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令嬢達に『ちょっと通してね』と優しく声を掛けながら、私の方へとやって来るライアン。
その優しい声音になぜか苛立ちを覚える。
……なぜに私は苛立っているのかしら??
だって私は本当の恋人ではないのに…。
……うーん、なんでだろう。
首を傾げながら考えていると、自分がなんで苛立っているかすぐに理解する。
彼の後ろにはぞろぞろとついて来る令嬢達の姿があった。
私は彼が彼女達に向けた優しい声音に苛立っていたのではなく、厄介な集団をこちらに引き連れてきたことをたぶん怒っているのだ。
ああそうか、それなら納得だわ。
ボンっと左の掌を右手の拳で叩き、うんうんと自分自身の考えに納得していると、彼がすぐ目の前に立っていた。
「ケティ?また思考が斜めうえを行っているのかな?」
「いいえ、そんなことはないわ。いつも通りに私の思考は正常よ、ライ」
彼はいつもとは違って丁寧な口調で話し掛けてくる。
一応人前では、私に対してもぞんざいな口調は出さないのだ。
「はっはは、………いつも通りか」
笑っているが、その目は笑っていない。
ライは『要注意』という感じで、私を見つめてくる。
まったく、失礼ね。私はちゃんと通常運転よ。
つまり正常で、おかしなことなんて考えていないわ。
「その間はなにかしら?」
「ケティが思っている通りの間だよ。俺には愛しい人がなにを考えているのか手に取るように分かっているけど、君は更にそのうえを行くからな。だから気をつけているんだ」
ライアンの言葉に周りの令嬢達から叫び声があがる。
『キャー、やめてー』
『ライアン様、目を覚ましてください!』
『そんな女に騙されてはいけません!』
――本当に煩い。
騙していないし、そんな女呼ばわりされるなんて心外だ。
ちらっとライアンを見るが、令嬢達の言葉を気にしている様子はない。
それどころかヘラヘラと嬉しそうな表情をしている。
こいつ、自分がモテてニヤけてやがる…。
湖に沈める?そんなの甘いわ。
…次は底なし沼だわ。
あれっ?でもそんなのどこにあるかしら…。
それは後で調べることにしよう。それよりもまずは、この状況を正確に把握しなければいけない。
なにがメリットだというのだ。
私は相変わらずモテない。
それなのに彼に熱を上げている令嬢達は私という存在を恋のスパイスにして、ますます燃え上がっている。
これでは、私のほうがライアンの踏み台になっているではないか。
ブッちん……。
私の中で何かが豪快に切れる音がした。
「ライはこの状況をどう思っているの?」
怒りを隠して、完璧な笑顔を浮かべて優しい声で尋ねる。
「…あ、なんていうか…。まあ、嬉しいかな」
「この状況が嬉しいということは、あなたの周りにいる令嬢達の言葉も気にならないという事で良いのかしら?この理解で間違っていない?」
念のためもう一度尋ねる。
「気になるというよりは、外堀を固めるのに役立っているというか…。あっ、でも、自力でちゃんとしようとは思っているからな。ちゃんとビシッと決める用意はしているから勘違いしないでくれ」
なんの外堀を埋めるのに役立っているというのか。
えっと…私を踏み台にして更にモテようとしている?
自力でって、自分もこうして私のことをうまく利用しているってこと?
ビシッと決めるってなにを?
意味が分からないから、とりあえずこの言葉は聞き流すことにしよう。きっと問題はないはずだ。
つまりは踏み台として利用しているってことでほぼ決定だ。
「俺が隣りにいて欲しいのは生涯、ケティだけだからな。だから外野がなんと言おうと笑って聞き流してくれ」
「ライ、それ本気なのね…」
『ずっと自分がモテ続ける為に私を利用する』という事なのかと最終確認の言葉を告げる。
「もちろん俺は本気だ!」
ライアンは私の問いにきっぱりと言い切った。
彼の気持ちを私はよく理解した。
そっちがその気なら、私だってやり返すまでだ。
「ライアン・グレシャム。もう恋人をやめるわ、ただの幼馴染に戻りましょう。
これからは気安い口調もやめてね。用がある時は、その周りにいる令嬢達に接するように礼儀正しく話し掛けて頂戴。というか、もう踏み台にできない私に用事なんてないでしょうけど…。では失礼!」
「えっ?なに、いきなり??
恋人をやめるってどういうことだよ?!
ちょっと待てちゃんと話そう、ケティ!」
私は言いたいことをビシッと告げると、すぐに彼に背を向けて歩き出した。
後ろから焦って叫んでいる彼の声は聞こえてきた。
ちょっとだけ振り返ったけれど、目に入ったのは令嬢達に抱きつかれているライアンの姿だった。
騎士なのだから、非力な令嬢達なんてどうにでも出来るはずなのにしない。
それが彼の答えだと知って、ちょっぴり切なかった。
胸がしくしくと痛むのはどうしてだろう。
大切な幼馴染をなくしてしまったからかな…。
それともモテる機会がなくなったからなのかな?
きっと後者なんだろう。
悲しいことに、私は自分が思っていた以上に結婚を焦っていることを知ってしまった。
*********************
(作者のひとり言)
【思春期のふたり】
『ケイト…嬢、あのさ…』
『なにその言い方?』
『ほら、俺達もう子供じゃないだろう?だからちゃんとしようかと思って。その…子供の延長じゃなくて、大人への階段っていうのか。その…登りたいかなって』
勇気を出すライ。
だがケティはその勇気の意味に気づかない。
『なんかそんな他人行儀な呼び方嫌だな。いつも通りでいいわよ、ライ』
――それって、このままお互いに特別を続けて良いってことだよな…きっと。
『分かった。これからずっとケティだけにはこの乱暴な口調をやめないでいるからなっ!』
赤面しながら、嬉しさを隠すようにぞんざいな口調で言葉を返すライ。
『うん。ライっぽくて、ホッとするわ』
普段通りに戻ったライに笑顔を返すケティ。
お互いの認識の違いには全く気づかない二人だった。
その優しい声音になぜか苛立ちを覚える。
……なぜに私は苛立っているのかしら??
だって私は本当の恋人ではないのに…。
……うーん、なんでだろう。
首を傾げながら考えていると、自分がなんで苛立っているかすぐに理解する。
彼の後ろにはぞろぞろとついて来る令嬢達の姿があった。
私は彼が彼女達に向けた優しい声音に苛立っていたのではなく、厄介な集団をこちらに引き連れてきたことをたぶん怒っているのだ。
ああそうか、それなら納得だわ。
ボンっと左の掌を右手の拳で叩き、うんうんと自分自身の考えに納得していると、彼がすぐ目の前に立っていた。
「ケティ?また思考が斜めうえを行っているのかな?」
「いいえ、そんなことはないわ。いつも通りに私の思考は正常よ、ライ」
彼はいつもとは違って丁寧な口調で話し掛けてくる。
一応人前では、私に対してもぞんざいな口調は出さないのだ。
「はっはは、………いつも通りか」
笑っているが、その目は笑っていない。
ライは『要注意』という感じで、私を見つめてくる。
まったく、失礼ね。私はちゃんと通常運転よ。
つまり正常で、おかしなことなんて考えていないわ。
「その間はなにかしら?」
「ケティが思っている通りの間だよ。俺には愛しい人がなにを考えているのか手に取るように分かっているけど、君は更にそのうえを行くからな。だから気をつけているんだ」
ライアンの言葉に周りの令嬢達から叫び声があがる。
『キャー、やめてー』
『ライアン様、目を覚ましてください!』
『そんな女に騙されてはいけません!』
――本当に煩い。
騙していないし、そんな女呼ばわりされるなんて心外だ。
ちらっとライアンを見るが、令嬢達の言葉を気にしている様子はない。
それどころかヘラヘラと嬉しそうな表情をしている。
こいつ、自分がモテてニヤけてやがる…。
湖に沈める?そんなの甘いわ。
…次は底なし沼だわ。
あれっ?でもそんなのどこにあるかしら…。
それは後で調べることにしよう。それよりもまずは、この状況を正確に把握しなければいけない。
なにがメリットだというのだ。
私は相変わらずモテない。
それなのに彼に熱を上げている令嬢達は私という存在を恋のスパイスにして、ますます燃え上がっている。
これでは、私のほうがライアンの踏み台になっているではないか。
ブッちん……。
私の中で何かが豪快に切れる音がした。
「ライはこの状況をどう思っているの?」
怒りを隠して、完璧な笑顔を浮かべて優しい声で尋ねる。
「…あ、なんていうか…。まあ、嬉しいかな」
「この状況が嬉しいということは、あなたの周りにいる令嬢達の言葉も気にならないという事で良いのかしら?この理解で間違っていない?」
念のためもう一度尋ねる。
「気になるというよりは、外堀を固めるのに役立っているというか…。あっ、でも、自力でちゃんとしようとは思っているからな。ちゃんとビシッと決める用意はしているから勘違いしないでくれ」
なんの外堀を埋めるのに役立っているというのか。
えっと…私を踏み台にして更にモテようとしている?
自力でって、自分もこうして私のことをうまく利用しているってこと?
ビシッと決めるってなにを?
意味が分からないから、とりあえずこの言葉は聞き流すことにしよう。きっと問題はないはずだ。
つまりは踏み台として利用しているってことでほぼ決定だ。
「俺が隣りにいて欲しいのは生涯、ケティだけだからな。だから外野がなんと言おうと笑って聞き流してくれ」
「ライ、それ本気なのね…」
『ずっと自分がモテ続ける為に私を利用する』という事なのかと最終確認の言葉を告げる。
「もちろん俺は本気だ!」
ライアンは私の問いにきっぱりと言い切った。
彼の気持ちを私はよく理解した。
そっちがその気なら、私だってやり返すまでだ。
「ライアン・グレシャム。もう恋人をやめるわ、ただの幼馴染に戻りましょう。
これからは気安い口調もやめてね。用がある時は、その周りにいる令嬢達に接するように礼儀正しく話し掛けて頂戴。というか、もう踏み台にできない私に用事なんてないでしょうけど…。では失礼!」
「えっ?なに、いきなり??
恋人をやめるってどういうことだよ?!
ちょっと待てちゃんと話そう、ケティ!」
私は言いたいことをビシッと告げると、すぐに彼に背を向けて歩き出した。
後ろから焦って叫んでいる彼の声は聞こえてきた。
ちょっとだけ振り返ったけれど、目に入ったのは令嬢達に抱きつかれているライアンの姿だった。
騎士なのだから、非力な令嬢達なんてどうにでも出来るはずなのにしない。
それが彼の答えだと知って、ちょっぴり切なかった。
胸がしくしくと痛むのはどうしてだろう。
大切な幼馴染をなくしてしまったからかな…。
それともモテる機会がなくなったからなのかな?
きっと後者なんだろう。
悲しいことに、私は自分が思っていた以上に結婚を焦っていることを知ってしまった。
*********************
(作者のひとり言)
【思春期のふたり】
『ケイト…嬢、あのさ…』
『なにその言い方?』
『ほら、俺達もう子供じゃないだろう?だからちゃんとしようかと思って。その…子供の延長じゃなくて、大人への階段っていうのか。その…登りたいかなって』
勇気を出すライ。
だがケティはその勇気の意味に気づかない。
『なんかそんな他人行儀な呼び方嫌だな。いつも通りでいいわよ、ライ』
――それって、このままお互いに特別を続けて良いってことだよな…きっと。
『分かった。これからずっとケティだけにはこの乱暴な口調をやめないでいるからなっ!』
赤面しながら、嬉しさを隠すようにぞんざいな口調で言葉を返すライ。
『うん。ライっぽくて、ホッとするわ』
普段通りに戻ったライに笑顔を返すケティ。
お互いの認識の違いには全く気づかない二人だった。
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※この作品は、小説家になろう様にも掲載しています。
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