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4.国王帰還
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離宮でシルビアが生活を始めてから、三日後、国王一行が王宮に帰還した。
そして今、国王は執務室で宰相から冷たい眼差しを受けていた。
「ギルア様。大変、大変、大変…遅いご帰還でございますね」
「悪かった…」
「政略結婚の式に本人が欠席なんて…、ありえません」
「本当に悪かった…」
「王としての責務をどう考えているのですか?」
「……」
本来であれば宰相は国王にそんな態度を取ったりしない。しかし今回は例外だ。
「政略結婚が不本意とはいえ、一国の王女を蔑ろにするにもほどがあります。これではニギ国との外交は上手くいかなくなります」
「宰相には苦労を掛けてすまなかった。明日にでもシルビア王女と会い、直接詫びる」
「もう王女ではありません。
シルビア正妃です」
「……」
そろそろ皮肉を言うのをやめようかと宰相が考えていると、ギルア国王が深いため息をついた。
よくよく見るとギルアは顔色が悪く、少し窶れているようだ。
「側室を三人娶り、希望通り後宮も復活されたのに元気がありませんね?どうしたのですか」
国王は正妃との結婚式をすっぽかし、側室とのハネムーン旅行を楽しんでゆっくり帰還したのだから、もっと幸福オーラが溢れているはずなのに。
全く幸せオーラが見えない…、嫌な予感しかしない…。
ギルアは番を得る夢を捨てられず、いつか巡り合えるかもしれない番の為に後宮制度を復活させた。
後宮制度復活の手段として側室三人と結婚した為、事前に面識もなかった。
種族間のバランスが崩れないように書類を見て決め、側妃を選んだのである。
これがいけなかった。ギルアは側妃を甘く、いや女同士の争いを軽く考えていた。
三人の側室達は、王宮への帰路で揉めに揉めた。
食事のたびに誰がギルアの近くに座るかに始まり、夜伽の順番まで。とにかく揉めてない時がないのである。王宮への帰還が遅れたのも、側室達が揉めていたせいであった。その都度帰還の足を止めてギルアが仲裁に入っていた。
楽しいハネムーン旅行の実態は、ギルアの精神苦行の旅であった。
ギルアは宰相に、側室達との道中の出来事を話した。恥ずかしい事も多々あったが、包み隠さず話した。宰相からこの解決策を教えて欲しい一心で。
「当然ですよ。一夫多妻とはそんなものです。巡り合っていない番にばかり気を取られているから後宮復活という愚かなことしたのです。ご自分が犯した過ちですからちゃんとご自分で対応して下さい」
ギルア国王の幼少期の教師をしていた宰相の言葉は容赦ないものだった。
「解決策はないのか…?」
縋るような気持ちで再度問い掛ける。
「後宮制度が廃止になったのには理由があります。
妃達の諍いで王宮に混乱を招く事例が多々あったからです。これは事前にご説明しましたよね!
その時ギルア国王は大丈夫上手くやる自信はあると言われました。お忘れでないですよね。ご自分で蒔いた種です、ご自分で解決して下さい」
解決策はない…、ギルアは絶望的な気持ちになった。
そもそも女性の扱いに長けていないギルアが、後宮復活など無理があったのである。
そんなギルアに構わず宰相は続けた、
「とにかくまず正妃のシルビア様に謝罪を行ってください。明日の午後一番に予定を組みますから、よろしいですね?」
「分かった、謁見室で行う。一緒に重鎮達との顔合わせを行うから、重鎮達も集めておいてくれ」
「側妃方はどうしますか、呼びますか?」
「嫌だが仕方がない。いつかは顔見世をしなくてはいけないからな…。先延ばしにしても解決はせん、呼んでおいてくれ」
「承知しました」
宰相は今後の予定を通達すべく執務室を後にした。
扉が完全に閉まった後、ギルアはソファに身を投げ出した。
(はぁ~。こんなことになるなら、無理矢理後宮を復活するのではなかった。
あの時の俺を殴ってでも止めた!人族の正妃との対面も気が重い…。
俺って、本当にバカかも…)
自分のことをバカだと反省しているが、すでにシルビアから『バカ』認定されていることは知らないギルアである。
グダグダと考えて落ち込むギルア国王。
