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11.宰相の尻尾
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オーサン国の王宮では最近おかしな噂がまことしやかに流れている。
「おい、聞いたか。宰相の尻尾がピコピコと動いているのを見たやつがいるらしいぞ」
「なに馬鹿な事を言っているんだ、そんなわけあるか!」
「そうよ、あの宰相様の尻尾が揺れるなんてないわ~」
いつも冷静沈着な宰相ガーザ40歳、ピンとした黒い耳に引き締まった口元のいわゆるイケオジである。だが『ウサギ獣人の突然変異』とも陰で呼ばれるほど腹黒で、その笑顔もましてや尻尾が揺れるところなど誰も見たことがなかった。そんな彼の尻尾が揺れていたと王宮内では騒がれている。
「宰相、最近、お前の尻尾の噂で王宮内は持ち切りだぞ」
「俺もその噂聞いたな。誰が見たのかと聞いてみたがハッキリしなくて、まあ眉唾物だな、ワッハッハ」
何事にも動じない宰相の噂話なんて初めてである、ここぞとばかりに軽い気持ちで突っ込んでみる。
「そうですか、くだらない噂を流している皆さんは暇なんでしょうね~。もう少し仕事を増やしてあげましょう」
流石宰相、自分の噂もすでに承知していたうえに噂をしている者に追加の仕事を与えるべく調整まで行っているようだ。
「「俺は噂なんてしていないぞ!ただ耳に挟んだだけだ!!」」
慌てて言い訳をするギルアとガロン、もう遅い、すでにリストには名前が入っている…。
余計な事を言うんじゃなかったと、耳と尻尾を下げる2人…憐れである。
数日後、ある一定の人物達の仕事が増えた。訳が分からずに最初はブゥーブゥー文句を言っていたが、宰相からのプレゼントだと告げられるとみんな黙った。そして黙々と仕事をこなしている、国王ギルアと側近ガロンも例外ではなかった。
この国の食物連鎖の頂点はウサギ獣人(ガーザ限定)なのだと、新たな噂が王宮で流れ始めた。
何も宰相ガーザは尻尾を振らないわけではない、王宮では常に仕事に忙殺され振る理由がなかっただけだ。
でも最近嬉しい誤算があった、正妃シルビアである。当初はお飾りの正妃として捨て置くつもりだったが、国王の愚策の後宮を逆手にとって、素晴らしい手腕を発揮した。その能力を活かすべく財務課に投入すれば、財務課の書類レベルが格段にアップした。それにより、他部署との連携がスムーズになり仕事が楽になった。
そんな状況に自然と口角が上がり、尻尾はピコピコしてしまう。
今日も早い時間に帰宅できると尻尾を振りながら王宮を後にした。
もはや目撃者多数であるが、誰もその話題は出さない。流石王宮で働く者たちは学習能力が高い。
国王の執務室の窓から宰相の帰宅姿を捉えた側近ガロン、
「ほら、見ろ!宰相の尻尾が揺れているぞ!あの噂は本当だったんだな~」
…やっぱり馬鹿犬である。
ウサギ獣人は耳が良い、ガロンの言葉はしっかり宰相に届いていた。翌日から暫く尻尾を振ることが出来ないハードな状況が続くガロンであった。
****************************
「ただいま帰りましたよ♪」
「「「お帰りなさーい!!!」」」
賑やかな声で父の帰宅を喜ぶウサギ獣人の子供達8人。
「あなた、お帰りなさい。お仕事お疲れ様です」
ガーザの妻も笑顔で出迎える。
家族みんなで可愛い尻尾をこれでもかとピコピコ、ピコピコ、ガーザの尻尾が一番揺れている。
王宮では冷静沈着宰相だが、家では愛妻と子供達にデレデレなウサギ獣人だった。
----子供達就寝中----
ギィギィと部屋にベッドの揺れる音が鳴り響く。
