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4 見知らぬ身体
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私は夢を見ていた。
あの雨の夜、突然馬車が襲われて……弓矢で胸を射られたこと。その反動で自分の身体が宙を舞い……真っ逆さまに川に落ちてい私。
そして冷たい水の中で苦しみながら沈んでいったあの日のことを……。
「あ……」
薄目をあければ、オレンジ色の炎が灯る薄暗い部屋で彼が私をじっと見下ろしていた。
「良かった……気付いたんだね?突然悲鳴を上げて意識を失うから驚いたよ」
彼は椅子を寄せて私の様子を見ていたようで、ため息をつくと背もたれに寄りかかった。
「……すみません。ご迷惑をお掛致しました……」
「本当に一体何があったんだい?まさか気を失うなんて……尋常じゃない驚き方だったぞ?」
「ええ……そのことなのですが……も、もう一度鏡を確認させて下さい」
ベッドから身体を起こすと、彼が私を止めた。
「いいよ、確か手鏡があるから今持ってきてあげるよ」
青年は椅子から立ち上って離れると、私は視線を窓の外に移した。先程オレンジ色だった空は今ではすっかり夜空に変わっていた。
「はい、鏡だよ」
青年が小さな手鏡を枕元に置いてくれた。
「ありがとうございます……」
震えながら鏡を手に取り……ゆっくり鏡を覗き込む。そこに映るのは緑の瞳にプラチナブロンドの長い髪の毛の若い女性が映り込んでいる。
以前の私とは似ても似つかない容姿をしている。
「!」
思わず強く目を閉じ、鏡を伏せた。すると彼が声を掛けてきた。
「ひょっとして……鏡を見るのが怖いのかい?こう言っては何だけど……君は自分の容姿に自信を持っていいと思うけれど?」
恐らく、それは彼の褒め言葉なのだろう。だけどこの顔は……いや、この身体は私のものではない……!
以前の私はダークブロンドの髪に、紫色の瞳をしていた。肌は日に焼けた小麦色で、日焼けに気を使う貴族令嬢たちとは朗らかに肌の色が違っていた。
恐らく、クラウスは私の容姿にも不満を抱いていたのかもしれない。
けれど私は母親譲りの顔立ちと瞳の色を気に入っていたのに……。
私が返事をしないので、彼は再度声を掛けてきた。
「大丈夫かい?何か悩み事があるなら……俺でよければ相談に乗るけど?あ、そう言えばまだお互い自己紹介すらしていなかったな。俺はジェイク。年は21歳だ。君の名は?」
「な、名前……私の……?」
私はこの身体の持ち主では無い。けれど……。
「ユリアナです……。年齢は19歳……です……」
無意識に自分の名前と年齢を口にしていた。
「そうか、ユリアナって言うのか?俺より2歳年下か。改めて宜しく、ユリアナ」
ジェイクと名乗る青年は気さくに笑顔を私に見せた。
「はい……こちらこそ……宜しくお願い致します……」
私は半ば放心状態で挨拶を返した。
けれど、これはまだほんの始まりでしか無かった。
何故ならこの後、更に驚愕の事実が私を待ち受けていたからだ――。
あの雨の夜、突然馬車が襲われて……弓矢で胸を射られたこと。その反動で自分の身体が宙を舞い……真っ逆さまに川に落ちてい私。
そして冷たい水の中で苦しみながら沈んでいったあの日のことを……。
「あ……」
薄目をあければ、オレンジ色の炎が灯る薄暗い部屋で彼が私をじっと見下ろしていた。
「良かった……気付いたんだね?突然悲鳴を上げて意識を失うから驚いたよ」
彼は椅子を寄せて私の様子を見ていたようで、ため息をつくと背もたれに寄りかかった。
「……すみません。ご迷惑をお掛致しました……」
「本当に一体何があったんだい?まさか気を失うなんて……尋常じゃない驚き方だったぞ?」
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ベッドから身体を起こすと、彼が私を止めた。
「いいよ、確か手鏡があるから今持ってきてあげるよ」
青年は椅子から立ち上って離れると、私は視線を窓の外に移した。先程オレンジ色だった空は今ではすっかり夜空に変わっていた。
「はい、鏡だよ」
青年が小さな手鏡を枕元に置いてくれた。
「ありがとうございます……」
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「!」
思わず強く目を閉じ、鏡を伏せた。すると彼が声を掛けてきた。
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恐らく、それは彼の褒め言葉なのだろう。だけどこの顔は……いや、この身体は私のものではない……!
以前の私はダークブロンドの髪に、紫色の瞳をしていた。肌は日に焼けた小麦色で、日焼けに気を使う貴族令嬢たちとは朗らかに肌の色が違っていた。
恐らく、クラウスは私の容姿にも不満を抱いていたのかもしれない。
けれど私は母親譲りの顔立ちと瞳の色を気に入っていたのに……。
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「大丈夫かい?何か悩み事があるなら……俺でよければ相談に乗るけど?あ、そう言えばまだお互い自己紹介すらしていなかったな。俺はジェイク。年は21歳だ。君の名は?」
「な、名前……私の……?」
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「ユリアナです……。年齢は19歳……です……」
無意識に自分の名前と年齢を口にしていた。
「そうか、ユリアナって言うのか?俺より2歳年下か。改めて宜しく、ユリアナ」
ジェイクと名乗る青年は気さくに笑顔を私に見せた。
「はい……こちらこそ……宜しくお願い致します……」
私は半ば放心状態で挨拶を返した。
けれど、これはまだほんの始まりでしか無かった。
何故ならこの後、更に驚愕の事実が私を待ち受けていたからだ――。
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