その姿は臣下に見せられるものではなく、英雄王として各国に知れ渡っている姿とは程遠いものだった。
そして今、国王は執務室で宰相から冷たい眼差しを受けていた。
「ギルア様。大変、大変、大変…遅いご帰還でございますね」
「悪かった…」
「政略結婚の式に本人が欠席なんて…、ありえません」
「本当に悪かった…」
「王としての責務をどう考えているのですか?」
「……」
本来であれば宰相は国王にそんな態度を取ったりしない。しかし今回は例外だ。
「政略結婚が不本意とはいえ、一国の王女を蔑ろにするにもほどがあります。これではニギ国との外交は上手くいかなくなります」
「宰相には苦労を掛けてすまなかった。明日にでもシルビア王女と会い、直接詫びる」
「もう王女ではありません。
シルビア正妃です」
「……」
そろそろ皮肉を言うのをやめようかと宰相が考えていると、ギルア国王が深いため息をついた。
よくよく見るとギルアは顔色が悪く、少し窶れているようだ。
「側室を三人娶り、希望通り後宮も復活されたのに元気がありませんね?どうしたのですか」
国王は正妃との結婚式をすっぽかし、側室とのハネムーン旅行を楽しんでゆっくり帰還したのだから、もっと幸福オーラが溢れているはずなのに。
全く幸せオーラが見えない…、嫌な予感しかしない…。
ギルアは番を得る夢を捨てられず、いつか巡り合えるかもしれない番の為に後宮制度を復活させた。
後宮制度復活の手段として側室三人と結婚した為、事前に面識もなかった。
種族間のバランスが崩れないように書類を見て決め、側妃を選んだのである。
これがいけなかった。ギルアは側妃を甘く、いや女同士の争いを軽く考えていた。
三人の側室達は、王宮への帰路で揉めに揉めた。
食事のたびに誰がギルアの近くに座るかに始まり、夜伽の順番まで。とにかく揉めてない時がないのである。王宮への帰還が遅れたのも、側室達が揉めていたせいであった。その都度帰還の足を止めてギルアが仲裁に入っていた。
楽しいハネムーン旅行の実態は、ギルアの精神苦行の旅であった。
ギルアは宰相に、側室達との道中の出来事を話した。恥ずかしい事も多々あったが、包み隠さず話した。宰相からこの解決策を教えて欲しい一心で。
「当然ですよ。一夫多妻とはそんなものです。巡り合っていない番にばかり気を取られているから後宮復活という愚かなことしたのです。ご自分が犯した過ちですからちゃんとご自分で対応して下さい」
ギルア国王の幼少期の教師をしていた宰相の言葉は容赦ないものだった。
「解決策はないのか…?」
縋るような気持ちで再度問い掛ける。
「後宮制度が廃止になったのには理由があります。
妃達の諍いで王宮に混乱を招く事例が多々あったからです。これは事前にご説明しましたよね!
その時ギルア国王は大丈夫上手くやる自信はあると言われました。お忘れでないですよね。ご自分で蒔いた種です、ご自分で解決して下さい」
解決策はない…、ギルアは絶望的な気持ちになった。
そもそも女性の扱いに長けていないギルアが、後宮復活など無理があったのである。
そんなギルアに構わず宰相は続けた、
「とにかくまず正妃のシルビア様に謝罪を行ってください。明日の午後一番に予定を組みますから、よろしいですね?」
「分かった、謁見室で行う。一緒に重鎮達との顔合わせを行うから、重鎮達も集めておいてくれ」
「側妃方はどうしますか、呼びますか?」
「嫌だが仕方がない。いつかは顔見世をしなくてはいけないからな…。先延ばしにしても解決はせん、呼んでおいてくれ」
「承知しました」
宰相は今後の予定を通達すべく執務室を後にした。
扉が完全に閉まった後、ギルアはソファに身を投げ出した。
(はぁ~。こんなことになるなら、無理矢理後宮を復活するのではなかった。
あの時の俺を殴ってでも止めた!人族の正妃との対面も気が重い…。
俺って、本当にバカかも…)
自分のことをバカだと反省しているが、すでにシルビアから『バカ』認定されていることは知らないギルアである。
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その姿は臣下に見せられるものではなく、英雄王として各国に知れ渡っている姿とは程遠いものだった。
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