政略結婚の相手に見向きもされません

矢野りと

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6.レッツ全員集合?

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王宮にて謁見が行われる5分前。

謁見室前方の一段高くなっているところに玉座があるが、まだギルア国王は入室していないので椅子には誰もいない。すでに入室している、シルビア正妃・側妃三人・宰相・重鎮達は身分の高い順から玉座に近いところにいる。
誰も口を開いてはいない。雰囲気は最悪と言っていいだろう。
『お飾りの妃シルビア問題』や『残念な側妃問題』はすでに臣下達は把握済みだ。そしてそれらの問題によりギルア国王の機嫌が悪いことも…。

そもそもギルア国王は英雄王と呼ばれるほどである。武をまとめ上げる力があり、それを活かす知性もある。
それゆえ選ばれた、獣人国は王を血筋ではなく実力で選ぶ実力主義なのである。
そんなギルアは臣下からは大変尊敬されているし恐れられてもいた。
でも現在は、その尊敬の念にちょっぴり『憐み』が加わている。(後宮の使用人達の噂は早いのである…)


「ギルア国王の入室でございますーーー」 
その声とともに、玉座近くの扉が開き国王が入ってくる。 
この時初めてシルビアは国王の顔を知った。国王に興味なしなので、誰にも国王の容貌を訊ねていなかった…。ある意味正妃失格である。
黒目・黒髪の狼族、長身で体格もがっしりしている。顔はイケメンの部類だが、目は鋭い。王としての覇気を纏っているので、威圧感がビシビシ飛んでくる。

(((やっぱり機嫌最悪や…)))重鎮達は心が折れかかり、涙目になっている。 
(((キャー今日も凛々しいわ。私のギルア様)))空気を読めない側妃達はある意味平和お花畑である。
オドオドする臣下に牽制しあう側妃お花畑達。この状況に面白いことが起きないかとワクワク感が隠せないシルビア。 謁見室はカオスとなっている。

「では今から国王への謁見と顔見世を行います。 
ギルア国王、正妃シルビア様でございます」
宰相が平然とした表情で進める。
(((さすが宰相!))) 
この沈黙を破り、進行してくれた宰相に賛辞を送りたい者たちが、小刻みに尻尾を揺らしている。

「シルビア妃、諸事情により結婚式に間に合わず申し訳ない。獣人国での生活に慣れるまで時間が掛かるだろう。無理をせずゆっくり離宮で過ごして欲しい」
(要は離宮で大人しくしてろと言いたいのね、重鎮達の前で正妃はお飾りだと宣言とは敵もなかなかやるわね)
シルビアは無表情で聞いていたがあまりの内容に、その喧嘩を買うことに決めた。
喧嘩上等!自分より強者と喧嘩する時は弱点を攻めるべし!

「お心遣いありがとうございます。お言葉に甘えて離宮で過ごさせてもらいますわ。
そうそう正妃の大切な責務といえば子を生むことですが、しばらくゆっくり過ごす私では無理ですね。ですが側妃方が三人いるので安心ですわね♪パトア妃、ネリー妃、マアラ妃よろしくお願いします。
国中の者が一刻も早い子の誕生を期待していますわ!」

ぐぁっと目を見開いたギルア。
誰にも触れてほしくなかった所をピンポイントでシルビアが突いてきたからだ。

「そうそう三人もいると夜伽の順番も大変ですね。もしよろしければ私が当番表などを作成しましょうか?側妃方の希望なども取り入れますわよ♪」

より一層ぐぁっとギルアの目が開く。正妃は帰路途中の出来事を知っていて、攻めてきてると確信した。
それに側妃達に辟易しているのも分かっていて、わざと側妃達に話を振っているのだ。
この瞬間からギルアもシルビアを『敵』認定した。
両者の間でバチバチと火花が散る。重鎮達にはその火花がハッキリと見えていたが、三人側妃には見えていなかった。 
ギルアがシルビアを叩き潰す為に口を開いた、
「正妃シ」
「「「もちろん、お任せください!そして当番表もよろしくお願いします!」」」
キャアキャア、ウフフと小躍りしている三人。国王であるギルアの言葉を遮り発言したことにも気が付かない。
ギルアはシルビアを叩き潰すタイミングを失ってしまった、それに側妃達を回避できない状況に追い込まれている。

この勝負、『勝者シルビア』となった。誰もがこの結果に驚き、人族から嫁いできた正妃を見直した。
ただ今回の『敗者ギルア』だけは違った。自分を後宮という地獄に送り込む悪魔と認識したのである。


なんだかんだとシルビアの謁見と側妃達の顔見世は無事終わった。
解散後、シルビアは側妃達に排卵の予定と夜伽の希望を確認して回っている、かなり本格的な当番表が出来上がること確定である…。

「宰相、当番表は握りつぶせ…」
ギルアは小声で宰相に命令をする。切れ者の宰相にできないことはないはずだ。
「無理です。後宮は私の管轄外ですので、他をあたってください」
冷たく言い返されてしまう。
「……」 

悲壮感溢れるギルアをよそに、シルビアはルンルンしている。
どんなハードスケジュールを組もうかと、テンションMAXで考えている。
(国王には当然の毎日頑張ってもらいましょう 
ハードなプレイがお好きな方がいるから道具も用意しましょう♪)

「宰相様、夜の道具の販売している商人を紹介してくださいな」
明るいシルビアの声が謁見室に響いていた。


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