罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

文字の大きさ
10 / 98

4 見知らぬ身体

しおりを挟む
 私は夢を見ていた。

 あの雨の夜、突然馬車が襲われて……弓矢で胸を射られたこと。その反動で自分の身体が宙を舞い……真っ逆さまに川に落ちてい私。
 そして冷たい水の中で苦しみながら沈んでいったあの日のことを……。


「あ……」

 薄目をあければ、オレンジ色の炎が灯る薄暗い部屋で彼が私をじっと見下ろしていた。

「良かった……気付いたんだね?突然悲鳴を上げて意識を失うから驚いたよ」

 彼は椅子を寄せて私の様子を見ていたようで、ため息をつくと背もたれに寄りかかった。

「……すみません。ご迷惑をお掛致しました……」

「本当に一体何があったんだい?まさか気を失うなんて……尋常じゃない驚き方だったぞ?」

「ええ……そのことなのですが……も、もう一度鏡を確認させて下さい」

 ベッドから身体を起こすと、彼が私を止めた。

「いいよ、確か手鏡があるから今持ってきてあげるよ」

 青年は椅子から立ち上って離れると、私は視線を窓の外に移した。先程オレンジ色だった空は今ではすっかり夜空に変わっていた。

「はい、鏡だよ」

 青年が小さな手鏡を枕元に置いてくれた。

「ありがとうございます……」

 震えながら鏡を手に取り……ゆっくり鏡を覗き込む。そこに映るのは緑の瞳にプラチナブロンドの長い髪の毛の若い女性が映り込んでいる。
 以前の私とは似ても似つかない容姿をしている。

「!」

 思わず強く目を閉じ、鏡を伏せた。すると彼が声を掛けてきた。

「ひょっとして……鏡を見るのが怖いのかい?こう言っては何だけど……君は自分の容姿に自信を持っていいと思うけれど?」

 恐らく、それは彼の褒め言葉なのだろう。だけどこの顔は……いや、この身体は私のものではない……!

 以前の私はダークブロンドの髪に、紫色の瞳をしていた。肌は日に焼けた小麦色で、日焼けに気を使う貴族令嬢たちとは朗らかに肌の色が違っていた。

 恐らく、クラウスは私の容姿にも不満を抱いていたのかもしれない。

 けれど私は母親譲りの顔立ちと瞳の色を気に入っていたのに……。

 私が返事をしないので、彼は再度声を掛けてきた。

「大丈夫かい?何か悩み事があるなら……俺でよければ相談に乗るけど?あ、そう言えばまだお互い自己紹介すらしていなかったな。俺はジェイク。年は21歳だ。君の名は?」

「な、名前……私の……?」

 私はこの身体の持ち主では無い。けれど……。

「ユリアナです……。年齢は19歳……です……」

 無意識に自分の名前と年齢を口にしていた。

「そうか、ユリアナって言うのか?俺より2歳年下か。改めて宜しく、ユリアナ」

 ジェイクと名乗る青年は気さくに笑顔を私に見せた。

「はい……こちらこそ……宜しくお願い致します……」

 私は半ば放心状態で挨拶を返した。
 けれど、これはまだほんの始まりでしか無かった。

 何故ならこの後、更に驚愕の事実が私を待ち受けていたからだ――。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします

宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。 しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。 そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。 彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか? 中世ヨーロッパ風のお話です。 HOTにランクインしました。ありがとうございます! ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです! ありがとうございます!

【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!

MEIKO
ファンタジー
最近まで死の病に冒されていたランドン伯爵家令嬢のアリシア。十六歳になったのを機に、胸をときめかせながら帝都学園にやって来た。「病も克服したし、今日からドキドキワクワクの学園生活が始まるんだわ!」そう思いながら一歩踏み入れた瞬間浮かれ過ぎてコケた。その時、突然奇妙な記憶が呼び醒まされる。見たこともない子爵家の令嬢ルーシーが、学園に通う見目麗しい男性達との恋模様を繰り広げる乙女ゲームの場面が、次から次へと思い浮かぶ。この記憶って、もしかして前世?かつての自分は、日本人の女子高生だったことを思い出す。そして目の前で転んでしまった私を心配そうに見つめる美しい令嬢キャロラインは、断罪される側の人間なのだと気付く…。「こんな見た目も心も綺麗な方が、そんな目に遭っていいいわけ!?」おまけに婚約者までもがヒロインに懸想していて、自分に見向きもしない。そう愕然としたアリシアは、自らキャロライン嬢の取り巻きAとなり、断罪を阻止し婚約者の目を覚まさせようと暗躍することを決める。ヒロインのヤロウ…赦すまじ!  笑って泣けるコメディです。この作品のアイデアが浮かんだ時、男女の恋愛以外には考えられず、BLじゃない物語は初挑戦です。貴族的表現を取り入れていますが、あくまで違う世界です。おかしいところもあるかと思いますが、ご了承下さいね。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】 ※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。 ※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。 愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。 しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。 けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中

処理中です...