4 / 10
4
僕――ケイレブの目の前には頭を抱えて唸っている男がいる。
彼は姉の幼馴染のライアン・グレシャムだ。
姉とのことで凹むことがあった後には、こうやって僕の部屋で彼は落ち込むのだ。
迷惑なことこのうえない。
でもそんなことは言わない。
僕はまだ12歳だけれども、精神年齢は彼よりも上だと思っているから。
8つ年が離れているライアンは、昔から僕のことを本当の弟のように可愛がってくれている。
頼りになるし優しい彼のことを、僕も好きだ。
そんな彼は、僕の姉ケイトのことを大好きなのだが、その気持ちは姉には全く伝わっていない。
本人なりに頑張っているようだが、空回り気味だ。
これは姉が鈍すぎるのもあるが、彼にもかなり問題はあると思う。
「僕の部屋でいじけられても困ります」
「………」
「…ねえ、ライアンったら無視しないでください」
かなりの時間落ち込んでいたから、もうそろそろ大丈夫かと思って声を掛けてみるけど、返事はない。
顔を上げてもくれない。
大人なのに、この態度でいいのだろうか…。
「ねえライアン、もういい加減に、」
「…違う、ちゃんと呼んでくれ」
顔は下を向いたままだけど、僕の言葉を遮りライアンが言葉を発する。
「はいはい、分かりました。義兄上、そろそろ何があったか話してくれませんか?」
「ああ、分かった。あのな…」
そう言ってライアンは今日、姉との間であったやり取りを詳細に語りだした。
ちなみに『義兄上』と呼んでくれと言われたのは、僕がまだ小さい頃のこと。
『でもライアンはぼくの兄ではないですよ?』
『大丈夫、未来の義兄上だから問題ない』
『姉上とこんやくしたのですか?そんな話はきいていませんが…』
『そ、それはこれからだが……。つまりはあれだ、…そう、備えあれば憂いなしだ!だから『義兄上』と呼んでくれ』
そのことわざは使い方が間違っていませんか?と指摘するべきか悩んだけど、言わないでおいた。
問題はそこではないのだから、指摘しても意味はない。
『……では二人だけのときはそう呼びます』
僕は幼いながらも、彼が姉を大好きなのを見抜いていたので合わせてあげた。
だってそうしないと、落ち込んじゃうから…。
彼は姉が絡むととても面倒くさい人になる。それ以外は本当に優秀で良い人なのに、本当に残念だ。
ライアンから落ち込んだ経緯を聞き終わった感想は『なにをやってるのですか…』しかなかった。
どうしてこの二人は簡単なことを複雑にするのだろうか。
ひとりひとりだと至ってまともなのに、二人だとありえない化学反応を起こすのだ。
もう僕の理解を軽く超えている。
「どうして姉上が誤解するような言葉を発するんですか?にやけながら『まあ、嬉しいかな』なんて言ったら、まるで令嬢達に群がられているのを喜んでいて、姉上が酷い言葉を浴びせられるのは構わないと言っているようにしか聞こえません。
それに姉上から何度も確認されているのに、『本気だ』なんて念押しまでして…」
僕の指摘にライアンは真っ青になる。
どうやら自分の想いが全く伝わっていないどころか、全然反対の意味で伝わっていたことが分かったらしい。
「えっ、だが、そんな意味じゃない」
「おそらく義兄上は、周りの令嬢達を『俺とケイトの仲を公認する言葉を発する応援部隊』くらいに思っていたのでしょうね。
でもそんなふうに聞こえていたのは義兄上だけです。誰もそんなふうには聞こえません」
「ケティはだから、別れるって言ったのか…」
愕然とするライアンに構わず、話しを続ける。
「そうですね。付き合うに至った前段階でもかなり問題はありましたが、この際それは考えるのはやめておきましょう。今回は義兄上の話し方と態度にかなり問題がありましたから、これは当然の結果と言えるでしょう」
「……っ…一体どうすればいいんだ……」
僕の両肩をガシッと掴んで縋ってくるのは本当に勘弁してほしい。
こうしてガンガンと肩を揺さぶら瞬間にも、僕の脳細胞はご臨終しているのですよ。
日頃の優秀さをどこに置き忘れてきたんですかとライアンに問いただしたくなる。
しかし経験上それは無駄だと分かっているので、『離してください』と僕は呟くだけにしておいた。
****************
【お知らせ】
近況ボードに新しいお知らせがございます!
そちらの方も読んでいただけると幸いですヽ(=´▽`=)ノ
彼は姉の幼馴染のライアン・グレシャムだ。
姉とのことで凹むことがあった後には、こうやって僕の部屋で彼は落ち込むのだ。
迷惑なことこのうえない。
でもそんなことは言わない。
僕はまだ12歳だけれども、精神年齢は彼よりも上だと思っているから。
8つ年が離れているライアンは、昔から僕のことを本当の弟のように可愛がってくれている。
頼りになるし優しい彼のことを、僕も好きだ。
そんな彼は、僕の姉ケイトのことを大好きなのだが、その気持ちは姉には全く伝わっていない。
本人なりに頑張っているようだが、空回り気味だ。
これは姉が鈍すぎるのもあるが、彼にもかなり問題はあると思う。
「僕の部屋でいじけられても困ります」
「………」
「…ねえ、ライアンったら無視しないでください」
かなりの時間落ち込んでいたから、もうそろそろ大丈夫かと思って声を掛けてみるけど、返事はない。
顔を上げてもくれない。
大人なのに、この態度でいいのだろうか…。
「ねえライアン、もういい加減に、」
「…違う、ちゃんと呼んでくれ」
顔は下を向いたままだけど、僕の言葉を遮りライアンが言葉を発する。
「はいはい、分かりました。義兄上、そろそろ何があったか話してくれませんか?」
「ああ、分かった。あのな…」
そう言ってライアンは今日、姉との間であったやり取りを詳細に語りだした。
ちなみに『義兄上』と呼んでくれと言われたのは、僕がまだ小さい頃のこと。
『でもライアンはぼくの兄ではないですよ?』
『大丈夫、未来の義兄上だから問題ない』
『姉上とこんやくしたのですか?そんな話はきいていませんが…』
『そ、それはこれからだが……。つまりはあれだ、…そう、備えあれば憂いなしだ!だから『義兄上』と呼んでくれ』
そのことわざは使い方が間違っていませんか?と指摘するべきか悩んだけど、言わないでおいた。
問題はそこではないのだから、指摘しても意味はない。
『……では二人だけのときはそう呼びます』
僕は幼いながらも、彼が姉を大好きなのを見抜いていたので合わせてあげた。
だってそうしないと、落ち込んじゃうから…。
彼は姉が絡むととても面倒くさい人になる。それ以外は本当に優秀で良い人なのに、本当に残念だ。
ライアンから落ち込んだ経緯を聞き終わった感想は『なにをやってるのですか…』しかなかった。
どうしてこの二人は簡単なことを複雑にするのだろうか。
ひとりひとりだと至ってまともなのに、二人だとありえない化学反応を起こすのだ。
もう僕の理解を軽く超えている。
「どうして姉上が誤解するような言葉を発するんですか?にやけながら『まあ、嬉しいかな』なんて言ったら、まるで令嬢達に群がられているのを喜んでいて、姉上が酷い言葉を浴びせられるのは構わないと言っているようにしか聞こえません。
それに姉上から何度も確認されているのに、『本気だ』なんて念押しまでして…」
僕の指摘にライアンは真っ青になる。
どうやら自分の想いが全く伝わっていないどころか、全然反対の意味で伝わっていたことが分かったらしい。
「えっ、だが、そんな意味じゃない」
「おそらく義兄上は、周りの令嬢達を『俺とケイトの仲を公認する言葉を発する応援部隊』くらいに思っていたのでしょうね。
でもそんなふうに聞こえていたのは義兄上だけです。誰もそんなふうには聞こえません」
「ケティはだから、別れるって言ったのか…」
愕然とするライアンに構わず、話しを続ける。
「そうですね。付き合うに至った前段階でもかなり問題はありましたが、この際それは考えるのはやめておきましょう。今回は義兄上の話し方と態度にかなり問題がありましたから、これは当然の結果と言えるでしょう」
「……っ…一体どうすればいいんだ……」
僕の両肩をガシッと掴んで縋ってくるのは本当に勘弁してほしい。
こうしてガンガンと肩を揺さぶら瞬間にも、僕の脳細胞はご臨終しているのですよ。
日頃の優秀さをどこに置き忘れてきたんですかとライアンに問いただしたくなる。
しかし経験上それは無駄だと分かっているので、『離してください』と僕は呟くだけにしておいた。
****************
【お知らせ】
近況ボードに新しいお知らせがございます!
そちらの方も読んでいただけると幸いですヽ(=´▽`=)ノ
あなたにおすすめの小説
婚約者の幼馴染にマウントを取られましたが、彼は最初から最後まで私の味方でした
柊
恋愛
学園で出会い、恋人になり、婚約したリアラとエルリック。
卒業後、リアラはエルリックの故郷へ挨拶に向かう。
彼の両親への挨拶に緊張していると、そこに現れたのはエルリックの幼馴染サラだった。
「私の方がエルリックを知ってる」
「サバサバしてるだけだから」
そんな言葉でリアラを見下し、距離を詰めてくるサラ。
さらにはリアラという婚約者がいるにも関わらず、エルリックに想いを告げてきて――
※複数のサイトに投稿しています。
幼馴染同士が両想いらしいので応援することにしたのに、なぜか彼の様子がおかしい
今川幸乃
恋愛
カーラ、ブライアン、キャシーの三人は皆中堅貴族の生まれで、年も近い幼馴染同士。
しかしある時カーラはたまたま、ブライアンがキャシーに告白し、二人が結ばれるのを見てしまった(と勘違いした)。
そのためカーラは自分は一歩引いて二人の仲を応援しようと決意する。
が、せっかくカーラが応援しているのになぜかブライアンの様子がおかしくて……
※短め、軽め
彼はヒロインを選んだ——けれど最後に“愛した”のは私だった
みゅー
恋愛
前世の記憶を思い出した瞬間、悟った。
この世界では、彼は“ヒロイン”を選ぶ――わたくしではない。
けれど、運命になんて屈しない。
“選ばれなかった令嬢”として終わるくらいなら、強く生きてみせる。
……そう決めたのに。
彼が初めて追いかけてきた——「行かないでくれ!」
涙で結ばれる、運命を越えた恋の物語。
最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。
佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。
幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。
一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。
ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
愛を知らないアレと呼ばれる私ですが……
ミィタソ
恋愛
伯爵家の次女——エミリア・ミーティアは、優秀な姉のマリーザと比較され、アレと呼ばれて馬鹿にされていた。
ある日のパーティで、両親に連れられて行った先で出会ったのは、アグナバル侯爵家の一人息子レオン。
そこで両親に告げられたのは、婚約という衝撃の二文字だった。
妹から私の旦那様と結ばれたと手紙が来ましたが、人違いだったようです
今川幸乃
恋愛
ハワード公爵家の長女クララは半年ほど前にガイラー公爵家の長男アドルフと結婚した。
が、優しく穏やかな性格で領主としての才能もあるアドルフは女性から大人気でクララの妹レイチェルも彼と結ばれたクララをしきりにうらやんでいた。
アドルフが領地に次期当主としての勉強をしに帰ったとき、突然クララにレイチェルから「アドルフと結ばれた」と手紙が来る。
だが、レイチェルは知らなかった。
ガイラー公爵家には冷酷非道で女癖が悪く勘当された、アドルフと瓜二つの長男がいたことを。
※短め。
夫「お前は価値がない女だ。太った姿を見るだけで吐き気がする」若い彼女と再婚するから妻に出て行け!
佐藤 美奈
恋愛
華やかな舞踏会から帰宅した公爵夫人ジェシカは、幼馴染の夫ハリーから突然の宣告を受ける。
「お前は価値のない女だ。太った姿を見るだけで不快だ!」
冷酷な言葉は、長年連れ添った夫の口から発せられたとは思えないほど鋭く、ジェシカの胸に突き刺さる。
さらにハリーは、若い恋人ローラとの再婚を一方的に告げ、ジェシカに屋敷から出ていくよう迫る。
優しかった夫の変貌に、ジェシカは言葉を失い、ただ立ち尽くす。