政略結婚の相手に見向きもされません

矢野りと

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5.後宮の側妃たち

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種族間バランスを考え選ばれた三人の側妃。見事に個性豊かな(?)メンバー集合となっている。

見事な胸と大きなお尻、牛族特有の安産体形のパトア妃25歳。妃としては少し年齢が高めだが、フリフリのレースが付いたドレスを着て少しでも可愛く見せようとしている。完全に方向性を間違えているのに本人は気づいていない…。
「もぅ、フリルが足りないわ。 
大切な顔見世なんだから重鎮方に好印象を残さないと!もっと、もっと私を飾り立てて頂戴!この胸周りのフリルを裾に付け直して!」
((イヤイヤこれ以上の胸の露出は、露出狂レベルです。それにこれ以上裾にフリルを付けたらアンタ間違いなく転びますよ))と思っているが、主人である妃に言えない…。
自分達のお付きの妃を盛り立て国王の寵愛を得させるのが侍女の誇り、なのだが…、もうどうしていいのか分からないパトア妃付きの専属侍女達。
((はぁ~))もうため息しか出てこない。

狐族出身のネリー妃は才色兼備で前評判は一番良かった。王宮の者たちには期待されていたし、お付きの専属侍女になった者たちは鼻高々であった。
だが蓋は開けてみないと分からないものである。
確かに美人であった、それは事実。
でも真の才女ではなかった、だった。自分が才女に見えるための演出には長けているが、そのために周りを貶める事は朝飯前。侍女達に無理難題を言い、やらせて、手柄は自分が持っていくのである。
((これは詐欺でしょ。いいえ、流石狐と言うべきか…)) 
専属侍女になれたことを大喜びしていた者たちやネリ妃の側で働く者たちは、すぐに辞めることを考え始めた。そのため『辞表の書き方』という本の売上げが一気に伸びた。 

後宮の自室で筋力トレーニングに励む女性、それがマアラ妃である。
国王と同じ狼族出身で元騎士というマアラは唯一婚姻前に国王と面識があった。 面識があるといっても騎士として働いているときに国王を近くで警護した程度で、国王の方は認識などしていなかった。 だがマアラはそうは思わなかった。自分が側妃に選ばれたと聞くと、騎士として働いている時に見初められたのだと勘違いした…。
盛大な勘違いを事実として、現在進行形で突っ走っている。
「私、国王の視線には気づいていたのよ。あの熱い眼差し!こうなるだろうとわかっていたわ♪」
腹筋をしながら嬉しそうに話すマアラ。
((なにかがおかしい))と違和感半端ない侍女達。 
マアラ妃のお世話をしてすぐに、マアラが『脳筋』だとわかった。性格は悪くない、だが…この妃は問題ありと落胆していた。



*******************************

---後宮での夕食後---


一族の期待を一身に受けているため、三人とも国王の寵愛を得ようと必死である。離宮に追いやられている正妃はライバルにあらずと、歯牙にもかけていない。ライバルは他の側妃と、最初からバチバチやっていた。
それは年中無休らしい…、今も続いている。 
いや、必死に諫めていたギルア国王がいない後宮ではより一層ひどくなっている。三人とも猫を脱ぎ捨て、本性丸出しとなっている。

(((いったい何匹猫を被っていたんだー))) 
数えられるものなら猫ちゃんを数えて、現実逃避したい使用人達多数発生中。


「まぁまぁ、なんて下品なドレスなんでしょう。胸が丸見えではないかしら?でも大きな胸しか自慢できる所がないから仕方がないわね。ホッホッホ」

狐族ネリー妃が、大きい胸が自慢の牛族パトア妃に軽くジョブを打つ。だがパトアも負けてはいない。
 
「あらあら、ネリー様はどちらに胸があるのかしら~。それではギルア国王から子種など貰えなくてよ。うふふ、だから夜伽を順番にと言い出したのですね、順番にしなくてはご自分が呼ばれないから」

グサリとパトアの言葉がネリーの心に突き刺さる。
美人と評判のネリーであるが、如何せんスリムまな板なのである。それを本人も大変気にしている。
一矢報いることが出来たパトアは、楽し気に体を揺らしている。

「ただ大きいパトア妃、まな板のネリー妃。どちらもどんぐりの背比べね!丁度いいハリと大きさを兼ね備えた私の胸に国王は夢中なのよ。同じ狼族だから気安いみたいだしね~」

そんなことを言ったマアラ妃を、キッと二人は睨みつける。ただ、元騎士のマアラは確かにバランスのとれた肉体美を持っていたので言い返すことが出来ない。自分の勝ちを確信したマアラはフサフサな尻尾ブンブンと勢いよく回す。 
「そんなはしたなく尻尾を回す脳筋女性を国王はお好きにならないわ」
すかさずネリーが攻撃すれば、パトアもブンブンと首を縦に振る。

「「「誰がなんと言おうと、私が寵愛を受けるのよ」」」
三人とも一歩も譲らず、低レベルなキャットファイトが繰り広げられている。


周りの使用人達は誰も止めない、なぜなら止まらないことを知っているから。たった1日で諦めの極致にたどり着いてた彼らを誰も責められないはずである、あの国王ですら匙を投げてしまったのだから。 

使用人達は嵐が鎮まるをひたすら待つ。気分は、太平洋の真ん中で大嵐に遭遇して船の中でひっそりと待つ乗務員といったところだ。たまにそのまま沈没するが…。こんな三人を側妃に選んだ国王を最初は恨んだ、本気で恨んでいた。
(((不敬罪と言われようが、この気持ちは誰にも止められない!)))当然の反応である。
(((もっとましな女性はいるだろう!)))間違いなく正論である。

しかし、国王も一緒に何度か沈没した…。もはや同志といってもいい絆を国王に感じた始めた使用人達。

(自分たちは仕事終われば温かい家庭があるが、国王にはこの側妃達が家庭なんだ…)
この事実に気づいたら、恨むことなどできない。可哀想すぎて…。気の毒な国王に、陰ながらエールを送ろうと決めた。
そしてみんな自分の家庭がより輝いて見え、家族間のトラブルが減っていった。国王の愚策が家族関係円満に一役買っているようだ。 

『愚策も見方を変えれば良策となりますね~』と宰相が国王にとどめを刺していた。
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