ガーザは『ウサギ獣人らしからぬ』と言われているが、そんな事は無いなかった…
『魅惑の当番表』を熟読し夜の生活を頑張る姿は、子沢山なウサギ獣人の王道であった。もちろん尻尾も揺れていた。
「おい、聞いたか。宰相の尻尾がピコピコと動いているのを見たやつがいるらしいぞ」
「なに馬鹿な事を言っているんだ、そんなわけあるか!」
「そうよ、あの宰相様の尻尾が揺れるなんてないわ~」
いつも冷静沈着な宰相ガーザ40歳、ピンとした黒い耳に引き締まった口元のいわゆるイケオジである。だが『ウサギ獣人の突然変異』とも陰で呼ばれるほど腹黒で、その笑顔もましてや尻尾が揺れるところなど誰も見たことがなかった。そんな彼の尻尾が揺れていたと王宮内では騒がれている。
「宰相、最近、お前の尻尾の噂で王宮内は持ち切りだぞ」
「俺もその噂聞いたな。誰が見たのかと聞いてみたがハッキリしなくて、まあ眉唾物だな、ワッハッハ」
何事にも動じない宰相の噂話なんて初めてである、ここぞとばかりに軽い気持ちで突っ込んでみる。
「そうですか、くだらない噂を流している皆さんは暇なんでしょうね~。もう少し仕事を増やしてあげましょう」
流石宰相、自分の噂もすでに承知していたうえに噂をしている者に追加の仕事を与えるべく調整まで行っているようだ。
「「俺は噂なんてしていないぞ!ただ耳に挟んだだけだ!!」」
慌てて言い訳をするギルアとガロン、もう遅い、すでにリストには名前が入っている…。
余計な事を言うんじゃなかったと、耳と尻尾を下げる2人…憐れである。
数日後、ある一定の人物達の仕事が増えた。訳が分からずに最初はブゥーブゥー文句を言っていたが、宰相からのプレゼントだと告げられるとみんな黙った。そして黙々と仕事をこなしている、国王ギルアと側近ガロンも例外ではなかった。
この国の食物連鎖の頂点はウサギ獣人(ガーザ限定)なのだと、新たな噂が王宮で流れ始めた。
何も宰相ガーザは尻尾を振らないわけではない、王宮では常に仕事に忙殺され振る理由がなかっただけだ。
でも最近嬉しい誤算があった、正妃シルビアである。当初はお飾りの正妃として捨て置くつもりだったが、国王の愚策の後宮を逆手にとって、素晴らしい手腕を発揮した。その能力を活かすべく財務課に投入すれば、財務課の書類レベルが格段にアップした。それにより、他部署との連携がスムーズになり仕事が楽になった。
そんな状況に自然と口角が上がり、尻尾はピコピコしてしまう。
今日も早い時間に帰宅できると尻尾を振りながら王宮を後にした。
もはや目撃者多数であるが、誰もその話題は出さない。流石王宮で働く者たちは学習能力が高い。
国王の執務室の窓から宰相の帰宅姿を捉えた側近ガロン、
「ほら、見ろ!宰相の尻尾が揺れているぞ!あの噂は本当だったんだな~」
…やっぱり馬鹿犬である。
ウサギ獣人は耳が良い、ガロンの言葉はしっかり宰相に届いていた。翌日から暫く尻尾を振ることが出来ないハードな状況が続くガロンであった。
****************************
「ただいま帰りましたよ♪」
「「「お帰りなさーい!!!」」」
賑やかな声で父の帰宅を喜ぶウサギ獣人の子供達8人。
「あなた、お帰りなさい。お仕事お疲れ様です」
ガーザの妻も笑顔で出迎える。
家族みんなで可愛い尻尾をこれでもかとピコピコ、ピコピコ、ガーザの尻尾が一番揺れている。
王宮では冷静沈着宰相だが、家では愛妻と子供達にデレデレなウサギ獣人だった。
----子供達就寝中----
ギィギィと部屋にベッドの揺れる音が鳴り響く。
ガーザは『ウサギ獣人らしからぬ』と言われているが、そんな事は無いなかった…
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