ」
ルカ様は眉を顰めて苦しそうな表情をする。
魔術に携わる者としてこんなふうに魔術が使われたのが辛いのだろうか。
「では彼ら程度でもたまたま魔術が発動したということですか…」
私を囲んだ神官達は複数人いた。
どの人も未熟だが、偶然が重なって最悪の結果を導き出したのだろうか。
そんなことがあるのだろうか…。
「そうだが、…正確に言えば違うとも言える。確かに彼らの愚かな行いがなかったらそもそも術は成立しなかった。だが彼らだけの力では術は掛からなかったと私は考えている」
彼らだけの力ではない?
では他に協力者がいたのね。
いったい誰がこんなことに手を貸したの…?
「では神官達とその協力者?が力を合わせて私に術を掛けたんですか?」
それならば王家が黒幕なんだろうか。
彼らなら秘密裏になにかしても驚かない。
自分達の為ならなんだってやりそうだ、いいえ、実際にやっているのだから。
王家への怒りが新たに湧いてくる。
「力を合わせたわけではない。…意図せずもう一つの力が加わってしまったというのが正しい表現だな。神官達もそして力を提供する形になってしまった者もお互いに全く気づいていない。
本当に…あり得ないことが起きてしまったんだ。私も最初は信じられなかった、こんな事が起こるなんて。だからマイナスから魔術に携わっている者達を呼び寄せ、慎重に何度も調べ直した。だがこの結論にしか辿り着かなかったんだ」
彼だけでなく、他の人達も一緒になって調べた結果ならそうなんだろう。
想像を超えた話を聞き続けていたからか、もう何を聞いても驚かない自信があった。
心が麻痺しているような感覚だったのかもしれない。
だから迷うことなく彼に訊ねた。
「教えてください、そのもう一つの力とはいったい何だったんですか…」
「いいや、一人もそんな者はいなかった。
確かに神官達は普通より魔力が多かったが、一定以上ではない。それに知識も古い書物からのみ。精神力なんてないからこそ、くだらないことをやろうとしている王家に怯えたんだ。そして魔術を行なわない彼らは訓練なんてやったことはない。
最初にこの術は出鱈目過ぎるといっただろう?
彼らが掛けた魔術は子供が集団で思い思いに落書きしたようなもの。それが何かと言われても、大人はその絵を見ても分からないし、書いた子供達ももはや分かっていない。
以前魔術について話した時に、『要件を満たしかつ過酷な訓練に耐えた者しか魔術を行えない、いいや正しくは行ってはいけない』といった理由はこれだ。
これはもはや魔術とは言えないような幼稚な代物だが、ある意味その危険は我々が掛ける術以上だ。
なぜなら自分達が魔術を掛けた認識もないからこそ、その結果さえ予想もしていない。
その結果は…君がよく知っているだろう。
だからマイナスでは魔術は厳重に管理し、勝手に行うことを固く禁じているんだ」
ルカ様は眉を顰めて苦しそうな表情をする。
魔術に携わる者としてこんなふうに魔術が使われたのが辛いのだろうか。
「では彼ら程度でもたまたま魔術が発動したということですか…」
私を囲んだ神官達は複数人いた。
どの人も未熟だが、偶然が重なって最悪の結果を導き出したのだろうか。
そんなことがあるのだろうか…。
「そうだが、…正確に言えば違うとも言える。確かに彼らの愚かな行いがなかったらそもそも術は成立しなかった。だが彼らだけの力では術は掛からなかったと私は考えている」
彼らだけの力ではない?
では他に協力者がいたのね。
いったい誰がこんなことに手を貸したの…?
「では神官達とその協力者?が力を合わせて私に術を掛けたんですか?」
それならば王家が黒幕なんだろうか。
彼らなら秘密裏になにかしても驚かない。
自分達の為ならなんだってやりそうだ、いいえ、実際にやっているのだから。
王家への怒りが新たに湧いてくる。
「力を合わせたわけではない。…意図せずもう一つの力が加わってしまったというのが正しい表現だな。神官達もそして力を提供する形になってしまった者もお互いに全く気づいていない。
本当に…あり得ないことが起きてしまったんだ。私も最初は信じられなかった、こんな事が起こるなんて。だからマイナスから魔術に携わっている者達を呼び寄せ、慎重に何度も調べ直した。だがこの結論にしか辿り着かなかったんだ」
彼だけでなく、他の人達も一緒になって調べた結果ならそうなんだろう。
想像を超えた話を聞き続けていたからか、もう何を聞いても驚かない自信があった。
心が麻痺しているような感覚だったのかもしれない。
だから迷うことなく彼に訊ねた。
「教えてください、そのもう一つの力とはいったい何だったんですか…」
176
あなたにおすすめの小説
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
カメリア――彷徨う夫の恋心
来住野つかさ
恋愛
ロジャーとイリーナは和やかとはいえない雰囲気の中で話をしていた。結婚して子供もいる二人だが、学生時代にロジャーが恋をした『彼女』をいつまでも忘れていないことが、夫婦に亀裂を生んでいるのだ。その『彼女』はカメリア(椿)がよく似合う娘で、多くの男性の初恋の人だったが、なせが卒業式の後から行方不明になっているのだ。ロジャーにとっては不毛な会話が続くと思われたその時、イリーナが言った。「『彼女』が初恋だった人がまた一人いなくなった」と――。
※この作品は他サイト様にも掲載しています。
【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。
大森 樹
恋愛
【短編】
公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。
「アメリア様、ご無事ですか!」
真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。
助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。
穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで……
あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。
★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
それは確かに真実の愛
宝月 蓮
恋愛
レルヒェンフェルト伯爵令嬢ルーツィエには悩みがあった。それは幼馴染であるビューロウ侯爵令息ヤーコブが髪質のことを散々いじってくること。やめて欲しいと伝えても全くやめてくれないのである。いつも「冗談だから」で済まされてしまうのだ。おまけに嫌がったらこちらが悪者にされてしまう。
そんなある日、ルーツィエは君主の家系であるリヒネットシュタイン公家の第三公子クラウスと出会う。クラウスはルーツィエの髪型を素敵だと褒めてくれた。彼はヤーコブとは違い、ルーツィエの嫌がることは全くしない。そしてルーツィエとクラウスは交流をしていくうちにお互い惹かれ合っていた。
そんな中、ルーツィエとヤーコブの婚約が決まってしまう。ヤーコブなんかとは絶対に結婚したくないルーツィエはクラウスに助けを求めた。
そしてクラウスがある行動を起こすのであるが、果たしてその結果は……?
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
行ってらっしゃい旦那様、たくさんの幸せをもらった私は今度はあなたの幸せを願います
木蓮
恋愛
サティアは夫ルースと家族として穏やかに愛を育んでいたが彼は事故にあい行方不明になる。半年後帰って来たルースはすべての記憶を失っていた。
サティアは新しい記憶を得て変わったルースに愛する家族がいることを知り、愛しい夫との大切な思い出を抱えて彼を送り出す。
記憶を失くしたことで生きる道が変わった夫婦の別れと旅立ちのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる