13 / 85
13.それぞれの決断②
しおりを挟む
~侍女長視点~
宰相様から竜王様と番様の状況が説明された。
なんという悲劇でしょうか。獣人にとって番と巡り合うことは約束された幸せのはずなのに…。
人間である番様と竜王様が『番』なのにすれ違っていることを考えると涙が出てきてしまう。
「宰相様、私は何をすれば宜しいでしょうか?」
「君には番様付きの侍女を選んで欲しい。優秀でかつ信頼が置ける、優しい者を選んでくれ。人間である番様に寄り添うことが出来るようにな。
番様は竜王様の番だが人間なので獣人の本能はないから、無条件に竜王様に引きつけられることがないだろう。
だから婚姻を結ぶその日までにさり気なく竜王様の素晴らしさを番様にお伝えして、まだ見ぬ婚約者に愛情を抱くように仕向けて欲しい」
優秀な侍女達はたくさんいるので問題はない。けれども宰相様からの要望の後半部分は難しいものだ。
人の気持ちはその人のもの、こちらの思うように気持ちを動かしてくれるか分からない。
それに番様はまだ幼い、信頼する親の言葉などに影響されやすいはずだ。
「番様はまだ六歳とお聞きしました。ご家族と頻繁に会っていたら、どんなに竜王様が素晴らしい方だとお話ししていても、自分に寄り添ってくれるご家族の方に関心がいってしまうのでないでしょうか?
ご家族から聞く外の世界に戻りたくなって、離宮に連れて来た竜王様を恨むようになってしまうやもしれません。
…はぁ、難しいかもしれませんね」
おもわず思っている事を正直に口に出してしまった。
『家族』に対して思うところがあった訳ではない。ただ、まだ見ぬ婚約者に気持ちを向けさせる難しさを伝えたかっただけだった。
宰相様は腕を組みながら『うむ、そうか…』と黙り込んでしまう。
暫くすると宰相様から追加の指示が話された。
「ご家族との面会は当分の間控えてもらおう。確かに幼い番様にとって家族の言葉や存在は重いはずだ。
もし家族が娘と一緒に暮らせぬ不満などを番様の耳に入れたら、竜王様の印象も悪くなり、婚姻後も愛を育めんかもしれん。そうなれば竜王様の狂気は誰にも止められなくなる」
宰相様から出た言葉に素直に頷くことは出来なかった。
そこまでしなくても…と思ってしまい、やんわりと反対意見を告げる。
「ですが番様はまだ六歳です、ご家族と会えないなど耐えられないかもしれません。
ご家族にしっかりと言い含めてから番様と会うようにすれば良いのではないでしょうか?」
「万が一にも失敗など許されんのだ!これは竜王様の為だけではない、番様のお命も掛かっているのだぞ。
それを決して忘れぬでないぞ。
我々は番様と竜王様に番としての幸せな人生を歩んでもらうのが使命なのだ」
宰相様の言葉が胸に突き刺さる。
私だって竜王様と番様の幸せを望んでいる。ただ…少しだけ幼い番様のお心を心配しただけだ。
子を持つ親として…。
だがその心配に蓋をすることにする。
それは揺らぐことのない忠誠心を優先させた結果だった。
一番大切なのはお二人が番としてお幸せになることだわ。
その為には心を鬼にして僅かな不安要素も取り除きましょう。
その代わりに番様がお淋しいと感じないように誠心誠意お仕えしましょう。
自分に任せられた仕事の重圧に身が引き締まる思いがする。
「承知いたしました。侍女達にもしかっりと宰相様のお考えを言い含め、番様のお世話にあたらせましょう。
お任せください、番様が10年後に竜王様のお隣に立てるようにいたします」
私の気迫に満ちた返事を聞き、宰相様は満足げにその場を後にした。
これから忙しくなるが、可愛らしい番様に仕える幸運に気分は高揚していた。
宰相様から竜王様と番様の状況が説明された。
なんという悲劇でしょうか。獣人にとって番と巡り合うことは約束された幸せのはずなのに…。
人間である番様と竜王様が『番』なのにすれ違っていることを考えると涙が出てきてしまう。
「宰相様、私は何をすれば宜しいでしょうか?」
「君には番様付きの侍女を選んで欲しい。優秀でかつ信頼が置ける、優しい者を選んでくれ。人間である番様に寄り添うことが出来るようにな。
番様は竜王様の番だが人間なので獣人の本能はないから、無条件に竜王様に引きつけられることがないだろう。
だから婚姻を結ぶその日までにさり気なく竜王様の素晴らしさを番様にお伝えして、まだ見ぬ婚約者に愛情を抱くように仕向けて欲しい」
優秀な侍女達はたくさんいるので問題はない。けれども宰相様からの要望の後半部分は難しいものだ。
人の気持ちはその人のもの、こちらの思うように気持ちを動かしてくれるか分からない。
それに番様はまだ幼い、信頼する親の言葉などに影響されやすいはずだ。
「番様はまだ六歳とお聞きしました。ご家族と頻繁に会っていたら、どんなに竜王様が素晴らしい方だとお話ししていても、自分に寄り添ってくれるご家族の方に関心がいってしまうのでないでしょうか?
ご家族から聞く外の世界に戻りたくなって、離宮に連れて来た竜王様を恨むようになってしまうやもしれません。
…はぁ、難しいかもしれませんね」
おもわず思っている事を正直に口に出してしまった。
『家族』に対して思うところがあった訳ではない。ただ、まだ見ぬ婚約者に気持ちを向けさせる難しさを伝えたかっただけだった。
宰相様は腕を組みながら『うむ、そうか…』と黙り込んでしまう。
暫くすると宰相様から追加の指示が話された。
「ご家族との面会は当分の間控えてもらおう。確かに幼い番様にとって家族の言葉や存在は重いはずだ。
もし家族が娘と一緒に暮らせぬ不満などを番様の耳に入れたら、竜王様の印象も悪くなり、婚姻後も愛を育めんかもしれん。そうなれば竜王様の狂気は誰にも止められなくなる」
宰相様から出た言葉に素直に頷くことは出来なかった。
そこまでしなくても…と思ってしまい、やんわりと反対意見を告げる。
「ですが番様はまだ六歳です、ご家族と会えないなど耐えられないかもしれません。
ご家族にしっかりと言い含めてから番様と会うようにすれば良いのではないでしょうか?」
「万が一にも失敗など許されんのだ!これは竜王様の為だけではない、番様のお命も掛かっているのだぞ。
それを決して忘れぬでないぞ。
我々は番様と竜王様に番としての幸せな人生を歩んでもらうのが使命なのだ」
宰相様の言葉が胸に突き刺さる。
私だって竜王様と番様の幸せを望んでいる。ただ…少しだけ幼い番様のお心を心配しただけだ。
子を持つ親として…。
だがその心配に蓋をすることにする。
それは揺らぐことのない忠誠心を優先させた結果だった。
一番大切なのはお二人が番としてお幸せになることだわ。
その為には心を鬼にして僅かな不安要素も取り除きましょう。
その代わりに番様がお淋しいと感じないように誠心誠意お仕えしましょう。
自分に任せられた仕事の重圧に身が引き締まる思いがする。
「承知いたしました。侍女達にもしかっりと宰相様のお考えを言い含め、番様のお世話にあたらせましょう。
お任せください、番様が10年後に竜王様のお隣に立てるようにいたします」
私の気迫に満ちた返事を聞き、宰相様は満足げにその場を後にした。
これから忙しくなるが、可愛らしい番様に仕える幸運に気分は高揚していた。
264
あなたにおすすめの小説
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
悪役令嬢なので最初から愛されないことはわかっていましたが、これはさすがに想定外でした。
ふまさ
恋愛
──こうなることがわかっていれば、はじめから好きになんてならなかったのに。
彩香だったときの思いが、ふと蘇り、フェリシアはくすりと笑ってしまった。
ありがとう、前世の記憶。おかげでわたしは、クライブ殿下を好きにならずにすんだわ。
だからあるのは、呆れと、怒りだけだった。
※『乙女ゲームのヒロインの顔が、わたしから好きな人を奪い続けた幼なじみとそっくりでした』の、ifストーリーです。重なる文章があるため、前作は非公開とさせていただきました。読んでくれたみなさま、ありがとうございました。
【完結】消えた姉の婚約者と結婚しました。愛し愛されたかったけどどうやら無理みたいです
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベアトリーチェは消えた姉の代わりに、姉の婚約者だった公爵家の子息ランスロットと結婚した。
夫とは愛し愛されたいと夢みていたベアトリーチェだったが、夫を見ていてやっぱり無理かもと思いはじめている。
ベアトリーチェはランスロットと愛し愛される夫婦になることを諦め、楽しい次期公爵夫人生活を過ごそうと決めた。
一方夫のランスロットは……。
作者の頭の中の異世界が舞台の緩い設定のお話です。
ご都合主義です。
以前公開していた『政略結婚して次期侯爵夫人になりました。愛し愛されたかったのにどうやら無理みたいです』の改訂版です。少し内容を変更して書き直しています。前のを読んだ方にも楽しんでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる